第39話 死にかけてこそ修行?

 ハルバードに左腕に固定したバックラーという装備のリオンさん。どちらもDランクの装備で、素材の数さえ揃えればもう一段階ランクアップさせる事は可能。魔法を使う時はマジックワンド(R)というDランクの杖を使うが、こっちは上位個体であるウィザード系のモンスターしか使っているのを見た事がない。よって合成によってランクアップさせるにも素材が入手しづらい。


 そして僕はと言えば、悪鬼斬滅の太刀と魔剣ディフェンダー。どちらもCランクまで上げているが、これも現状では入手できる最高ランクの武器だ。あとは武器召喚で様々な銃火器を召喚して戦う。


 気付いただろうか?

 そう、僕達にはリオンさんのバックラーを除いて防具というものがない。残念な事に、僕の武器召喚というスキルはあくまでも武器を呼び出すスキルであって、防具を呼び出すものではないのだ。つまり、僕達の身を守るのは某ワークマ〇で入手した服だけで、防御力はほぼ皆無。


「……という訳で、基本は遠距離から一方的に攻撃するのが僕らのスタイルなんですけど」

「むう、防具ね……」


 ちなみにジェリーさんは、下半身はスパッツみたいなぴっちりしたヤツに膝下までのブーツで防御力は無さそうに見える。ああ、お尻は最高だと思います。

 でも上半身は何と言うか、動物の革とも樹皮とも見える、なんとも不思議な素材のベストっぽいものを着ている。あ、ブーツも同じような素材だね。それでも、それだけと言えばそれだけで、防具っぽいものは装備していない。


「このベストとブーツは、世界樹の樹皮とベヒモスの革を加工したものに魔法でエンチャントを掛けた逸品。サイズは自動調整、刃物や火魔法に高い耐性付き」

「「ズルい!!」」

「んー……やっぱり二人とお揃いにする」


 迷彩柄の上下? 以前ジェリーさんに渡していたワーク〇ンで入手した上下をマジックバックから取り出し、今の恰好の上からそれを着始めた。まあ、見た目だけは僕達とお揃いだね。サバゲーに行く集団みたいだ。


「ほら、これで私も一緒」

「「そうじゃないからねっ!?」」


 見かけだけ一緒でも中身は大違い。羊の革を被った狼ってこの事か。

 とにかく、僕は魔剣ディフェンダーと銃火器の使用を禁じられた状態で、次の戦いに挑む事になった。ちなみに防具が無いという訴えは、今のジェリーさんのお着換えによって華麗にスルーされた。スパルタすぎんだろ。


 ちなみに、僕から供給される銃火器の使用を禁じられただけで、リオンさんはこれと言った縛りはない。俺の武器召喚だってれっきとした自分の力なんだけどなあ。解せぬ。


***


「この! この!」


 僕は珍しく両手に悪鬼斬滅の太刀の柄を握り、一撃の強さに重きを置いて戦っている。

 防御を任せるディフェンダーを使用禁止にされるのならば、極力防御を必要としない戦い方をする。すなわち一撃必殺。攻撃される前に殺す。


 群がり来るのは初見の相手、二足歩行で人間サイズのアリの姿をしたモンスターだ。ワーカーアントとかいうヤツで、昆虫がベースになっているだけに、二足歩行という事は四本の腕がフリーになっている。これも人型に分類されるのか?

 1体1体の強さはゴブリンとどっこいどっこいだけど、手数が多いのと群れが多い。あーっ、めんどくさい!

 腕が四本だと、とにかく装備や攻撃が多彩だ。剣を四本振り回してきたり、槍を持ちつつ盾を二つ持っていたり。そうかと思えば弓を二つ持って射かけて来るヤツもいる。


 それでもこいつらはワーカーアント、所詮は働きアリ。攻撃が直撃しても、僕のHPが減るのは一桁だ。多少の痛みは根性で堪え、近くにいるヤツから叩き斬っていく。 

 リオンさんは火魔法をメインに敵を焼き払い、抜けて来たヤツはハルバードで倒す危なげない戦いだ。やっぱり遠距離攻撃のアドバンテージは大きいよね。


「ぐあっ!?」


その時背中に焼けるような痛みが走った。背後にいるのは間合いの外、少し離れた場所にいるヤツだけ。弓のようなアウトレンジから攻撃するような武器を持っている訳でもない。そうして思考している間にも敵は来る。近付く敵を斬り伏せながら、僕は自分に治癒魔法を掛ける。


 ふとジェリーさんを見れば、新たに取得した時空間魔法の中に、何やらとんでもない威力の魔法を収納していた。なにやってんだアンタ。よし、今夜の飯は激辛カップ焼きそばを御馳走してやろう。付け合わせは激辛タンメンな。もちろんカップのやつ。


 というか、ジェリーさんの悪戯じゃないなら間違いなくこのアリの攻撃という事になる。その時、側面にいたワーカーアントが僕にツバを吐きかけてきた。汚ねえ!

 僕はそれを咄嗟に避けたが、そのツバが地面に落ちた途端、その場所がジュワァっと煙を立てながら変色していった。


 蟻酸か!

 詳しくは知らないが、アリは体内に毒を持っているとか聞いた事がある。それを吐いて来たのか?

 この蟻酸は熱いし痛いし厄介だ。武器による攻撃より厄介かも知れない。


「リオンさん! コイツ、毒を吐きます! 気を付けて下さい!」

「うん、分かった!」


 僕はまあいいとしても、服がボロボロになっちゃうから女の子には大問題だ。あと、これはラッキースケベのフラグじゃないぞ。

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