第49話 決戦2
追撃に移るゴブリンキングに魔剣ディフェンダーを飛ばし、その出足を止める。僕はその隙にリオンさんの前に駆け寄り、ゴブリンキングに立ち塞がった。
「いたたたた……」
「大丈夫ですか!?」
お腹を押さえて蹲るリオンさんに治癒魔法を掛ける。
「ありがと。ちょっと効いたかな……えへへ」
顔は苦笑といった感じだけど、かなり効いているように見える。ただの蹴りに見えたけど、バトルスーツを着ていて尚、ダメージを喰らうのか。これは心して掛からないとだ。
「リオンさん。僕がヤツとやり合うので援護は任せます」
「うん……! 分かった。やってみるよ!」
彼女が一瞬逡巡したのはゲーマーだった自分の名残かな。火力にものを言わせて暴れ回るアタッカーだったらしいからね。サポートに回る事自体、あんまり得意じゃないか慣れていないんだろう。
ヤツの攻撃は魔剣ディフェンダーを持っている僕が引き付けなきゃいけないし、ヤツのヘイトも全て僕が奪うつもりで攻撃をしかけなきゃ。じゃないとヤツは僕より接近戦に弱いリオンさんを狙って来る。
「それじゃあいきます!」
「うん!」
魔剣ディフェンダーを僕の周りで回転させながら、ゴブリンキングに突っ込んで行く。間合いの長い槍で迎撃して来るが、ディフェンダーの一本がそれを弾く。
穂先をカチ上げられたゴブリンキングに太刀を横薙ぎに振るうが、ヤツはカチ上げられた槍の勢いをそのままに柄を縦に回転させ、僕の一撃を弾いた。そのまま石突で突いて来るが、もう一本のディフェンダーがそれを弾き返すが、ヤツはくるりと僕に背を向けると軽く跳躍して後ろ回し蹴りを放って来た。
ディフェンダーは二本とも弾かれているので今の僕を守るものはない。避けるにはタイミングが遅すぎた僕の反応。
ゴブリンキングの踵が僕の頬ゲタにヒットし、僕はその勢いを殺しきれずに吹き飛ばされる。
「ごはっ!」
駅のホームだった筈の場所に生い茂っている大木に叩き付けられた僕は、背中にも強烈な打撃を受けて一瞬呼吸が出来なくなる。そして蹴り飛ばされた顔が痛い。顎が砕けたかも知れないな……
「く、治癒魔法を……」
自分に向けて治癒魔法を発動しようとした。しかしそこにゴブリンキングの追撃が来る。
「ギャギャギャッハー!」
「なんだよその顔は……」
槍を振り上げ愉悦に歪んだ顔で飛び込んで来るゴブリンキングにかなり腹が立つ。
魔剣ディフェンダーを二本とも迎撃に飛ばす。ゴブリンキングはそれを槍で華麗に防いだ。見た目はマッチョなゴブリンで不細工なジオニッ〇なモビルスー〇のコスプレみたいな恰好のクセに、見事な槍捌きに思わず見惚れてしまう所だった。
だけど、この至近距離ならコイツでも多少は効果があるだろう。
時空間収納からワルサーを取り出して左手に構える。連射系の銃火器は使い果たしてしまったけど、あくまでも護身用として召喚しておいたワルサーだけはまだいくらかストックがある。
――パン! パンパン! パン!
どうだ? 流石に銃弾は見切れないだろ?
四発放った銃弾は、右太ももに一発、左のショルダーアーマーに一発、上半身を覆うスケイルメイルに二発。
なんとスケイルメイルは銃弾を弾いて見せた。ショルダーアーマーもスパイクは弾き飛ばしたけど肩自体は無傷。太ももを直撃したのは流石に流血していたが、なんと弾丸が半分程突き刺さった状態で止まっていた。
「おいおい、嘘だろ?」
僕は続けて発砲する。
自身が傷を負った事で一瞬驚愕した表情を見せたゴブリンキングだが、なんとも素早い動きで巧みに狙いを外してくる。くっ、バケモノか。
それでもヤツに警戒させる事は出来たようで、治癒魔法を発動させる事が出来た。こんな事にMPを消費したくないんだけどなあ。
立ち上がり、太刀を構える。ディフェンダーはフリーな状態で浮かせたまま。どうやらこの二本は防御に専念させた方がいいみたいだ。僕の技量じゃヤツの攻撃を捌ききれない。
「トウジくん! 大丈夫!?」
リオンさんがゴブリンキングに牽制の火弾を放つが、ヤツをそれを鬱陶しそうに素手で振り払った。く、重ね重ねもバケモノめ。だけど火弾ですらダメージが通らないのか。
……ん?
火弾はダメージが通らないけど、ワルサーの弾丸は多少なりともダメージは入った。リオンさんの炎弾ならダメージは入るかも知れないけど速射性はそれほど高くないし、エルフの魔法薬があるとは言えMPに余裕はないはず。
考えられる事は、ゴブリンキングは魔法耐性が強い。あるいは物理攻撃に弱い。それとも火属性に耐性がある。いずれにしても、火魔法主体のリオンさんには相性が良くなさそうだし、かと言って接近戦は分が悪い。
それなら出し惜しみしている場合じゃないな。
僕はなけなしのMPを使い切り、武器召喚レベル5、PGMへカートⅡを召喚する。M2機関銃じゃないのは固定されていないアレをぶっ放すのは銃身が暴れすぎて無理だと思ったからだ。それに比べてへカートⅡなら単発で撃ち出すし、威力も十分と判断する。というか、12.7mmの弾丸を使うこの銃は、M2機関銃と並んで今の僕の最大火力でもある。これが効かなかったらちょっとお手上げだ。
僕は悪鬼斬滅の太刀を時空間収納に仕舞い、防御は魔剣ディフェンダーにお任せ。そしてへカートⅡを構えた。至近距離からコイツをブチ込んでやる。
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