第3話 死なない黒霧
『ドスッ』
勢いよく振り降ろされた斧は僕の手足に突き刺さっていく。今日は四肢をもがれたその後に首をはねられた。だけど、気づけば全部無かったことになってる。
大人たちが言うには黒いモヤみたいなのに包まれていって、モヤがはれた時には無傷な状態の僕に戻っているらしい。
「チッ。これでもダメか」
「一体どうやったら死ぬんだよこいつ……」
最初は痛くて怖かった。なんで僕がこんな目にって何度も考えた。でも最近は痛みにも慣れたのかあまり痛く感じなくなってきた。
色んな殺され方をした。圧殺、撲殺、溺死、火あぶり。火あぶりが1番嫌だったな。熱いし苦しいし最悪な気分だった。それでも僕は死ななかった。
「…もう諦めればいいのに。僕だって別に死ねるなら死にたいのに。」
またいつもの檻に投げ入れられて、僕は小さな声でぽつりと呟いた。
『んな事言うなよあるじ〜』
あぁ、また声がする。生き返った時に出る黒いモヤがあるときだけ、この声が聞こえる。
『あるじには死んでもらったら困るんだからさ〜』
「なら、助けてくれてもいいじゃん。」
『あぁ、それは無理。まだ選択をする時じゃないから。その日までは俺はこーやって死なないように生き返らせる事とその時にだけ話せるぐらいの干渉しか許されてないからね。』
「なにそれ。何の役にも立たないんだけど。」
『おいおいそりゃないぜあるじ〜。どんな死に方しても必ず生き返るって結構な事だぜ??まぁでももう少しでその時は来るからさ。それまでは俺も我慢してんのさ。お、そろそろ限界かな?またな〜あるじ〜。』
頭の中の声が消えたのと同時に、黒いモヤが消えていった。
あいつはいつも「その時」とか「選択の時」とか意味わかんないことばかり言う。痛みに慣れたのも、あいついわく自分のおかげだって言ってた。痛覚を鈍らせてるらしい。よくわかんないけど。
「その時とか、選択とか、まずここから出れなきゃ僕に自由なんてないんだけどな」
なんて、1人で自虐したのと同時に
外から悲鳴や怒号が響き渡った
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