第3話 エルフの村の姿

窓から強い日差しが目の中に入ってくる。

顔をそらせてやり過ごそうにも寝返りするたびに日の光がレーザー光線のように顔を照らしつけてきた。


はぁ~(*´Д`)


部屋の中を見渡すと水瓶があり小さなテーブルの向こう側には二人が眠っている。

起き上がって水瓶の水を一口飲むと窓から刺す日差しが強い事に気が付いた。

どうやら朝日ではなく昼に近い時間まで眠ってしまったようだ。

無理もないだろう。

昨日は 散々歩いてようやく民家にたどり着いたと思ったら今度は矢が飛んでくるのだから

精神的にも疲れ切ってしまう。


アケミはどうだろう?

昨日俺が見た夢のなかでは アケミの声の後に腹黒いアケミがとんでもない事を言ってたな。

教えてあ・げ・るだのなんだの マウント発言の連発だった。

まさかな。こんなに寝顔は可愛い子に それはないか。

それにしても二人を眺めているとエルフの顔は日本人とは違う美しさがある。

水のように潤った長い金髪の髪に血色のいい唇 

顔のパーツのバランスも完璧としか言いようがない。

もしかして 日本人のアケミはリーファに負けているのか?


リーファの体付きは確かに小さい。

小さな胸はツン!と立って自己主張をしているしお尻も小さいのに

桃のようにそそり立つラインをしている。


あれ? これは日本代表のアケミの負けじゃないか?

アケミは 完璧ゆえの未完成なんだ。

完璧すぎるゆえに 顔の形が整うのももう少し大人になってからだろうし

ナイスボディーなのはわかるが もう少し身長が伸びなければ

さらなるボインな体を 受け入れることもできないだろう・・・。


ボイン? ん!


俺の体に電気が走った。

そうだ アケミと違ってリーファの胸はぺちゃぱいじゃないか。

パーツ単体で評価をしていけば 日本にもまだ勝てる望みがあるぞ!


「日本の優勝だ!」


アケミがエルフに勝利したことを日本人として誇らしいく思った。

二人の健闘を称えようとテーブルのところまで歩くとリーファの耳がピクリと動き

目を覚ましてしまった。

「う。。うぁ~おはよう」と言うとアケミも目を覚まして眠気眼をこすりながら返事を返した。


顔を洗って朝食の準備にかかるリーファをアケミが手伝う。

「リーファ 私も手伝うわ(ボーイのトシユキに私のエプロン姿をみせてあ・げ・る)


なんだろう?

アケミの心の声が聞こえる気がする。


トウモロコシの粉を練ってパンを作っているようだが俺も何か手伝おうと近寄ると

リーファは険しい顔をして「男は座ってる!」と言われてしまった。

座ると二人はまた楽しそうに粉をこねだした。

時々顔についた白い粉を見て笑い合ったりするが 

アケミからは「いやぁ~だホントだ 真っ白ね ふふふ(粉を付けたのは計算よ。ボーイには可愛く見えるでしょ)」

という心の声が聞こえてくる。

間違いない。心の声だ。

可愛いと思っていたのに・・俺の青春は終わった・・。

このことは黙っている事にしようと思った。


リーファは アケミといると楽しそうに見える

「アケミ 可愛いね。私が 拭いてあげる」


幸せなら本当の事は知らないほうがいいのかもしれない。

それにしても 二人を見ていると少し照れ臭い気持ちにもなってくるな。

窓の外を眺めると日差しが高いのに村には人影がない。


「なあ 村長が捕まったって昨日話していたけど村の人たちも捕まったのか?」


リーファは首を振ると「初めは何人かのエルフが捕まった。でも 長老が身代わりになってみんな逃げた。

みんな 外にいないのはまだ寝てるから」と言う。

こんなに日が高いのに寝ているとはどういう事だろう?

俺は昨日の話に出てきた転移ポータルも見てみたいので一人で出てくることにした。


相変わらず外には人がいないな。

居るといったらハトが一羽ぐらいか。

「ポッポー・・」

そしてこれが 転移ポータルか?

円形の台座の上に 支柱が4本立っていて天井には石で出来た丸い玉が載せられていた。

これが転移装置なのかどうかはわからない。

誰かに話しを聞いてみようと村の周りを一回りしてみたが

ちょうど一軒の家のドアが空いてエルフが出てきた。


白い布を右手で握ってローマ人が着ている服のような姿の女のエルフに思わず声がもれた。


「裸じゃないか!」

シーツのような白い布一枚を羽織っただけで服を着ていない。

寝ぼけた顔でヨロヨロと井戸の方へ歩いていく

そのうち ほかの家のドアも開いて中から 寝間着の女エルフや下着姿のエルフも出てきた。

エロいというより だらしがない。

顔にヨダレの跡までつけてやる気のなさそうな顔で井戸へ向かって行った。


「これは どうなっているんだ・・」


不思議がっていると後ろからリーファの声がした。


「村長がいなくなって みんな ニートになった。ニートわかるか?」


リーファが言うにはこの里には女エルフしかおらず。

村長がいたときにはこの里には厳しいおきてがあるらしい。

長老が言うには 「エルフの寿命は長い。今日を大切に生きられないエルフはほおって置けばニートになってしまうぞ」と言ったのだとか。

そこで常に美しくあること、強くあることを里のエルフたちに求めたらしい。


「長老がいなくなって エルフたちは怠けだしたというわけか?」

「そう 長生きをするエルフは人生に目標を立てるのが苦手。そして男どもに ニートなエルフの事 気づかれた」


人間でさへ 先延ばしにしてしまう悪い癖があるというのに人間の数倍生きることが出来るエルフが

一日一日を大切に生きるためにはよほどの精神力が必要になるだろう。

リーファは 悲しげな顔で話をつづけた


「村長がいない村。このままでは男たちの楽園になる。それはダメ。だから 私一人で男たち おいはらってる」


里のエルフたちを守るためにたった一人で男と戦っていたのだという話をした。

どうりで俺に対しての態度が冷たかったんだ。


「それはそうと リーファはどうしてここに?」

「朝食で来た。アケミに呼びに行かせる 可哀そう。私 呼びに来た」


その話を聞いてお腹がぐーっと音を立てた。

もうお昼近いというのに 何も食べていない。

急ぎ足で家に向かうと、道中リーファは

「アケミは料理が上手だ」とか「アケミと結婚したい」とかそんな話ばかりしてくる。


でも家が見えてくるとリーファの顔が曇り始め

ドアが壊されたように開いているのが俺の目にも見えた。

家の中に入ると 家の中は散乱していて争った跡がある。


「アケミ!」

「アケミ~どこ?」


アケミがいない。

テーブルの上には手紙が置かれていた。

俺が手に取って読んでみたが この世界の文字が読めない。

リーファが俺の手から手紙を奪い取ると「南の岩山・・」と言って素早く外に出ると

村に繋がれている馬に乗って南の方へ駆けていった。


「追いかけなくちゃ」


急いで馬にまたがって 手綱を振ったり引っ張ったりしてみたものの

乗りなれていないために 走り出すまでに時間がかかってしまった。


ブルブルブル 


「もっと 走ってくれ!」

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