第51話 1番線の激戦 リザルト
……勝った。
ゴブリンキングは槍だけを残して消え去り、自分も周囲の張りつめた空気も弛緩する。だけどまだだ。索敵でこの近辺を探る。
大丈夫みたいだな。近くに敵の反応はない。今のゴブリンの大軍団を倒した事で、ダンジョン内の魔物のポップが落ち着いたのか。あるいはさっきのゴブリンキングがダンジョンのボスだったのか。
ゴブリン達のドロップアイテムを拾い集めながらそんな事を考えたが、僕達はまだ、この『一番線ホーム』のボスを倒したに過ぎないのかも知れない。
「おっ、これは中々……」
最後に残したゴブリンキングの槍を解析で見たところへ、ドロップアイテムの回収を手伝ってくれていたリオンさんが寄ってきた。
「ん? なあに? よさげなヤツだった?」
彼女は解析スキルを取っていないので、詳細な性能は分からないからね。だから僕がこの槍の性能を説明してあげた。
「名前はロックシューターですね」
改めて見ると、とても美しい槍だった。柄も含めて3mほど、刃の長さは約40㎝くらいか。刀身の中央が膨らんでおり、突く事も斬る事も出来るどこか和風テイストな槍だ。刀身の中央には精緻な魔法陣が浮き彫りにされている。
【魔槍ロックシューター(SR)B:装備者の身体能力を上げる。また、この槍単体で土系統の攻撃魔法を放つ事が出来る(スキルレベル5相当)】
これが鑑定で見たロックシューターの性能だ。あのゴブリンキングの強烈な石礫は、この槍が生み出したものらしい。
「す、すごいねそれ!」
あははは。僕の説明を聞いたリオンさんの目が、ロックシューターから離れない。気のせいか、目のハイライトが星形になってる気がするぞ?
「ね、ね! コレ!」
はいはい、欲しいんですよね? 多分、ゲームでレアドロップをゲットした時はこんな感じなんだろうな。いつかリオンさんと一緒にプレイしてみたいもんだ。もちろん、命のかかっていない、安全なゲームでね。
「どうぞどうぞ。リオンさん、槍術取ってるし、魔法メインだし、ぴったりじゃないですか。そもそも槍のドロップはみんなリオンさんに使ってもらうつもりでしたよ?」
「やた! トウジくん大好き!」
リオンさんがギュッと抱き着いてきた。ははは。随分嬉しかったみたいだな。でもちょっと距離感バグってるぞ?
……ん?
ちょっと待って。感触がヤケに生々しい。妙に柔らかいし、何か当たってる気がする!
「ちょ、リオンさん! ちょっと離れて!」
「ん? ええ!」
僕に言われて、彼女も違和感に気付いたらしい。僕らは互いに背を向けて、バトルスーツの上に着ていたウェアのジッパーを少し下げ、中を覗いて見る。
「……消えてる」
「うん、消えてるね……で、どうだった?」
「どう、とは?」
「感触」
「や、柔らかかったです……」
「そ、そう(〃▽〃)」
ちょっと、照れるくらいなら聞かないで欲しいんですけど。
「ふふ、凄いね、二人共」
「うっ!」
「ひゃあ!」
そこへジェリーさんがやって来て、僕とリオンさんを一緒に抱き締めた。また密着しちゃうじゃないですかありがとう!
◎モンスター撃破数
小早川冬至:ゴブリン×621、ゴブリンソードマン×136、ゴブリンリーダー×28、ゴブリンナイト×9、ゴブリンキング×1、オーク×56、オークウィザード×5、オークナイト×5
立花莉音:ゴブリン×588、ゴブリンソードマン×129、ゴブリンリーダー×25、ゴブリンナイト×12、オーク×78、オークウィザード×5、オークナイト×9
◎取得経験値
小早川冬至:8883
立花莉音:7308
◎取得SP
小早川冬至:8995
立花莉音:7497
◎ステータス
小早川冬至
称号:ファステストキラー
:断罪者
:異世界種族の友
生体レベル:11→12
HP:577→865
MP:577→865
SP:704
経験値:2695
所持スキル:万夫不当5→6(武器召喚、治癒魔法、時空間収納、剣術、身体強化、取得経験値増加、取得SP増加、解析、解析阻害、セーブエナジー)索敵レベル4、隠形レベル4、合成レベル5、暗視、防具召喚レベル5→6
装備品:悪鬼斬滅の太刀C 魔剣ディフェンダー(SSR)B←(UP!)
パーティメンバー:立花莉音、アンジェリーナ
立花莉音
称号:ジェノサイダー
:異世界種族の友
生体レベル:10→12
HP:384→865
MP:384→865
SP:1459
経験値:306
所持スキル:火魔法レベル5、水魔法レベル3、槍術レベル4→5、身体強化レベル5、取得経験値上昇レベル4→5、取得SP上昇レベル→5、隠形レベル3、洗浄、時空間収納レベル3、セーブエナジーレベル5、暗視
装備品:魔槍ロックシューター(SR)B←(NEW!) ナイトバックラーD マジックワンド(R)D
パーティリーダー:小早川冬至
パーティメンバー:アンジェリーナ
***
イヤになるほど敵を倒しただけあって、時間はもう夕暮れ時になっていた。
ある意味予想通りなんだけど、バトルスーツはその耐久力を超えるダメージを負うと消失してしまうらしい。召喚系スキルの共通点は、使い切ったり損耗したりすると消失してしまうという事が分かった。ワークマ〇のウェアを着ていなかったら僕もリオンさんも、すっぽんぽんになるところだったよ。
僕達は再び野営となる場所にテントを準備し、その中でバトルスーツを装着し、その上にウェアやパンツを重ね着する。どういう訳か、バトルスーツを着用すると下着類が強制的に排出されてしまうので、脱ぎたてホヤホヤの下着を見られたくない時は瞬時に時空間収納にしまい込むテクニックが必要だ。
ただ、バトルスーツ自体は異常に着心地がいい。そう、異常にだ。下着がなくてもめっちゃ快適だったりする。
そしてビルド。あれだけの数を倒したのに、僕は生体レベルが1上がっただけ。その代わり、万夫不当はレベル6、防具召喚もレベル6に上げる事が出来た。あとはこの先の事も考えて合成スキルを上げたりその他の便利そうなスキルを取りたいところだけど、それはまた後で考えよう。
リオンさんは生体レベルが2上がった。その代わり繰り越した経験値は殆どないらしい。それとスキルレベルは取得経験値上昇と取得SP上昇、それに槍術をそれぞれレベル5にしたそうだ。本当は火魔法を上げていきたかったそうだけど、SPが足りなかったようで……
そして晩御飯。本当は、ジェリーさんには激辛メニューを食べさせたいところだったけど、ゴブリンキングを倒した時は本当に祝福してくれたし、リオンさんへの魔法の手ほどきをしてくれた事で随分と助けられた。なのでペペロンチーノと結構辛いチョリソーを添えるだけで勘弁して差し上げた。
「わあ! おいしい! トウジ、すき!」
さいですか……
この食いしん坊エルフの辛さ耐性はかなり高いな。
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