第2話二人きりの聖夜
ドクドク、ドクドクドクドク、と鼓動が速まっていた。
約束の時刻まで、残り三分といったところでインターフォンが鳴り来訪者の訪れを報せる。
玄関へと急ぎ、来訪者を出迎える俺。
玄関扉が開き、来訪者である少女がもじもじと身体を捩りながら、恥ずかしそうに「お邪魔しまぁーすっ」と、挨拶を告げる。
「うん……寒いし、上がって上がって」
「ありがと、高瀬くん」
リビングへと彼女を案内し、飲み物を出すためにキッチンへと歩む俺。
彼女はダイニングチェアに腰を下ろすことなく、リビングを見渡す。
「長谷部さんはなにを飲みたいですか?麦茶や紅茶、オレンジジュースなんかがあるんですが飲みたいものはありますか?」
「良いよ、気遣ってくれなくても。飲みたいものを各自持参しようってなってたんだからそんなの良いって」
右手に提げたコンビニ袋を胸辺りまで持ち上げ、笑顔を浮かべ断る長谷部。
「……すか。えっと……」
「ああ〜ほののんがすっぽかしてごめんね、高瀬くん。自由奔放なほののんを許してほしいな、高瀬くん。悪気はないんだ、あの娘も……ただ、アレなだけで」
彼女が荷物を足もとに置いて、両の掌を合わせて申し訳なさそうに謝る。
「長谷部さんが謝ることは……」
クリスマスパーティーを立案した立案者が、クリスマスパーティーをすっぽかして男女二人だけのクリスマスパーティーと相なった。
俺は彼女を自室に招き、クリスマスパーティーが始まる。
「さ、寒かったですよね、雪が降ってますし……そ、その寒くないんですか、長谷部さんは?」
「まあ、寒いよね。寒いよ、普通〜に」
プリーツスカートから出る靴下に覆われていない生足を摩りながら返答する彼女。
「寒いのに、なんで……」
「高瀬くんに暖めてもらえるだろうって、思ったからこの服を着てきたわけですよ〜」
「かっ、からかわないでくださいっ……長谷部さん」
「からかってなん、か……ないって」
「えっ……?」
「からかってるつもり、ないって言ったのっ!……高瀬くんのばかっ」
フローリングに敷かれたラグに座っていた彼女が、ベッドに腰を下ろした俺の胸に顔を埋めて吐露した。彼女の声は震えていて、発した後半の言葉に可愛さが含まれていた。
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