部外者の笑み!!!!!!!!!!

 八雲がセパタクロー部に入部して五日目。圧倒的なキック力は、アタッカーとして即戦力だが素人は素人なのか、体育館裏を利用して八雲はボールの壁打ちをしていた。


 その背後では、サルジと快晴が各々トスやサーブの練習をしている。マイナースポーツ関係なしに、他運動部がある以上、体育館が使えない時は使えないのだ。


クモ〜。どうだッ、足にボールは馴染んできたかッ!」


「う……ッ、うん! レシーブは全然、自信ないけど……」


「レシーブは太腿より、膝でやるイメージでやれよッ! 力を集中させ辛い所は、ボールが変な所に飛びやすいからなッ!」


「わ、分かった! レシーブはまだまだだけど、二人が上げた……トス、僕……必ず決めるよう頑張るから!」


「ケッ、……足チートやろうが」


 足でセパボールをリフティングしながら、毒を吐くサルジに八雲はビクゥッとする。悪意が無いのは承知しているが、臆病な性格上どうしても反応してしまう。


「……」


 しかし八雲が気になっているのは、サルジの事より同じく体育館裏に居座っている不良生徒達と、杉本の事だった。離れた位置にいるとはいえ、視線が届いて仕方がないのだ。その不快感を気にしているのは、八雲だけではない。


「なんでココでたむろしてんだ、アイツら」


「もッ、紅葉川くん……ッ」


「放課後に集まれる所、ここしかねえのかよ?」


 リフティングを続けながら、あえて聞こえるように言うサルジに八雲はボールを抱えながらヒヤヒヤしていた。そこに快晴がニッコニコ顔で間に入る。


「俺らだって、部活界のはみ出しモンみたいなもんだしなッ!」


「あんな奴らと一緒にされたくねえよ。どっかの公園とか校内で練習出来ねぇのか?」


「んあー……ッ、壁当てするなとかボール使うなとか、最近厳しいんだよなあッ!」


「はぁあ? セパボールで誰が怪我すんだよ、マジめんどくせえな」


 快晴とサルジが話す中、八雲は背後の不良達を横目で見ていた。杉本達は文句を言ったり絡んだりする事はせず、離れた距離から三人をニヤニヤ眺めているだけだ。


「とにかくッ! 練習試合とはいえ、明後日は京東大学セパサークルと、初のレグ戦だッ! その日までコート練出来ねーけど、俺らならなんとかな——るッ!」


「なんとかなるのか……?」


「あッ……あのさ、もし——練習場所がないなら、ぼぼ、僕の家の道場とか……どッ、どうかな?」


「いいのか————ッ⁉︎」


 快晴の大声に、その場にいた全員が耳を塞いだ。叫び声だと思って、体育館の中から生徒達が顔を覗かせる。


「いッ、いいよ……? じいちゃんも、きっと喜ぶ……し。石段、のぼるの……たたッ、大変かもしれないけど……」


「問題ねぇ——ッ! よっしゃサルッ、支度しろッ!」


「はぁ……ハルが行きたいなら、仕方ないか」


 不満顔を浮かべながらも、納得するサルジは地面に置いてある学生カバンにセパボールを押し込めた。八雲は再びチラッと不良生徒達を見るが、杉本は何を考えているか分からない表情で、ジッとセパタクロー部を見ている。とにかくこの場から離れたくて、練習場所を変えるよう提案したのだ。


「じゃッ、じゃあ……行こッ」


 八雲は逃げるように、二人を連れて体育館裏から離れていった。それを無言で眺め続ける不良生徒は、やっと口を開いた。


「アイツら、場所変えるみたいだぜ。追いかけるか杉本?」


「野放しにしておけ、それより……」


 杉本は取り巻き達に、何かを提案しようとする。体育館裏にいる部外者達の怪しい笑みは、誰にも見られる事なく、それは復讐を成し遂げる企みへと徐々に近付いてゆく。

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