第8話 2択バカ一代

まただ。

会社の喫茶スペースで2択課長に話しかけられた。

どうして課長は私に2択を迫るのだろう。

2択ハラスメントで訴えられないだろうか?


2択バカ一代の課長←(もう悪口だし)は言った。

「みさきさんは『フレンチ派』? それとも『中華派』?」


来た。 

2択課長の、それ以外の選択肢を許さない詰問が。


私はなんでも派だ。おいしいスペイン料理の店も、韓国料理店のトッポギも、和食の店も好きだ。


が、課長の2択はグローバルな選択を許さない。

フレンチor中華だ。


どっちだ、私はどっちなんだ。

うう、どっちも嫌いではない。

私は今日の気分で決めることにした。


「中華派」です。

そうだ、こんな机上の空論的な、その場を流れていくだけの話題に、そんなに考え込んだらダメだ。


すると2択課長は、

「今度、会社で新人を含めた懇親会をしようと思って、どんな店がいいかみんなに聞いてるんだ。みさきさんは中華のお店ね」


しまった。それならフレンチのお店の方がいい。

絶対フレンチだ。一択だ。


取り返しのつかないことをしてしまいました。


私がやっぱりフレンチがいいですと言おうとした瞬間、また2択課長は総務の人に呼ばれて行ってしまった。


去って行く2択課長のくせのある歩き方を呆然と眺めながら、

私以外、みんなフレンチ派であって欲しいと心で願った。

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