第29話 トンネルの奥にあるもの
昨日襲われたことをギルドに報告するとこの街では珍しくないという事だったけど
最近は人さらいが増えているので気を付けてほしいと言われた。
「奴隷にされてしまうと。奴隷のタトゥーをいれられてその魔力で・・・なのです」
早朝のギルドの掲示板には相変わらずの人だかり、
今日も獣人のヴィクトリアが若手の冒険者を集めては希望を与える話をしている。
「たった一ヵ月でランクアップできる攻略法を教えるわ。裏技よ。今度 みんなで集まりましょう。」
一ヵ月かでランクアップできるなら悪くないな。
ヴィクトリアは新人の冒険者には特に優しいし俺たちもヴィクトリアの
世話になったほうがいいのかもしれない。
「ヴィクトリアさん 実は俺も教えていほしくて・・・です」
新人らしくヘラヘラとした顔で頭を掻きながらみんなの話題に入る
きっと 優しく迎えてもらえると思ったしほかの新人たちも仲間が増えたと思って
上機嫌に笑顔を作っていた。
「え!興味があるの?も・もちろんいいわよ。あなたなら最短でランクアップできるわ」
俺がFランクだったからかな?
ヴィクトリアに伝授してもらえればランクが上がって研究所の依頼に近づける。
そうと決まれば早速 Fランクの依頼をうけるぞ
午前中の清掃の仕事を簡単に片付けると午後からは犬のロリを探した。
「下水って言ってたな?」
歩き回っていると確かに 地面から突き出た建物などがあって
坂を下っていくと確かにあった。
石を積まれて作られたトンネルだ。
そして 薄暗い奥の方からは淡いグリーンの光が見えるぞ。
「ワンワン!!」
「いた! ロリだ!」
トンネルの中にはロリがいる。
4人で慎重に追い詰めていけば簡単に捕まえることが出来るだろう。
ジリジリとロリに詰め寄っていくと 鉄格子があってロリは逃げられない。
よし! いまだ!!
「キャン!キャン!」
ドガ!
「いっててぇ・・」
捕まえようとした瞬間 あろうことかロリは鉄格子に首を突っ込んで
無理やり向こう側へ行ってしまった。
おかげで俺のオデコは鉄格子とゴッツンこだ。。。
「ワンワン」
ロリが勝ち誇ったように俺たちを呼んでいる。
これるものなら来てみろって感じだな。
振るい鉄格子だしカギ穴を見るとカギと言うよりも単純なカギ穴。
まるで おもちゃのような・・。
そのときリーファが俺の袖を引っ張った。
「トシユキ 昨日のカギ 合ったりしないか?」
ガチャ!
何という偶然。
単純な構造だったからなのか扉は開いた。
よし 捕まえたぞ。
「ク~ン ク~ン」
ロリを捕まえると急に人懐っこくなって俺の顔をなめ回してきた。
ロリの居場所はツリーグルの言う通りだった。
おかげで簡単に捕まえることが出来たし簡単な依頼だったな。
「簡単だったわね」
「ああ 報酬も期待できそうだな」
それにしても この薄暗いトンネルはまだまだ 先が続いている。
もしも カギが開いたのが偶然じゃなくて
この鉄格子の開閉のために作られたおもちゃのカギだとしたら?
なにか この先にありそうな気がしてきた。
「なあ この先を ちょっとだけ見にいってみないか?」
「え~ ちょっとだけよ」
「私も 気になる」
俺はロリを抱きかかえたまま先に進むことにした。
しばらく歩いていくと奥から人のうなり声の様な音が聞こえるようになってきた。
おぇ~
うえぇ~
がんばれ・・
誰かいるのだろうか?
もしも 危ない人たちだったらと思ったら引き返すことも考えたけど
状況が気になったのでこっそり見てみることにした。
するとそこには 仰向けに寝そべっている人たちがいる。
よく見ると手にロープを握っており天井に括りつけられているロープの先端には
鉄のような何かが吊り下げられていた。
一体何をしているんだ?
必死にロープを離さないように掴んでいる様子で何をしているのかわからない。
「おい お前たち何をやっているんだ?」
声をかけると安心した表情でこちらを見ている
嬉しそうだ。
「助けてくれ! 頼む ロープを外してほしい」
何を言っているのかわからなかった。
そんなロープは手を放せばいいだけじゃないのか?
そう思っていると一人が手を滑らせてロープを放してしまった。
「もう 手が・・ダメだ 放すぞ! うわぁぁぁぁぁぁぁ」
ジュー ジュー・・・。
鉄の様な何かが落ちてくるとそれは胸に当たり
真っ赤に焼いた鉄のように燃え上がったかと思うと
胸にタトゥーの模様を残して燃え尽きてしまった。
「何だこれは?」
俺たちは残りの人たちを助けると事情を聴いた。
「奴隷のタトゥーさ。奴隷契約は本人の意思がなければ成立しない魔方陣なんだ。
だから ロープを握らされて自分の意思でロープの手を放すように仕掛けをされたのさ。
それで魔方陣は完成してしまう。
あり得ないと思ったかい?
でもね 空腹に睡魔。
薄暗いトンネルの中での虚無の感覚が続いてごらんよ。
頭がボーっとして自分自身のことがどうでもよくなってしまうから」
そうなのかもしれない。
だけど どうやったらそんな状況になるのだろう?
こいつらの顔、ギルドで見たことがあるヤツもいるぞ。
後ろから声がした。
「見られちゃったね そこまでさ!」
「お前は ヴィクトリア!!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます