第4話 最初の選択

「え、なに…?」


外はもう日が落ちたはずなのに、赤く染まっていた。外からは耳を劈くような悲鳴や、怒号が聞こえてくる。


「村が…燃えてる…?いや。でも、なんで?」


盗賊?いやそれは何回かあったけど、火をつけるのはおかしい。盗賊は金品や食料を奪いにくるけど、村を燃やすなんて事は1度もなかった。だって燃やしたってなんの意味もないだろうし。

そんなこと考えてると、外に続く扉が勢いよく開いた。あ、大人が来た。けど、いつもの人達じゃないし、なんだか変な格好してる。全身真っ黒で目元だけ出てる。村を襲った人達なんだろなってのはなんとなくわかるけど、僕になんの用があるんだろう。

なんて考えてると、その真っ黒い大人が僕の顔を見るや否や耳に手を当てて話し出した。


「対象確認。捕縛します。」


ほばく?え?なんで?と考えが来るのと同時に。鉄格子がでかい衝撃音と共に吹っ飛んだ。


「びっっくりしたぁ……」


え、この人今何したの。爆発したんだけど鉄格子が。破片が当たって死んだらどうすんだ。死なないけど。


「大人しくしろ。痛い目に会いたくないだろガキ」


真っ黒の大人はそう言いながら、僕の手を掴んで、手錠を付けようとした。


「え、ちょっ意味わかんないんだけど、あんた一体だ」


「うるさい。大人しくしろ!」


そう言われると僕は腹を殴られた。痛ってぇ…絶対骨折れたんだけど。でも何となく理解した。

多分これ僕が目当てでここを襲ったんだこの人達は。ここから出れる一瞬の喜びもあったけど、多分この人達捕まったらまた同じように閉じ込められるんだろうな。

村を1つ潰してでも僕の事をさらう意味はわかんないけど。

そんなこと考えてるうちに、手に手錠つけられて、紐で引っ張って無理やり立たされた。


「さっさと歩け」


真っ黒の大人が僕を引っ張ってく。

あぁ、もうほんとに。


クソみたいな人生だな。


『あるじ〜。聞こえるか?さぁ来たぜ?最初の選択が。』


声が聞こえた。あいつの声だ。


「え、僕死んでないんだけど。」

思わず声に出た。


「は?何1人で喋ってんだこのガキさっさと歩け。」


「あ、ごめんなさい…」


『声に出さなくても、心で思えば会話できるから声に出さなくていいぜ〜あるじ』


そゆことは早く言えよ。


『どゆこと?君は僕が死んだ時しか話せないんなじゃなかったの?あと、選択って何?』


『人生の分岐点ってやつさ。あるじ』


『今あるじは1つ目の分岐点の選択の差中にいる。その選択を問う為に俺は今またあるじに干渉することが許されたってわけよ。』


『全然話がわかんないんだけど。』


『まぁまぁ最後まで聞けよあるじ〜。』


『今あるじにはふたつの選択肢がある。ひとつはこのままこいつに捕まってまた同じように檻の中で一生実験動物のように生きていくか。もうひとつはここから逃げて、外の世界に飛び出すか。』


『は?え、いや無理だよどーやって逃げるのさこの人から。てかこの人だけじゃなくて他にも多分いっぱいいるよ?逃げるなんて無理無理』


『それができるんだな〜あるじ。ま、どちらを選ぶかはあるじ次第だけど。』


『さぁ選ぶんだ。あるじ。』


『その選択が、その願いが、あるじの運命を変える。』

『俺はその選択を選んだあるじのお手伝いをするだけさ。だから選んで』


『記念すべき1回目の選択の時だ』


一体何を言ってるのかほんとに分からない。

けど、もし本当にこの場から逃げることが出来るなら。


外の世界を見に行けるのなら。


僕は。


「僕は…外がみたい。外の世界が。太陽の光をその目で見てみたい」


思わず声に出てしまった。


「このガキ。だから喋らずに歩けって言ってんだろうが!」


そう言われて、殴られる瞬間に僕の意識は途絶えた。

だけど、最後にまたあいつの声が聞こえた。


『仰せのままに。我があるじ』


次に僕が目を覚ますと森の中で1人で立っていた。

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