結婚と2度めの借金

それからある日ぽつりと私は教会に行かなくなりました。

教会の献金で生活しているような教会長なんかが腹立だしく思えてきていました。私はこんなに嫌な思いいっぱいして働いて、更に借金まで背負わされたのにあの人たちは教会に来るだけ来て献金で悠々と生活しているのだと。

そこでまた、母と口論になる。

「あんたね!鈴木教育長様はとても素晴らしいお方なのよ!?」

「素晴らしい?どこが?信者の献金でご飯食べて家族養ってる人間のどこが素晴らしいわけ?ただの寄生虫じゃん。」

「とにかくよ!鈴木って苗字だって素晴らしいんだから!」

「意味が分からない。私は鈴木なんていう超単純な苗字の男なんか、絶対結婚しないから!」

母の苗字だけで素晴らしいと言い出した謎理論。無条件で鈴木という苗字の人は全員素晴らしいのか?んなアホな。そう思っていたが今はこの出来事に感謝しています。

私は数年後、同じ鈴木という苗字の一般男性と結婚することになるのですから。


私は母のことを父に相談していたこともありました。父は黙って話を聞いて「分かった」とだけ言っていましたが、私の知らないところで父がいつも母から私を庇ってくれていました。

私に結婚を考えている人が居ると母に話した時、母はまた荒れ狂い、父にも喚き散らしたそうです。

「お母さんがあの時、めぐみに悪魔の子なんて言わなければこんなことにはなっていない。もしめぐみが韓国にでもお嫁に行って不幸になったら責任が取れるのか?めぐみは自分の決めた相手と結婚して自分で結婚の責任を取る。それの何がいけない?」

「あの子は悪魔の子なのよ!祝福を受けないと地獄に堕ちる!お父さんのせいよ!お父さんのせいでめぐみは地獄に堕ちるんだから!!」

しかし、私の連れてきた相手は統一教会の大嫌いなお酒もたばこしない、スポーツマンな方でした。無事に結婚して現在の夫になっていますが、結婚してしばらくは実家には顔を出せませんでした。

会えるようになった頃に母は、家に残った私の荷物を根こそぎゴミ袋に入れて新居へと持ってきました。それを見て「ああ、2度と帰ってくるなってことだな」と感じました。

夫とお付き合いをしている間に統一教会のことは話していました。父にも「結婚したくても相手の親がだめと言えばだめ。隠さずにきちんと話しなさい」と言われていたので私は別れる覚悟で夫に統一教会のことを話しました。

その当時の夫は自分の両親にもきちんと伝えてくれていて、「宗教はだめだ」と言いながらも結婚を反対することはありませんでした。

周りに恵まれて、私は一般男性である夫と結婚し、苗字も鈴木になったのです。

そして通帳の名義の苗字を変えてもらおうと銀行に行った時でした。私は銀行員の方からとんでもない言葉を耳にするのです。

「あの、通帳がもう1つあるはずなのですが…」

「え?いえ、これで全部のはずです。」

「こちらの…銀行からお金を借用している用の通帳になるのですが」

銀行員の方に聞いて私はすぐに母だ、とピンときました。私はその場ですぐに母に電話をかけました。

「お母さん…私の名前使って銀行でも借金した?」

「したよ、通帳もあるよ」

何も悪いことなんてしていないというばかりの言い方に私は心底呆れ果て、すぐに通帳を私に渡し、借りた分のお金は母に返すようにと伝えました。

これが2度めの私の名義で借金をさせていた事件でした。

その後、妊娠して出産という時にまた、教会に行くように母から言われて少し通っていましたがそこまで深く勉強したりお説教されたりすることなく過ごし、無事に2人の子どもに恵まれました。

産後の経過も良く、私は子どもたちを保育園に預けて仕事をすることにしました。しかし幼い頃の嫌な思い出があるために子どもは必ず16時には迎えに行くようにしていました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る