第36話 配役決め!?
その日の放課後。誰もいない教室に残っている。これで2日連続だ。今日は配役決めを終わらせるつもりなんだけど
「あのー、小宮さん?」
「なに?」
「いや、そのですね……」
あからさまに不機嫌な様子を出さなくてもいいじゃないですか? あれから話しかけてもほとんど答えてくれないんだよな。返されるのは「なに?」「ふーん」「へえ」の3種類。ロボットを相手にしてるみたいで俺としてはめちゃくちゃ悲しい。急にとんでもない距離ができたみたいだ。
「ここなんだけどさ。修正した方がいいと思うんだけど、どう思う?」
「……いいんじゃない?」
「あ……そ、そう?」
あの後ルイスたちに保健室での出来事を伝えたのか知らないけどあいつらからも白い目で見られるし、クラスの男子からはその後の体育でバスケットボールを次から次へと投げつけられた。もはやバスケじゃなくてドッヂボールだったな。おかげで全身が悲鳴をあげている。
そんな中、以前と変わらないで接してくれたのはノアさんだけだ。とはいえルイスからガミガミ説教されてたけど。過保護気味なあいつのことだからきっと付き合う友人はきちんと選んでくださいだのなんだの口うるさく言ったんだろう。
「あの……そろそろ許してくれませんかね?」
「ずいぶん楽しそうだったねー」
「だからそれはタイミングが悪すぎただけで……俺が望んでああしてたわけじゃないって」
何回目になるのか数えてないくらい同じ説明の繰り返しだ。仮に来るなら俺が布団の中に潜んでた少女に捕まる数分前に来ればよかった。それならいくら見られても問題なかったからな。入ってきたタイミングが最悪だったってだけだ。
「ふーん。そうなんだー。タイミングが悪かったんだねー」
なんだよその棒読みと人を信じてないような目は。まるで俺があの状況を楽しんでたみたいじゃねえか。違うぞ? 勘違いするなよ? 俺は被害者の方だからな?
「それにしてはずいぶんと鼻の下が伸びてたみたいだけど?」
指摘されて思わず手で鼻の下を隠した。んなわけあるか。あの時楽しんでたわけないだろ? そうだよな、俺。確かに柔らかい感触がありましたけど……やばい、自分が信じられなくなってきた。いよいよおしまいかもしれない。
「まあ、その話は後でじーっくり聞くことにして……」
小宮さんの視線が俺の隣に移る。何もおかしくないです。いつもこんな感じですと言わんばかりに俺の腕にしがみついている少女がいる。
「なんでルウェナさんがここにいるの! ていうか太一くんから離れなさいよ!」
「だってー、早く決めないと太一とデート行けないでしょー! だからあたしも参加して少しでも早く終わらせようとしてるんじゃない!」
(はあ!? 何言ってんだ! 余計な爆弾を持ち込むなっての!)
「で、デート!? 太一くんどういうこと!?」
「知らないって! 俺も今聞いたんだから」
訝しむ小宮さんに俺は首を振って答えた。俺にもわかんねえよ。本当だからな! 詳しく聞きたいのは俺も同じだ。彼女が何考えてんだか理解できるやつは誰もいないんだよ。爆弾をぶち込んだ本人は小宮さんが慌てた様子を見せたのが面白いのかケタケタ笑ってる。
「もういい! とりあえず配役を決めちゃうよ。まずはドラキュラ! 誰がいいと思う?」
「はいはいはーい!」
「あなたには聞いてない!」
「あたしも同じクラスメイトだもん。参加権はありまーす!」
ごもっともです。ルウェナさんの正論にどう反論するべきか小宮さんはむむむと顔をしかめてどうするべきか悩んでいる。そんな顔しない方がいい。ルウェナさんが余計に喜ぶからな。
彼女と出会って1日も経ってないけど大体わかった。多分だけど、他人を困らせるのが好きな人なのかもしれない。渋谷で会った時はそんな気配を全く感じなかったんだけどな。ナンパしてたチャラ男たちもまさか彼女がこんな人だったなんて知らないと思う。
「今日転校してきたばっかりのルウェナさんにはありませーん!」
「あるもん!」
「じゃあ誰がいいと思うの?」
「主人公は太一でヒロインはわたしでいいでしょ?」
「ダメに決まってるでしょ!」
「何言ってるの! その辺にしないと流石に怒るからね!」
なんで女性同士の喧嘩って見苦しいんだろうな。姉と母がチャンネル権を争奪してる時も俺と父さんは死んだ魚の目をして2人の様子を見てたっけ。
「で、ご指名らしいけど、どうすんだ?」
「遠慮する」
もちろん断る。俺には荷が重すぎるからな。
「夜闇も大変だな。じゃ、俺たちで簡単に決めるか」
「ああ、そうした方がいいかもね」
俺は黒須と話し合いながら仮ではあるが配役を決めていく。最後の1人が来て終わったところで言い合いも終わったらしく、2人とも意気消沈している。
これじゃあなんのためにわざわざ放課後残ったんだかわかんねえな。ともかく主要メンバーは決まった。あとは彼ら彼女たちがやってくれるかどうかだけだな。
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