第4話 上陸同期の4人
俺以外の4人は20代と思われる若い男が2人、ちょっと綺麗な感じの30代後半ぐらいの女が1人、牧師のような格好をした50代ぐらいの太った男が1人だ。
若い男は仲間のようだ。2人で何か話している。
とりあえずこの手枷足枷を何とかしたい。岩にぶつけて壊そうと適当な岩を探していると、若い男2人はもう手枷足枷を外してしまっていた。
(あの2人、鍵を持っていたわよ)
母さんが脳内に話しかけて来た。
「すいません。俺のも外してくれませんか」
俺は一か八かで男たちに頼んでみた。
「ほら、訳の分からない地ですので、最初は何かと協力した方が良いと思いませんか?」
男たちは少し考えていたが、俺に近寄って来て、鍵を外してくれた。男たちは女と神父の鍵も外した。
「とりあえず、協力しよう」
若い男の1人が言った。
女も神父も同意した。
「まずは水の確保、次に食料と寝る場所の確保ですかね?」
俺がそういうと、皆うなずいた。
「俺にはどこに何があるのか、座っていても調査できるスキルがあるんですよ。皆さんに調査結果をお知らせしますので、少し待ってくださいね」
(母さん、ちょっとこの周りを調べてもらっていい?)
(わかったわ)
瞑想していかにも調査しているというふりをしていたら、母さんから報告があったので、調査結果を皆に伝えた。母さん、めちゃくちゃ便利だ。
「ここは島の東側のちょうど真ん中あたりです。南に行くと川が2本あって、2本目の川の先には町があります。島の中心は大きな森になっていますので、ここから西には森があります。森の先には山が2つあります」
皆が、ほう、という顔をしている。
「南に行くのがいいのか?」
若い男の1人が言う。
「そうですね。この島には大きな川が2本あって、2つある北西の山からそれぞれ南東の海岸まで流れています。北の方の川は割とここから近いです。とはいっても、歩くと2時間ぐらいかかります。町はそれからさらに2時間歩いた南の川の南側にあります」
「よし、じゃあ南に進もう」
5人は南に向かって進みだした。左手は海岸、右手は溶岩の野原の景色がずっと続く。
母さんには4人の身元を調べてもらっていて、女と神父の方は判明した。2人とも冤罪でここにきている。女は実は母さんが知っていて、後宮の星占術師のサーシャという人だった。神父の方は7神教の枢機卿で、権力争いで政敵に嵌められたらしい。身に覚えのない幼女殺しでここに送られてきた。
母さんは本当に便利だ。
1時間半ほど歩くと、遠くに川が見えてきた。皆が俺の顔を見て、言った通りあったね、という笑顔になっている。
女が俺のところに近づいて来て、小声で話してきた。
「アレン王子様ですよね」
「はい、あなたは後宮の星占術師のサーシャさんですよね」
「ええ。私、セレナ妃に罪を着せられまして」
「リチャードの母ですね。あとで対策を練りましょう」
「ありがとうございます」
川につくと、若い男2人が水質を調べて戻ってきた。
「大丈夫だ。問題なく飲めるぞ」
3人が歓声を上げた。
「どうします? さらに2時間ほど歩くと町がありますが、罪人の町ですので、治安が悪いと聞いています」
俺は若い男2人に聞いた。この2人の男はこういう未知の土地での動き方を心得ているように思えたのだ。
「そうだな。もうすぐ日も暮れるし、ここで野営して、明日の朝、町に向かおう」
野営地として若い男2人が選んだ場所は河川敷だった。ここで、俺たちは一泊することになった。
今は夏なので寒くないと思っていたのだが、夜はかなり冷えるとのことで、若い男2人からできるだけ落ち葉を集めて来いと言われた。
川の上流の方に森があり、森に入って、皆で落ち葉をたくさん集めてきた。
河川敷に人1人分が寝られるぐらいのくぼみを作り、その上に木で屋根を組み、落ち葉を屋根に敷き詰めた。
その穴に潜って寝たのだが、すごく暖かかった。
夜、母さんから男2人の正体が分かったと連絡があった。
何と隣国ナタールの諜報員で、ルナをこの島に受け入れるためにわざと捕まって、レンガ島に送られて来たそうだ。
ルナもまさか俺といっしょの船に偶然乗るとは思っていなかったらしい。明日、2人に話をしてみよう。
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