第7話 スキップ

会社帰りに雨が降った。

鞄に入れっぱにしていた折りたたみ傘を出してさした。

すると知らない間に傘の骨が一本折れて、

傘地の一部がだらんと垂れ下がった格好になった。


とても恥ずかしい。

知らない間にストッキングが伝線していたような。


私は傘の垂れ下がった部分をつまみ上げながら歩いた。

別に傘なんて折れてませんよ的に。


まるで靴下の穴を手でふさいで歩くような、

かなり不自然な格好だ。


そしていつも寄るコンビニに入った。

傘は傘立ての上に、ひっそりと乗せた。


そして私がコンビニに一歩入ると、

右足がすべって、股を縦に大きく開いた格好になった。両腕をグルングルン回して。


真正面のレジには店員さんがいた。

その瞬間を絶対、見てたはずなのに、スッと目線をそらした。


雨の日のコンビニの床はすべる。

傘立てのところにも、転倒注意と書かれていたではないか。


しまった。油断していた。

取り返しのつかないことをしてしまいました。


でも私の右足はなんとかそこで踏ん張ってくれた。

私はまるでスキップをするように、

左足をぴょんと右足と並べて、


さも、すべったんじゃありませんよ。

スキップをしたんですよ、という無言のアピールをした。


でもよく考えたら、コンビニの中でスキップする人も、ちょっとどうかしてると思った。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る