美嘉さんと私
せめて病院代くらいは自分で稼がないと、と思いましたが、普通の病院などで働くのは怖くて出来ませんでした。体調も万全じゃありませんでしたし、子どもの下校の都合もあったのでそれを許容してくれるところでないといけませんでした。
その時私は思いました。今まで統一教会には苦しめられ、母にも苦しめられてきたけど、教会の人は嫌な人は居なかった。と。だから食口の居る職場で働かせてもらえないか、母に訪ねてみることにしました。
「この子は足が悪くて立ちっぱなしより座って仕事ができる方がいいと思うの。」
「どうかこの子を働かせてやってもらえん?」
色んなところで働く食口たちに母は進んで声をかけに行ってくれました。そこで私はある喫茶店で働かせてもうことになったのです。
そこの喫茶店のオーナーは、美嘉さんというとても綺麗な方でした。昔、そこの喫茶店に行ったことはあったので美嘉さんのことは知っていましたが、どことなく怖い印象がある方でした。
しかし美嘉さんは、私が思った以上にとても優しい方でした。私を「めぐちゃん」と呼んでくれ、私が失敗しても指摘していつまでも怒ったりせず、働きやすい環境を与えてくれました。
美嘉さんと話す時間はとても有意義でした。美嘉さんは韓国ドラマが好きで、よくその話をしていました。美嘉さんに勧められて私もいくつか韓国ドラマを見ました。
そんなある日、少し症状が落ち着いていた私にまた症状がぶり返してしまう事態が発生し、私はまた自分を責め立てていました。
ロクに喫茶店の仕事も出来ずに店内をうろうろしていると、美嘉さんがすぐに声をかけてくれました。
「めぐちゃん、どうしたの?」
「何でもないです、ちょっとごみとか落ちてないかなって」
「嘘。絶対何かあった。そんな顔してる」
こんなに自分のことに気をかけてくれる人が居ることに戸惑いを覚えましたが、私は素直にその時の気持ちを美嘉さんに吐き出しました。美嘉さんは仕事の手を止めて私のために温かいコーヒーと美味しいプチケーキを用意して話を聞いてくれました。
美嘉さんは、私が母にして欲しかったことをこうやっていつもしてくれたのです。
美嘉さんは私の気持ちを全て受け止めて、その上で私を肯定してくれました。
「めぐちゃんは自分に厳しすぎよ、どうしてそんなに自分を責めるの?こんなに頑張っているのに」
この時初めて私は自分に対して厳しすぎたのだと分かりました。美嘉さんは自分もそうだった、めぐちゃんは昔の私みたいだと話してくれました。
美嘉さんに話を聞いてもらうとすぐに私の悪かった症状はおさまり、通常通りになりました。美嘉さんには本当に感謝してもしきれません。
美嘉さんには3人の子どもが居て、皆自立しています。しかし3人の兄弟の仲はとても良く、皆が「お母さん、お母さん」と美嘉さんを慕っています。
私はこんな3人を見る度に涙が出そうになっていました。同じ教会の人なのにこんなにも母を慕うことが出来るなんて。
美嘉さんが私の本当のお母さんだったら良かったのに。何度も何度もそう思いました。
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