第17話 初命先輩、どうしたら、私のおっぱいが大きくなると思いますか?

「初命先輩、そろそろ、やりません?」


 運動マット上にいる二人。


 そんな中。音子は大人っぽい感じの口調で問いかけてくる。

 その息は、須々木初命すすき/はじめの耳元に吹きかかるのだ。


 そのたびに性感帯を刺激され、どぎまぎしてしまう。


 心が揺れ動いている証拠かもしれない。




 今、体育館倉庫の中。

 扉は開いているため、外からの光はある。


 誰かが訪れる気配もなく、背後から彼女によって抱き付かれているが、一応、誰かにバレる心配はないだろう。


 ただ、早くこの現状をどうにかしないといけない。


 それ以前に、倉庫の床に散らばっているノートとペン。それを、結城奈那ゆいき/ななの元に届けないといけないのだ。


 ふと、生徒会長から怒られている奈那の姿が脳裏をよぎり、嫌気が刺す。

 奈那の口から、なくしたとは言わせたくなかった。


 初命は音子から離れ、一刻も早く、彼女の元へ向かおうとしたのだ。




「……?」


 急に背後へと引っ張られる。


「初命先輩、どっかにいっちゃダメですからね」


 黒須音子くろす/ねこはそう簡単には離してはくれそうにない。


「けど、俺はいかないといけないところがあるんだよ。だから」

「副生徒会長の場所ですか?」

「ああ、そうだよ」

「だったら、なおさら駄目です」


 音子はさらに、背後から強く抱きしめてくるのだ。

 ふんわりとだが、初命の背中に彼女のおっぱいのぬくもりが当たる。


「先輩って、本当にいつまで、あの人と浮気してるつもりですか? そろそろ、別れてほしいんだけど」


 いつよりも声のトーンが違う。


 彼女の口調からは本気さが伝わってくるようだ。


 初命自身も、いつまで複数の女の子と隠し事をしながら振舞っているのだろうかと思うことはある。


 けど、まだ、責任を果たせていないことから、彼女らと距離を置くことなんてできないのだ。


「絶対に、私の方が勝ってますから。先輩のことを誰よりも意識していますし」


 音子は背後から抱き付いたまま、語り始める。


「初命先輩は、私のこと好きですか?」

「好きだけど」

「本当ですか?」

「でも、友達としてというか、妹の事として……」


 初命の声は震えている。

 緊張のあまり背後を振り向けない。


 なんて返答が返ってくるか想像するだけでも怖いからだ。


 これから、どんな目に合わされるのだろうか?




「妹として……ですか?」

「ああ」

「……初命先輩、そういうところは良くないですから……でも、私がまだ、先輩にとっての妹の雰囲気から抜け出せていないっていう証拠ですよね、それって」


 彼女が何を言い出し始めるのだろうかと思い、背後を見ずに様子を伺っていると。


「では、私、先輩のために、ちょっと大人っぽい雰囲気を見せてあげますから♡」


 と、彼女は意味深なセリフを呟いた後――


 音子は背後からようやく離れてくれた。


 彼女は扉の方へ向かい、少しだけ開いていた扉を閉める。


 ある程度の明かりに照らされていた体育館倉庫は、再び薄暗くなったのだ。


 窓から入る朝の陽ざしだけが、室内を照らす唯一の光になっていた。




「初命先輩、では、私が大人っぽいところを見せてあげますから♡」


 彼女はそういうと、初命の目の前で制服を脱ぎ始めた。


「ここで、服を脱ぐのは」


 初命は両手で目を隠す。


 室内は薄暗いものの、音子の姿はある程度見える。


 制服を脱ぎ、ブラジャー姿になるところがハッキリとわかった。


「もういいから、服を着てくれ」

「別に、私、全裸じゃないですし。下着のままなので、大丈夫じゃない?」

「でも……」

「先輩は、童貞なのがいけないんだと思います。だから、そうやって、ハッキリとしたことを言えなくなるんです。ですから、私が、ハッキリとした考えを持てるようにサポートしてあげますから」


 彼女はハッキリとした口調で、妖艶な笑みを浮かべ、両手で自身のおっぱいへと手を向かわせていた。


 音子は、立膝で運動マット上にいる初命の正面に佇んでいる。

 そんな彼女は、ブラジャーを触りながら、上下に動かしているのだ。


 彼女がそんな行為をするたびに、控え目なおっぱいが揺れ動く。


 ……これって、やばいだろ……。

 というか、あともう少し、おっぱいが……。


 ブラジャーが揺れ動くたびに、小さくとも、そのおっぱいが振動する。


 薄暗い環境下。鮮明な感じに、瞳に映るわけではないが、チラッとだけ、ブラジャーの隙間から、女の子として大事なものが見えたような気がした。


 何かの気のせいだと思いたい。

 初命は、胸元を熱くしながら、そう念じこむのだった。




「音子ってさ。おっぱいを見られる事に抵抗がなかったか?」

「あ、ありましたけど。今は、心の準備ができていますから。それに、先輩。おっぱいが好きなんですよね?」

「……」

「どうなんですか?」


 音子から再び問われる。


 彼女からまじまじと見られながらだと、本当に緊張するのだ。


「す、好き……だけど……」


 初命は小さめの口調で返答した。


「声が小さくて、聞こえなかったんだけど、先輩?」

「す、好きだってこと」

「先輩、ようやく私のことを好きって言ってくれましたね、私、嬉しいです♡」

「……え、え⁉ いや、そういう意味じゃなくて!」

「でも、先輩、言い逃れはできませんから」


 ちょっと待ってほしい。


 音子から勝手に解釈されてしまったのだ。

 解釈されたというよりも、そういうように仕向けられただけかもしれない。


 罠にハマってしまったのか?


 以前も似たような経験をした気が……。


 それは、手を貸してよ言われて、そのまま音子のおっぱいを揉んだことがあった。その時の既視感があるのだろう。


 言いなおすこともできず、本格的に怪しくなってきた。


 これから、奈那には、ノートとペンを渡さないといけないし。今後も、色々な意味合いで関わっていくことになる。


 音子が本気で誘惑するならば、数股していることもすぐにバレてしまうだろう。


「私、本気ですから。ガンガン、行かせてもらいますから♡」


 音子の瞳に偽りはない。

 本気さを感じ、頭を抱えてしまう始末。


「先輩……一つ、相談があるんですけど」

「そ、相談?」

「はい。私のおっぱい、どうしたら大きくなると思いますか?」

「お、おっぱいが大きく⁉ それは、自分で考えた方がいいんじゃないかな?」

「だって、先輩、おっぱいも私も好きなんですよね? だったら、今後のために、一緒に考えてくれませんか?」

「お、おっぱいについて……」

「はい、私のおっぱい、全然小さい方ですし。できる限り、先輩が好む、おっぱいにしたいので」


 音子は迫り寄ってくる。


「初命先輩? 私のおっぱい、今は見て、どう思います?」


 彼女はそう言うと、ブラジャーを外し、生おっぱいを見せてきたのである。


 この前も見たのだが、形の整ったおっぱいだという印象を受けた。


 でも、まじまじ見ることに躊躇いを感じ、逆に視線を逸らしてしまう。


 そんな中、音子は悪戯っぽくニヤニヤし、さらに距離を縮めてくるのだった。

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