私とフォーラム

やがて私は看護師を目指すことを決意し、看護学校に通っている18歳になった時のことです。

母に誘われてパネル展というものに参加するようになりました。行きたかったわけでも行きたくなかったわけでもありません。その時の感情はあまり覚えていないのです。

母と共にパネル展を見回ると、そこにはたくさんの文鮮明氏の偉業が綴られたパネルが並んでいたのです。アメリカでの演説や北朝鮮の最高指導者と笑顔で抱き合う写真。どれも興味が湧きませんでした。

パネルを一通り見終わった後、母と休憩スペースで紅茶を飲んでいると1人の女性が挨拶をしに来てくれました。

「初めまして、こんにちは。斎藤と言います。」

斎藤さんはとても明るく、感じがいい方でした。斎藤さんにパネルを見てどうだったか、どう思ったかなどの感想を求められましたが何と答えたかは覚えていません。

母と斎藤さんと話していくうちに、母にフォーラムに行ってみないか、と問われました。フォーラムというのは世間で知れ渡っている呼び名を使うとビデオセンターのことでした。

勉強も忙しかったし、どうしようかと思いながらも私は、斎藤さんの人柄に惹かれて「斎藤さんが居るなら」とフォーラムに行くことを決意しました。

今思い出しても私は斎藤さんのことが好きです。信仰がない今でも、彼女が本当に幸せになっているのか心配でたまりません。

私はフォーラムにビデオを見に行くよりは斎藤さんに会って話しに行くために通っていました。斎藤さんは本当に優しかった。

物言いも柔らかく、献金を強要するようなこともありませんでした。斎藤さんは他の方の話し相手もしないといけないため、斎藤さんに会えない時は愛さんという別の方が話し相手になってくれました。

愛さんは人懐こい感じはありませんでしたがとても優しく、とても丁寧に接してくれました。私は愛さんのことも大好きになりました。

斎藤さんや愛さんに支えられながら私は1泊2日の修練会にも参加し、4dayという修練会にも参加しました。相変わらず合わない方も居ましたが、斎藤さんと愛さんが居たから頑張れました。

そしてそのうち、斎藤さんに結婚のことを聞かれるようになりました。

「めぐちゃんはどんな人と結婚したい?」

「教会を理解してくれる人と結婚したいです。教会の人がいい。」

思えばこれは祝福を受けられるかどうかの判断基準にもなるものだったのでしょう。


私は母が宗教1世になり、その子どもの私は2世になります。

しかし教会で母が祝福を受ける前に私が生まれたので私は信仰2世になり、エリのように母が父と祝福を受けた後に出来た子どもは祝福2世と呼ばれます。

もちろんのこと、信仰2世よりも祝福2世の方が立場が上のように感じます。祝福2世は神様の血統になっている子、信仰2世はサタンの血統の子なのです。

そのため、私は教会の誰かと祝福を受けなければ地獄に堕ちてしまうとのことでした。現代で何も罪を犯していなくてもアダムとエバの犯した原罪があるため祝福を受けておかないと問答無用で地獄に堕ちる、とのことでした。

私は夢見る夢子ちゃんだったこともあり、いつかお父様が私のための白馬の王子様を選んで祝福してくださると本気で信じ、待っていました。

そして霊の親とは、教会へと人を繋いだ人のことを言います。母の霊の親は大橋さんという自己主張が強い方でした。母ですらも言い負かされてしまうほどの人でした。

母の霊の親である大橋さんは私と母に言いました。

「早く祝福を受けさせなさい、今は純潔でとても綺麗なのだから。」

しかし母は首を縦には振りませんでした。

「この子にはまだ早い。原理を何も理解していない。」

天地創造の原理、アダムとエバの堕落論、復帰摂理などをフォーラムで勉強してきた私にとって、母の言葉は心に傷がつくものでした。しかし母のこの言葉はただ単に私を嫁に出したくないが故の言葉でした。

母の言葉にショックを受けていましたが、私は夢で文鮮明氏と会い、彼に言われました。「あなたの相手はまだ来ていない」と。私はすっかりそれを信じ込み、また、真のお父様が夢に出てきたことをフォーラムでとても持て囃され、有頂天になっていました。

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