第5話

 電車に乗りながら、

「黙っててくれるかな」

「大丈夫だと思うわ」

「圭ちゃんが悪いのよ」

「何もしてないよ」

「ちゃんとノーって言わないのが悪いの」

 ずっとご機嫌斜めのままだ。

「気をつける」

 逆らわず、低姿勢である。樹里亜は基本優しくて寛容的だ。圭が他の女の子と何が発生すると、機嫌が悪くなる。まあ妬いているんだとわかるので、ひたすら謝る。

 許嫁関係になり早くも10年が過ぎている。

 週の大半は圭の家に来ている。もう家族みたいな感じだ。なんたって部屋もあるくらいだし。

 高校卒業まではみんなには、秘密にする事にしている。

 卒業したら?どうするかなぁ。


 幼稚園の時、結婚を前提の付き合いの、きっかけは、樹里亜の家族を救済するためだった。人身御供的なものだったが、圭は樹里亜の聡明さと、姉の様に面倒見てくれるとこが大好きに、なった。あと、いつもいい匂いがする。


 例えれば、出会いは合コンだったけど、結婚して幸せにしてます的な?

 兄妹のように、秋葉家で遊んで、勉強を二人でした。

 樹里亜の方もすぐに悲壮感や、ためらいは消え、幼馴染の様に圭と接した。

 圭がいない所では、他の男の子と遊ばなかった。幼稚園児なのに古風な考えだ。

「大人になったら圭ちゃんと結婚するんだから、他の男の子と遊ばない」

 その時から可愛いかったので、男の子はちょっかいを出して来る。幼い頃の、少年と言う生き物は、好きな女の子をかまって泣かしてしまったりする。

 樹里亜はかまってくる男の子がいると、やめて!と拒絶する。近寄らない。そして女の子同士でばかり遊んでいた。

 でも、圭の家に来ると、圭の隣にピッタリ座って二人で同じことをやったりして、過ごしていた。

 大抵は圭の好きな事。紙飛行機つくったり、ぬり絵したり、小型ゲーム機であそんだりだ。

 たまに、おままごとや、折り紙とか樹里亜に合わせた事もやった。

 圭としても女の友達は樹里亜で足りていた。樹里亜と遊ぶのは楽しかった。

 ただ、お医者さんゴッコは拒絶された。

 小学校低学年の時、

「夫以外の、男と遊ぶ事は、浮気なんだって」

 お昼のドラマでそう言っていたそうだ。

「圭ちゃんも他の女の子と遊ばないで」

「うん、分かったよ」

 よく分からず答えていた。

「約束破るとバツゲームだからね」

「いいよ」


 圭の家に帰り、普通なら着替えるのだか、そのまま圭の部屋に入ってきた。

「バツゲームよ、覚悟はいいかしら?」

「何のことだ‥」

「私以外の女子とデートしてた事に対しての罰よ」

「デートじゃあないし。部活どんなか見てただけだ」

「告白されてたでしょ。私が来なかったらどうなってたのかしら」

「反省してます」

「反省でなく、今後どうするのかが、聞きたいわ」

 学習机の椅子に脚を組んで、樹里亜は訊問する。圭は立ったままだ。

「教室以外で会う約束はしない」

「他の女の子ともね?」

「もちろん!」

「絶対だから」

「分かった」圭はベットに腰掛ける。

 樹里亜もベットに移る。

「罰ゲームは膝枕よ」

 圭の膝に寝転ぶ。頭の位置が悪かったのか頭を動かす。

 やめろグリグリするな、これは圭の心の声である。かなり高校男子には危険である。

「頭なでなでして」

 樹里亜は、甘えて言う。

「仰せのままに」優しく手で撫でる。

「気持ちいい、安心する」

 圭も穏やかな気持ちになっていた。

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