第37話 縛りプレイ強要される
結局、ゴブリンソードマンの群れは危なげなく倒す事が出来た。フォローする為に後方に控えていたジェリーさんの出番もなく。
「なんか、二人ともおかしい」
ジェリーさんがジト目でそう言う。心外な。おかしいのはリオンさんのあの魔法だよ。
「それで、どういうカラクリなんです? あの魔法」
「でゅふふ、知りたい?」
めっちゃドヤ顔だなリオンさん。
「あ、やっぱいいです」
「え? ちょ、待って待って! そこはもっと食い下がろ? ね?」
あははは。仕方ないなあ。
「どういうトリックなんですか?」
「むふん。それはねえ――」
僕とジェリーさんは、ドヤ顔のリオンさんの説明を聞いた。それで感心してしまった。
「なんてトリッキーな……」
「というか、時空間収納ってそんなものまで保管出来たんですね……」
つまり、リオンさんは発動させた火魔法レベル1を時空間収納の中に複数保管していて、バックラーから放たれるように見せかけて収納から取り出しただけだと言う。それをシールドバッシュの要領で弾き飛ばしたと。
まさか、魔法を収納出来るとはなあ……
でも武器召喚で呼び出したものを収納出来ているんだから、それもアリなのか?
「リオン、天才。普通はそんな事、考え付かない」
ジェリーさんが目をキラキラさせながらそう言う。実際のところはハッタリくらいの効果しかない、マジックやイカサマの類だ。だけどその事によってリオンさんが魔法を発動する盾を持っていると認識させる事により、敵の接近を阻んだ。大した策士だと思うよ。
ただ、相手によっては普通に魔法をばら撒いた方がいいかも知れない。この間のオークの大群とかを相手にする場合は駆け引きなんかしている余裕はないからね。
「あとトウジ」
「あ、はい?」
「浮かんでる変な剣は当分使用禁止」
「な、なぜっ!」
ホントになぜだ。僕はある意味この魔剣ディフェンダーを育てて、どこまで進化していくのかを見届けたいまであるのに!
しかも自動防御機能&武器破壊なんて素晴らしい能力を封印しろだなんて!
「納得いかない?」
「当然ですよ」
「じゃあ教えてあげる」
そう言うと、ジェリーさんが僕に向かって弓を構えた。そして矢を放つ。でもどうせその矢はディフェンダーが防いで――くれない!?
やばい!
このままでは矢に貫かれる! でも身体は全く防御しようとしていない。僕は目を閉じて身体を固くするのがやっとだった。
「……あれ?」
だけどジェリーさんが放った矢は、僕の足下から伸びた蔓に絡めとられており、僕を貫く事はなかった。その代わり、ジェリーさんの持つミスリルナイフの冷たい刃が首筋に当てられていた。魔剣ディフェンダーはこれにも反応していない。
一体なぜだ? 僕の頬を冷たい汗が流れる。
「なぜだって顔してるよ?」
「……」
「その、自分の意思とは無関係に防御してくれる魔剣の性能は凄い。でも、その魔剣がどうやって敵の攻撃に反応しているか考えた事ある?」
首筋に当てられたミスリルナイフを腰の鞘に戻しながら、ちょっとだけ口端を上げてジェリーさんが言う。そう言えば、考えた事なかったな。そういうものなんだろうっていう認識しかなかった。
「そういう攻撃を防いだりする魔法の道具は、私の世界にもあった。そしてそれに共通するのは、敵の殺意を察知して効果が発動すると言う事」
ジェリーさんの説明によれば、害意を持つ者だけに反応するトラップや敵意を持つ者だけに効果が出る毒などなど、様々なものがあるらしい。僕のディフェンダーも、根っ子に使われている技術は似たようなものらしい。
「そういうものにも弱点はある」
「それって……」
「ん。殺意のない攻撃」
「「……」」
ジェリーさんの言葉に、僕だけじゃなくリオンさんも沈黙してしまった。
殺意も抱かずに攻撃するなんて事が可能なんだろうか?
いや、現にジェリーさんの攻撃には、魔剣ディフェンダーは一切反応を示さなかった。
「いい? 世の中には、殺意を察知して攻撃を躱すような存在も、また完全に殺意を消して攻撃しちゃう存在もいるの」
「……」
「だからこそ、咄嗟の判断での防御や回避を疎かにするような戦いを普段から続けていてはダメ」
「うっ」
ジェリーさんはそう言いながらニコリと笑みを浮かべ、指先で僕の鼻先を軽く突く。
「だからボスクラスとの戦闘以外では、その魔法の剣は使っちゃだめ。いい?」
「……はい」
机上の空論ではなく、実践されてしまったのでは反論のしようもない。モットーは『いのちだいじに』だけど、もっとヒリついた戦闘の中に身を置いて、感覚を研ぎ澄ました方がいいのかもしれない。
「リオンの魔法の使い方やアイディアは凄く斬新で参考になった。魔法戦士的な立ち位置も敵にとっては厄介。あと、私にはマジックバッグがあるから不要と思っていたけど、リオンの戦い方を見て思い直した。私も時空間収納のスキルを取る」
確かに時空間収納から発動済みの魔法を取り出すなんて発想、普通は無いよね。たくさんストックしておけば絨毯爆撃みたいな事も出来そう。
とりあえず、そんな運用に有用性を見出したジェリーさんも時空間収納のスキルを取得した。
あ、そうそう。ジェリーさんをパーティに入れたら、僕達三人に『異世界種族の友』っていう称号が付いたんだ。パーティ内に異世界の種族がいる場合、能力にプラス補正が掛かるんだって。相変わらず強さに付いての数値がないからイマイチ分かり辛いけど、プラス補正だっていうならオーケーだ。
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