第12話 バレたけど!?
油断していた時に突如として訪れた危機!
なんでわかった? 顔に出てたのか!?
落ち着け。とにかく今日のことを思い出すんだ。昼食の後は普通に授業を受けただろ? そんで、バイトがないから家に帰っった。
……やべえ。俺の正体に気づかれる心当たりがマジでない。
俺ってそんなにポーカーフェイスが下手なのか? 別に隣のノアさんを見てニヤニヤしたことなんて一回くらい……じゃなくて! 少ないはずなんだけどな。
気づかれるくらいなら小宮さんや黒須に指摘されるだろうし。
「どうした?」
「あ、いや、その……」
やばい。何か言い訳をしねえとな。返答が遅くなればその分怪しまれる。ええっと、そうだな──
「き、急に電波が悪くなって、よく聞こえなかったんだよ」
自分でも下手すぎると思う。突然のことで思考が上手く働かない。今すぐに糖分を多量摂取した方がいい。
「なるほど。では、もう一度言おう。お嬢にケーキを渡したのは君ではないのか?」
やっぱり聞き間違いじゃねえ! ていうか言い訳を信じたよ。変なところでゆるゆるだな。
「そんなわけないだろ」
反射的に俺は否定する。数秒前の俺とは違う。もう学んでいるからな。とにかく即座に答えれば怪しまれることはないだろう。こういうのは勢いが大事だって誰かが言ってたはず。
「おじょ──んっ!」
目の前で何回もお嬢、お嬢って呼ぶからついつい呼びそうになる。聞いてるだけでも恥ずかしいのに自分が言うとなるともっと心にくるな。俺は咳払いして誤魔化した。
「ノアさんに会ってたら周りの友人に言うさ。あんな綺麗な人、滅多に見かけないからな」
友人と呼べるようなやつを思い浮かべても片手の指くらいしかいないけどさ。ていうか友人の定義ってなんだ? どうでもいいわ!
「だいたい、証拠もなしにそんなことを言われたって──」
「ふふ」
「なんだよ」
俺の言葉を鼻で笑ったルイスにイラッときた。何がおかしい。笑われるようなことは訊ねてないはずだ。
「なに。やはりそうくるだろうと思っていた」
俺が否定することを見透かしているとは……まさか証拠があるのか!?
「お嬢が痴漢に遭った事件について私は徹底的に調べている。あの日、10月31日にお嬢が貰ったケーキについてのことだが、現在あのケーキを取り扱っている店は日本に一店舗しか存在しない。ケーキ屋の名前は「ゆきの」。渋谷に存在するケーキ屋だ。もちろん君も知っているだろう?」
「ま、まあ。名前くらいなら聞いたことあるけど」
そこで働いてんだから名前を知ってるってレベルじゃない。店長のあんな話や雪野のこんな話など言い始めたらキリがないくらいには知ってる。
「名前くらい? 君はそこでアルバイトをしているはずだが?」
「なっ!?」
どこで得たんだそんな情報。感心を通り越してもはや怖い。
「そんな情報をどこから得たんだ!? といった感じだな。出所はとある雑誌の1ページ。そこに記載されている記事を見ると男性従業員が1人働いている姿が確認できる」
「ぐ……」
今日の朝、小宮さんが俺に見せたやつだな。
「流石に私も雑誌の記事をそのまま鵜呑みにするほど愚かではない。店にアポを取り、直接話を聞きにいった」
(マジかよこいつ!?)
「話を聞きに行くと店長の方がこれでもかと教えてくれた。お手伝いしてくれている自身の娘とは別に1人の高校生をアルバイトとして雇っていると」
「ぐぐ……」
(あんのクソ店長! 個人情報ガバガバじゃねえか! なんてことをしてくれたんだ。お陰様でえらい迷惑なんだけどな!)
今頃くしゃみでもしてるに違いない。
「そして、当日の時間帯。他の二名は閉店作業をしている中、君は自宅へ帰宅しているはずだと証言がある。そしてお嬢が渡された試作品のケーキ」
「ぐぐぐ……」
「そもそも試作品のケーキに関してだが、買いに来た客が持っているとは到底考えにくい。そのため、従業員の誰かということになるが、ここまでの話を整理すると、あの日、あの時間、お嬢に渡すことができる人物など1人しか該当しない。それが──」
(ま、まさか……)
「夜闇太一。君ということになる。ここまでの話で反論があるのならば聞かせてもらおう」
ぐわぁぁぁぁぁ!
詰みだ。完全な詰み将棋だ。電話越しだというのになんなんだ。この圧倒的敗北感は。
「……そこまで調べてんなら言い逃れはできないな。そうだよ、ノアさんにケーキを渡したのは俺だ」
「ふむ。やはりな。であれば」
「なんだよ。まだ何かあるのか?」
「君はお嬢を助けた人物について何か知らないか?」
(ん? 今、なんて言った?)
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