第2話 初命先輩? どう責任を取ってくれるんですか?
未だ、あの手紙についてはわかっていない。
そもそも、なぜ、あの場所に呼び出してきたのだろうか?
はあぁ……。
やっとのことで、念願の恋人ができると思っていたのに、散々な結果になっていた。
あの手紙は単なる悪戯。
現実を思い知らされ、肩の荷を下ろすのだった。
チャイムが鳴る。
丁度、午前中の授業が終わった。
静かだった空間が、どっと騒がしくなったのだ。
初命は、この煩い空間が好きではなかった。
だから、すぐに教室を後に、廊下に出る。
実のところ、初命は友人が少ない。
ゆえに、昼食をとるにしても一人で済ますことが多かった。
騒がしい教室内で、一人ボッチで昼食をとるなんて、人生で初めて経験する拷問みたいなものだ。
「……」
初命は、購買部に向かおうと思い、廊下を歩いている。
そんな中、ふと、対面から歩いてくる人の姿が視界に映った。
彼女は同じクラスメイトの
同年齢とは思えないほどに容姿は大人びており、その上、副生徒会長でもある。
真面目な雰囲気を装っているが、実際に会話してみれば意外と普通な感じの子。
青に近い黒色のショートヘアな奈那は、普通に廊下を歩いているだけで絵になるようだった。
それほど、普通に美少女感が溢れているのだ。
けど、今日の朝。奈那のおっぱいを見てしまったことにより。彼女がいつも見せる態度も違っていた。
普段であれば、奈那は、初命とすれ違う際、視線を向けないのだが、今日に限っては、チラチラと視線を向けてくる。
全裸姿を見たことを言いふらしていないか。そんなことを気にしての言動の表れかもしれない。
結果として、奈那からは特に何かを話しかけられることはなかった。
彼女はそのまま素通りしていく。
でも、今まで関係性のなかった人同士が、廊下で話していたら大半の人は驚くはずだ。
面倒なことに発展させないために、彼女は発言を自重しているのだろう。
初命からも特に話しかけることなく購買部へと向かうのだった。
初命が購買部で、いちごジャム系のコッペパンを一つ購入する。
昼休みになって、少し時間は経過するのだが、それでも購買部には人が多かった。
人混みがそんなに好きじゃないのだ。
初命は、この面倒な困難を乗り越えた。
今から校舎の裏庭に行って、一人ひっそりと食事をしようと思う。
大勢の人から距離を置けているひと時が意外と心地よかったりする。
食事をする時は、音楽を聴きながらがいつもの定番。
気分を高揚させながら裏庭へと移動しようとしていた。
が、そうそう上手くいかないものだ
≪二年、須々木初命さん。急遽、放送室に来てください。繰り返します――≫
ドキッとした。
女の子の声。
可愛らしい感じの口調ではあるのだが、悪魔に魅入られてしまったかのような心境に陥ってしまう。
なんのために呼び出されたかは不明。
だから怖い。
しかし、行かないというのも後々面倒になるだろう。
嫌だったが、初命は放送室のある校舎三階へと、しぶしぶと向かって行くことにした。
「初命先輩、ちゃんと来てくれたんですね」
「しょうがなくね」
彼女はマイクの電源を切っているようだが、初命は緊張していたのだ。
「そういって、私のところに来たかったんでしょ?」
放送室内。
椅子に座っている茶髪風のセミロングな
音子は一年生であり、初命が中学生の頃からの後輩。
音子の成績であれば、もっと上の高校もあったのにと思うのだが、なぜ、この高校にしたのだろうか。
まったくもって意味不明である。
むしろ、追いかけてくるとか、ストーカー染みているところが目立つ。
「ねえ、初命先輩って、彼女とかできたんですか?」
「なんで、そんなことを聞いてくるんだよ」
「だって、そういうこと、私気になっちゃうし」
「……」
実のところ、彼女なんてできていない。
けど、責任を取る形で、結城奈那とは付き合うことにはなっている。
これは、彼氏彼女の間柄ということなのか?
「ねえ、どうなんですか、先輩―」
生意気な彼女は、次第に、初命を馬鹿にするような口調になってくる。
音子は嫌な奴ではないが、ここで生意気な彼女に、一言言っておいた方がいいだろう。
「俺、彼女ができたんだ」
「……え?」
一瞬、放送室内の空気感が変わった。
音のしない無機質な空間へと変貌を遂げる。
「え? 初命先輩? 彼女、できたんですか?」
「あ、ああ。そうだよ」
「……それ、ひどいです」
「え?」
「私、先輩と付き合いたいから、この高校に入学したんですから。どう責任を取ってくれるんですか?」
「え? いや、そういうことだったの?」
今、音子が、この高校に通い始めた動機を知った。
「そうですから。私、これからどうすればいいんですか?」
「そう言われても……」
「だったら、私と付き合ってください」
「……さっきの俺の発言を聞いていたか?」
「はい」
「……このまま付き合ったら、俺、浮気している感じになるじゃんか」
「それでもいいです」
「いや、俺はよくないけど」
陰キャでボッチで浮いた話もない。
孤独で普段から浮いた存在ではあるが、異性とのスキャンダルとかも殆どないのだ。
学校内で影の方なのに、余計なことで悪目立ちしたくなかった。
ましてや、今付き合っているのは、結城奈那という副生徒会長の役職を持つ彼女。
奈那が本気を出せば、初命の失態なんて、すぐに学校中に広がってしまうだろう。
そんなのは嫌だ。
「俺、やっぱり、無理だ。ごめん……今まで通り、友達ってこと」
「……」
音子はジーっと睨んでいるのだ。
「じゃあ、初命先輩、手を出してください」
「え? なんで」
「いいから。付き合わないなら。せめて、手を出してください。早くしてください」
「はい……」
意味不明だったが、何となく、初命は右手を差し出した。
刹那、右手に柔らかいものと接触を果たす。
「先輩、私のおっぱいどうですか? 昔と比べて大きくなった感じですか?」
「⁉」
何が起きているのか、一瞬、判断に迷うが、冷静さを取り戻して思う。
右手の平に伝わってくる暖かい温もり。
それは、まさしく、音子のおっぱいである。
初命は、後輩のおっぱいを右手で揉んでいるのだ。
「初命先輩、私のおっぱいを触りましたよね?」
「え、あ、いや、その……」
初命は胸から手を離そうとしたが、彼女からぎゅっと抑えられ、どうにもならない状況。
「先輩、焦ってるー」
「そうじゃなくて。これは事故というか。音子の方から勝手に」
「でも、そんな態度でいいんですか?」
「え?」
「だって、私、放送委員会なんですよ? なので、私が本気になれば、このことをすぐに拡散させることもできるんです」
「うッ……」
「どうしますか? 初命先輩」
初命は彼女のおっぱいを感じながら、黒須音子の生意気な声に圧倒されるのだった。
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