第47話 真実を告げる!?

 絶対に行くなと言わんばかりの鍵がかけられた扉を開けて俺たちは屋上に入った。


 後夜祭の準備、生徒たちの監視、保護者を始めとする来客の対応に追われているのか校舎には先生の姿が1人も見当たらない。


 俺たちが校則で禁止されてるところに立ち入ったことが先生たちに見られたりでもしたら間違いなく停学は避けられないだろう。最悪の場合、退学なんてことになったら生徒会長に罪をなすりつけるとするか。多少、寛大な目で見てくれるかもしれない。俺たちだけが捕まるんじゃなくて道連れにしてやる。


「ここからはツリーがよく見えますね」

「そうだな」


 当然ながら屋上からは敷地内が見渡せる。ライトアップ間近のツリーに多くの人が集まってるのも確認できる。会長が言ったようにここから見た景色は眺めがいい。夜の光に照らされたノアさんの姿はよりいっそう輝いて見える。


「夜闇くん」

「ん?」

「人付き合いが苦手なわたしがずっと不安だったことは校外学習の時にも夜闇くんには言いましたよね」

「そんなこともあったな」


 あれは校外学習で行われた肝試しに遡る。ちょっとしたアクシデントから俺とノアさんがペアになって、驚きのあまり足に怪我をした彼女をおんぶした時に言われたことだ。


 人当たりの良い彼女のことだから社交的だと思っていたけど、実際は違った。誰よりも気持ちが優しい分、色々と考えてしまうのだろう。その結果、人付き合いが苦手な体質になってしまった。付き添いのルイスくらい距離が近くなれば冗談が言える関係性まで辿り着くには時間がかかってしまうのだろう。


「今のわたしは、あの時のわたしから変われてるんでしょうか」

「もちろん。みんなノアさんのことを慕ってるよ。今日の演劇でも1番目立ってたんだから自信もちなよ。まあ、そう簡単に受け入れられないかもしれないけどさ。でも、転校初日に比べたらだいぶ打ち解けてるんじゃない?」


 演劇を通じてクラスの結束が前よりも強固なものになったのは間違いない。今まで同じ空間で顔を合わせるだけの関係だった人たちとの距離も良い意味で近くなった。転校してきてからは笑顔も増えたし、クラスメイトとも怖がらずに会話することができてる。自慢じゃないけど、成長しているのを誰よりもわかってるつもりだ。なんたって隣に


「そうですかね」

「そうだって」

「それではツリー点灯までみなさんカウントダウンを一緒にお願いしまーす!」


 5、4、3と数字が0に近づくたびにお客さんたちの声が大きく反響して屋上まで聞こえてくる。0になった瞬間─


「それでは! ツリーの点灯でーす!」


 バンッ! バンッ!


 誕生日パーティーとかで使うクラッカーを何倍にもしたような音が響いたかと思うとクリスマスツリーに施された装飾の数々が次々と様々な色のグラデーションが作り出す光景に思わず息を呑む。


「……綺麗ですね」

「……マジで綺麗だな」


 俺たちの口から漏れる率直な感想。こんなにも綺麗なクリスマスツリーを見たのは初めてだし、今後見ることはないのかもしれない。


 けど、そんなツリーが霞むほど俺の隣に立っているノアさんの姿は一段と綺麗に見えた。

 手をパチパチ叩きながら光景を楽しんでいる。俺はというと楽しんでる彼女をジッと見つめてたことがバレないように顔を逸らした。赤くなってないことを祈るしかない。


「そういえばさ。ノアさんは短冊にどんな願い事を書いたの?」


 言ってからやべぇと思ったけど既に遅い。


「ご、ごめん。デリカシーがなかったよな。なんでもない。忘れて」

「……実は、あの人にもう一度会えないかと書いたんです」


 ノアさんはゆっくりと答えた。てっきり無視されると思ってたから思わず晒していた顔を元に戻す。


「あの人? あの人って……」

「わたしを助けてくれた人です。叶わないことなのはわたしもわかっているつもりですけど、今のわたしが1番叶えたい願い事なのでお願いしたんです」

「そうだったんだ。あのさ、ノアさん。俺、ノアさんに伝えないといけないことがあるんだ」

「は、はい。なんでしょうか」

「……えっと」


 ここまで言っておいて黙るんだよ俺! 覚悟を見せろ。今言わなきゃいつ彼女に伝える機会があるってんだ!


「夜闇……くん?」


 喋らないまま固まった俺を不思議に思ったのかノアさんの視線が俺に移る。もうここまできたら引くわけにはいかない。


「ノアさんが有名になったハロウィンの日のことなんだけどさ。実はノアさんを電車で助けたのは俺なんだ」

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