本気の練習試合!!!!!!!!!!!!
「え……君達、それで練習試合するの?」
京東大学の体育館。キュッキュッと靴が床を擦る音が響く中、在学中のセパチームの男性二人が目の前の光景に唖然としている。
そんな反応をしてしまうのは、無理もない。頭と腕を包帯グルグル巻きにした快晴、全身に痣や傷が目立つサルジ、そして無傷の八雲。この三人とこれからセパタクローの試合をするというのだから。
「ぼッ……僕たちなら、だだだ大丈夫です! しッ、試合させて下さいッ!」
「うぅん……でも、君……なんかボロボロだけど?」
「おれのは、練習で出来たやつなんで! 試合なら出来ますッ」
「それに、君なんて——頭の包帯に血ぃ付いてない?」
「これは朝食ったオムライスのケチャップッす————ッ! 余裕で動けまぁ————すッ!」
快晴のお得意爆音発声に、体育館にいる選手達が一斉にどよめいた。高校生の男子は元気だなぁと、大学生達は納得してしまったのか、これ以上追求しなかった。
「そ、そうかい? 今日は、セパタクローの色々なクラブやチームが集まってる日でね。俺達との練習試合は、ここ第三コートね。早速始めようか」
「「「はいッッッ!」」」
見た目は痛々しいけど、やる気はあるし——と、大学生達は準備の為に持ち場に戻った。残された三人は身を寄せ合って作戦会議を始める。
「よぅし、練習通りにやれば大丈夫だッ……が、俺は左手多分折れてるッ、だから受け身で使えないッ!」
「そ、そんなぁ! やややっぱり棄権しようよッ、まずは二人共、病院いかなきゃッ!」
「うるさい新入部員、おれとお前で
「ででッでもお! 手を使わなくても、セパって結構動くのにぃ……」
「大丈夫だ——ッ! 俺のサーブと
快晴の大声に、サルジと八雲は耳がキィインとした。二人の本気をこれだけ見せられては、止めろと言うのは無礼というもの。
「分かった……上がったトスは、必ず得点にするから——!」
「おぉッ!
「お前が基本ポイントゲッターだ。絶対ミスるなよ、アタッカー!」
三人が円陣を組み終わると、ウォーミングアップを終えた大学生チームが三人コートに入った。快晴達三人の緊張感が高まるが、これは練習試合。勝つ必要も無く、部活動に何の影響もない。しかし——。
「
まるで決勝戦の様な気迫に、大学生達は面食らう。なんだなんだと困惑しながら、セパボールをコート反対側に投げ入れた。サーブ権は快晴チームからだ。
「じゃあ、お手柔らかによろしく……」
シャアァッスと元気たっぷりに、高校生達は返事した。試合は試合なので、大学生達もやる気のスイッチが入って、サーブを待ち構える。
「ふー……ッ」
セパボールを今持っているのは、八雲だ。このボールをサーバーである快晴に手で高く投げる事で、試合が開始する。二人は、杉本の恨みが原因で怪我を抱えている。負担をかけない為に、八雲は誰よりも本気でやると誓った。
ファーストセット、サーブ服部、ラブオールと主審が宣言すると、遂に試合が開始された。クォーターサークルにいる八雲は、山なりのトスを快晴に投げた。
「いッッッ……せーの……セイィッ!」
左腕を活用出来ない快晴は、右腕と足を上手く使ってバランスを取りながら、高く上げた右足でボォンッとサーブした。勇ましい掛け声とは裏腹に、飛んでくるのは、まさかのフェイントサーブ。
「うぉッ……いきな……りッ!」
ネットギリギリを攻めたサーブに、大学生チームは体勢を崩され、ボールを取りこぼす。早速一点先取し、しゃああッと快晴達の声が上がる。
「ナイスプレー、
「おっしゃあ、俺がサーブで21点かせ——ッぐ!」
ボールを受け取った八雲は、嬉しさを隠せない表情で喜び合う二人を見る。三回でサーブ権が入れ替わるし、一人で21点は無理だよと、脳内ツッコミを入れながら再び快晴に山なりのトスを投げた。
「いッッッ……てぇえの……セイィッ!」
やはり折れている左手の痛みは尋常じゃないのか、サーブの掛け声にも苦痛が入る。勢いでなんとかしようとしたのか、今回は普通のサーブを相手コートに投げ入れた。
「オーライ、オーライッ!」
しかしシンプルなサーブは、あっさり大学生チームに拾われてしまった。ポン、ポンと二回トスが上がり、アタックを決める準備に入った。
ネット前にいる八雲は、相手の動きに集中する。ここでの役割は、アタッカーの攻撃ボールに触れてブロックする事と、勢いを相殺して味方のレシーブをしやすくする事。
「だぁーッ!」
大学生の攻撃は、パワーと高さを上げるローリングアタック。八雲は身長差を跳躍力でカバーして、コートに叩き付けられるボールに、足で食らい付いた。
「……ッ! ごめん、カバーッ!」
しかし完全に止めることが出来ず、ボールはコートに入っていく。しかし、勢いはキッチリ殺す事が出来たので、サルジが綺麗に拾って高く上げた。三回までなら、誰が触れても良いのがセパタクロー。二回目は、ネット付近に高いトスを上げる。
「……しん……、
今まで距離感のあったサルジから、チームメンバーとしての掛け声が上がる。トサーであるサルジの丁寧なトスは、八雲に十分な助走時間を作る。
「……ッ」
八雲はビュンッと飛び上がった。快晴とサルジが期待する『シザーズアタック』は、足をハサミのように使った攻撃。全身を使ったローリングアタックとは違い、横目で相手コートを見る事が出来る。
(……ここ……だッ!)
ネット付近には、相手アタッカーの足が伸びてくる。逆さまの視点から、アタックのコースを見極めた八雲は
「……え?」
大学生達はボールの速さについて行けず、アタッカーを含めた全員が、床にボールが付いた事に気付かず追ってしまう。弾丸のような八雲のアタックに、意識を持っていかれた主審は、慌てて宣言で止めに入った。
「つッ……ツー・ラブ!」
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