第6話

 明日からゴールデンウィークである。

 高校一年だからまだ勉強も本気になってないし、中間考査はがんばろうかな。

 リビングでは、相変わらず、樹里亜は圭の隣に座っている。

 制服から着替えて、上はタンクトップ、下はミニスカだ。今日も薄着だ。夕食が済み、お茶を飲んでいる。

「どこか行きたいなぁ」

「どこ行くの?」

 他人事の様、圭がとぼけると、

「雑誌の仕事入ってる日以外で、圭ちゃんは私を遊びに連れて行く予定はある?」

 顔を覗き込んでくる。近すぎる。

「どこ行きたい?」

「そう言うの男子が提案するものでしょ」

「カラオケ、ボーリング、映画?」

「室内ばかりなの?青い空、白い雲、水平線」

「うち農家だし、田植えとかする?」

「私にできるかなぁ」

「いいバイトになるけど、日焼けはだめなんだよな?」

「撮影日、過ぎればいいよ」

「親父喜ぶかも」

 秋葉家は大農家だが、雇っている人達で農作業をやっている。ただ、田植えは人海戦術だ。ほとんどの農家は親戚一同で助け合って田植えをする。両親もこの時ばかりは水田で陣頭指揮だ。農家の大イベントでもある。


「休みの後半は手伝うことにして、1日位は

 遊びにいこうか?」

「やった〜」樹里亜は背後から抱きつく。

 やめろ、下着みたいな格好で抱きつくな。想像しちゃうだろ!昨日ここの家でお風呂も入って、シャンプーとか同じはずなのに、なんかいい匂いするのは何故だろう。


 撮影の準備とかあるとかで、樹里亜は泊まらず帰る。小学校までは夜迎えに親が来ていた。

 中学からは泊まらない日は、圭が送っていた。今日も送る事になる。

 樹里亜は制服に着替え直して、居間にいた圭の両親に挨拶をする。秋葉家の日常なので、気をつけてねとか返されるだけだ。

「帰る時、着替えなくてもいいのでは?」

 圭が言うと、

「女ごころ、わかってないなあ」呆れられる。

「しかも、あんな格好で夜道歩いたら危険でしょ」

 自覚はある様だ。

「ジーンズとか着てれば?」

 今日ほミニスカだったし、他の日も、目に毒な恰好で秋葉家を徘徊している。

「圭ちゃんを悩殺できないでしよ」

「‥‥俺のためか?」

「許嫁特典サービス」

「そうだったのか!」どうも役得だった様だ。

「昔みたいに一緒に、お風呂はいろうか?」

「その特典サービスは、入籍が必須になります」

「じゃあ、キスは?」

 樹里亜が立ち止まって、じっと圭を見る。

「したいの?」

 圭は上を向いて、深呼吸して、

「したい」

「いいけど‥‥」

 圭がおもむろに抱きつこうとすると、樹里亜は平手打ちする。

「盛り上がる様にムード考えろ!」

「どうすればいいんだよ」

「自分で考えろ!バーカ、バーカ!」

 結局、いい手は浮かばず、樹里亜も不機嫌になりいい雰囲気にはなれませんでした。


 翌日は安眠を貪り、ゴロゴロしていた。

 朝ごはん食べて、またゴロゴロ。

 母親が呆れて、「樹里亜さんが見てないとダメな男になるわね」

「これが本来の姿だ」

「早くお嫁さんにきてもらいたいものだわ」

「まだ、樹里亜と結婚するとは決めてないぞ」

「他にいい子がいるのかしら」

「あなたの息子は、結構もてるかも」

「樹里亜さん泣かしたら許さないわよ」

 とか適当に話していると、圭の携帯のLINEがきた。

 明後日はどうかなとの、お誘いの内容だった。

 いいけど、まだプラン考えつかないと返事する。

 港の近くで、ケーキバイキングがあるらしいの。そこ行こう。と樹里亜。

 かりこまり!と圭。助かった。思いつかずに困っていた。どうせそんな事だろうと、樹里亜が救いの手を差し伸べてくれた様だ。いつもすみません。

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