第28話 淡い精霊石

犬のロリの捜索を毎日報告するだけでお金はいくらかくれると言ってたから

宿銭を稼ぐにはちょうどいい。

俺たちって旅をしているのに金策なんて何一つしてこなかったんだよな。

ギルドにも所属をしたことだし次の街まで移動できるお金くらいは稼がねば・・。

ギルドの掲示板を見ると家出の捜索なんかの依頼もあるけど俺たちが受けられるのは

草むしりにネズミの駆除にお使い。

Fランクで出来る仕事は雑用だけだった。

ミリーが 一枚の依頼書を指さした。

「これだ トシユキ! この依頼を受けよう」

その依頼は墓地の清掃だった。

手ごろな依頼に思えたが

「夕方を過ぎるとアンデットが出現しますので素早く掃除が出来る方募集」と書かれている。


アンデット?

アンデットの出る墓場の掃除なんてやったら呪われそうだ。


リーファが依頼書を指さした。

「これ いい トシユキ この依頼受ける」

「浮気調査?でも ここに小さく書かれている男の生死は問いません?!って

これは暗殺依頼?Sランクの依頼が含まれてるぞ ダメだ」


アケミが依頼書を指さした。

「トシユキ これがいいわ! ・・・でイヤァ~ンで・・・でムフフなんて遣り甲斐を感じる依頼ね」

「アケミ 最近はそういうところ隠さなくなったよね。。。ダメだ!」


結局、俺が庭の清掃の依頼を選んだ。

小さなことからコツコツとってね。

犬のロリの情報収集も兼ねていた。


初めて受けた依頼は落ち葉の掃除だった。

庭と言っても石がゴロゴロ飛び出していて葉っぱを片付けるのも一苦労だ。


「キャ! 痛い・・」

「大丈夫か?リーファ」


「ポッポー」

ハトが飛び去って行くと

リーファの石で転んで膝からは少しだけ血が出ている

膝をスリむいてしまったようだ。

掃除が終わって依頼主のおばさんが出てくると

「おや すりむいたのかね?それは家の庭がすまない事をしたねぇ~そうだ 犬の話だけど・・」

とロリと特徴が一致している犬を見かけたと教えてくれた。

依頼が終わってギルドに報告に行くとスリースターのヴィクトリアが

若手の冒険者と話をしている。

「面倒見がいいんだな」

ヴィクトリアはランクが上がれば討伐の依頼も受けられる様になり

素敵な冒険が始まると希望を与えるような話をしていた。


俺たちは受付に着くと受付のお姉さんは依頼の報告かと聞いてきたので

そうだと答えるとプレートを見せてほしいと言われた。

プレートを見せるとどういうカラクリなのか以来を完了していることが伝わったようで

その場で報酬を貰うことが出来た。

「こ・これだけ・・」


庭の掃除とは言え4人でこれだけ?

これじゃ 宿銭にも足りなかった。

次は ツリーグルに報告に行かないとな。


「待ってください」


受付のお姉さんに呼び止められた。

「こないだツリーグルという男に話しかけられていましたね。・・・・あの男に気を付けてください」

釘を刺された気がするけどこないだのギルドでの話だろう。

受付のお姉さんの声が大きかったのかギルド内の人たちやヴィクトリアが

こちらを見ていた。


でも 犬の依頼を受けた話は出てこないし気づかれてないのか?

宿銭が少ない今 依頼を受けていることがバレるわけにはいかなかった。


ツリーグルの家に向かって歩いていくと所々で大理石の柱が地面から突き出ている。

これは王国があったころの名残なのか?

さらに進むと 今度は急にゴミや水たまりが無くなっていき

徐々にきれいに道が整頓され手入れのされた庭とお屋敷が現れた。


「もしかして ツリーグルって金持ちだったのか?」


「ポッポー」

さらに目を引いたのは言うまでもなく・・ハト・・ではなくハトの先には

「転移ポータルがあるぞ!」


屋敷の門のところには転移ポータルが設置されていた。

門をくぐって屋敷の呼び鈴を鳴らすと執事が出てきてツリーグルのところへ通された。

片目に眼帯を当てているツリーグルはヨロヨロとリーファに駆け寄る。

「・・・ただのボロ屋じゃよ。

それよりも リーファよ。

怪我をしておるな それはいかんぞ」


ツリーグルはすぐさまリーファの怪我に気が付くと

執事がやって来て傷の手当を始める。


紳士的なふるまいに屋敷をボロ屋と笑っていたが装飾品や金のメッキのされたタンスなど

かなり高価なものをさりげなく使用している品のある人物だ。

その後は報告だけして帰ろうと思っていたのだが食事に誘われた。


「里 襲ってくる男 みんな弱い」

「ははは そうか。。そうか。。」


リーファと話が合うなんて珍しい人だと思った。

エルフだからだろうか?

続いて犬の報告をすると ツリーグルは首を振る。


「ん~ その犬ではないな」


ピンとこないものがあったのだろうかきっぱりと違うと言い切って見せると

考えているのだろうか?

しばらく間が空いた。

そして 左手を持ち上げるとエメラルドのように緑色に光る大きな宝石の指輪を見せてきた。


「これが見えるかな?」


アクセサリーに目のないアケミが答える。


「指輪ですね。でも くすんでいる黒い石?そうね~キャッツアイか黒曜石の原石かしら?」

「ほっほっほ そうかキャッツアイに見えるか。

確かに磨けば黒く光るやもしれぬな。

では リーファにはこれが見えるかな?」


アケミを見て少し首をかしげると向き直って素直に答えた

「グリーン。。緑色に光る石 中に書かれている文字  エルフ文字のエル」

「ほっほっほ パーフェクトじゃ。少し寂しい気もするが。。やはりそうか。

この石はな。 

精霊石と言って、その淡い光は膨大な魔力を持つ賢者か一部の種族にしか見ることが出来ぬのじゃ

実はな この石をロリの首輪にも付けているのじゃ

これで探しやすくなったじゃろう?」


俺にも淡くだがはっきりとグリーンに見えるぞ。

実はニンニクマンってすごいヤツじゃないのか?

「あの 俺にも緑に見えます」

「はっはっははは 冗談がうまいのう」


「トシユキったら(もしかして 恥ずかしい系?)

「見えるのか? さすが トシユキ」

正直に打ち明けてみたけど 笑い話にしか聞こえなかったようで大笑いされて話は流れてしまった。



ツリーグルは 何かを思い出したように手を叩いた。

「あとは。。。そうじゃ 下水じゃ。王国があったころの下水が洞窟のような形で残っておる場所がある。

きっとロリは 雨露をしのぐためにそこにいると思うのじゃ。

探してはくれぬか??

ああああ・・痛いたたたぁぁあ

すまんのう ロリに会えなくて眼帯をしている目がうずくのじゃ。

ロリに会えなかったらと考えると・・血の涙が出るやもしれぬ・・。

急いでくれ頼んだぞ」


すっかりご馳走になって遅くなった帰り道。

薄暗い路地を歩いていると誰かが叫ぶ


「待て!」


突然魔物を召喚してきて戦いを挑まれたがお腹いっぱいになった俺たちに勝てるわけがない


「ファイアボール!!!」


ドッカン。


「ひっ ひえぇぇぇぇ 助けて」


男の顔は見れなかったけど ふと足元を見ると何かが落ちていた。

カギだろうか? 

鉄でできたおもちゃのような形のドアノブのような取っ手だ。

アイツが落としていったものだろう。

俺たちはドアノブのカギを拾った。

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