第33話 スケルトン流のミリー VS ネコ流のラムネ

カキン! カキン!

 金属の音が低く、時には激しく高く、聴こえる。

ミリーは最初からローブを脱ぎ全力でラムネに挑んでゆく

 その姿は美しく危うい光沢を剣から放ち――手で触れてみたいという好奇心すら抱いてしまう危うい剣の打ち合い。

二刀流であるミリーがやや優勢だろうか?

建物の入り口にいたラムネは今は庭の方まで押し返されている。

それは技術の差と言うよりもミリーとラムネの体格と腕力の差。

このまま一気に押し切ってしまいたいが心の奥に何かが引っかかる。

 タンポポが咲いているだけのだだっ広い庭

 やや後ろに引きすぎているラムネの足

さっきまでは顔だって力に耐えきれずに苦しそうだったはず――そのはずが ふと見るとラムネは笑っている。


 ラムネはタンポポの花を力強く踏みつけると脚力のこもった技を発揮した。

「スキル:残像剣!!!ネコジャラシ


カキン!


ミリーの片手に持っている剣は飛んだ

その出来事は、刹那せつな瞬間瞬時しゅんかん、しゅんじの間に行われた。

剣が残像で2本に増えて蛇のように曲がって見えたのだ。

ミリーは思わず声を漏らす


「やられた!」

「ニャ ニャ ニャ」


笑うラムネを見るとなおさら悔しさがミリーの中にこみあげてくる。

種を明かしてしまえば曲がった剣というのはラムネのシッポだ。

二度目はないスキル攻撃だが一度だけ、知らない相手には絶大な効果を発揮する。

そして 短剣一本で戦うミリーとラムネの立場は逆転した。

 

さっきまでだだっ広い庭にいた二人のはずが建物まではあと5mと言ったところだろうか

さらにジリジリと追いつめられて3m――もう後がない。

ラムネの刀を握る手に力が入る。

顔はほころびを隠せず脳裏にはミリーを斬り裂いたイメージが完成しつつある。

そのとき! ミリーは後ろに飛びのいた。

建物までの距離は0m――しかし ミリーは短剣を両手で握りしめ最後の一撃を放つ


「カオスブレイカー!!!」


カキン!


ミリーの渾身こんしんの剣もラムネは受け止めてしまう。

「終わったニャ―― ニャ ニャ ニャ」

「ラムネよ。私はスケルトン流の使い手――呪いの剣の恐ろしさを見るがいい」


絶対呪殺闘気カースオーラ


ミリーの闘気がドクロに代わるとドクロたちはラムネに襲い掛かる。

ラムネは 刀を捨てることでノックバック効果を短縮してギリギリかわすが

数発のドクロを足に、そしてふくらみのある胸に受け、体の中を貪りむさぼ食われる感覚に声を漏らす


「キャン・・」

「足を負傷しては戦えぬだろう」

「まだニャ―― こっちには人質のトシユキがいるニャ」


トシユキはラムネのスキル攻撃を受けて意識を失い眠ったように動けなくなっている。

状況は聞こえているのかもしれないが自分が人質にされてしまい、さぞかし悔しい思いをしているに違いない。

ラムネはトシユキの上に乗っかった。

そのとき!


「ぶぶぶ~」


無意識のトシユキからオナラが放たれた。


スキル:マタタビを付与しました。


「ゴロ ゴロ ゴロ ニャン~」


ラムネはトシユキの上に乗ったまま体をこすりつけ ゴロゴロとし始めた。

酔っぱらって見られていることに恥ずかしさを感じることもなく、体に自分の体をこすりつけ柔らかいだろう

ラムネの体がトシユキの上で――ユサユサ――プルプルと振舞われた。

意識がないとはいえ、このままではトシユキが獣人に目覚めてしまう。

「ベロベロ―ベロベロ」


そんなとき戦いを見守っていたリーファがミリーに問いかける。

「ミリー 私に やらせて」

「すでに勝負はついた。 後は任せた」

「ラムネ! ほ~ら ボールだよ! ボール遊びしましょうね!」


リーファはファイアボールを地面に転がした。


「ニャ!!!」

地面を転がっていくファイアボール。


ドッカン!


こうしてラムネは倒されてトシユキは目を覚ましたが立ち上がると何やらモゾモゾとして、

怪我でもしたのかとみんなが近寄るとトシユキは股を抑えた。

「トイレ!少し時間がかかる。その後はこのギルド帳簿を残した張本人ちょうほんにんのツリーグルのところへ向かうぞ!」


「時間? トシユキ 大のほうか?」


「そ・・そうだ。時間が必要だ・・」


トシユキは急いでトイレに駆け込むと大を済ませてきた。


「ツリーグルの奴め! 待ってろぉ!!!」

「トシユキ とっても 元気 カッコよくて好き・・」

「あわわ リーファ 今はくっついてくるな。色んな意味で・・」

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