第30話 エルフ
今回のレベルアップで、ついに生体レベルが10の大台に乗った。だからと言って劇的に強くなるみたいな事はない。ただ、解放された機能がある。それがパーティシステムだ。
パーティメンバーを登録すると、念話が出来たり遠隔で治癒魔法が掛けられたり、時空間魔法を共有化出来たりと、地味に便利ではある。だけど時空間魔法を共有出来るだけに、誰彼構わずパーティメンバーには出来ないよね。
当たり前だけど、その事を説明した上でリオンさんをパーティに入れた。僕がお誘いして、相手が受諾する形になる。ちなみにパーティに誘ったら、めっちゃ喜んでたぞリオンさん。
そして僕は万夫不当のスキルを4から5に。それから索敵と隠形を3から4に上げてあとはポイントを温存。
今回は厳しい戦いだったけど、武器をグレードアップ出来たのはとても嬉しい。特に魔剣ディフェンダーの性能は凄いね。いつかリオンさんにも持たせたいなあ。
そしてリオンさん。生体レベルが9になったけど、やっぱりここに来て称号の効果の差が出て来た。取得経験値の増加と取得SP増加のスキルレベルを上げるのがかなり苦しくなって来ている。取り敢えず3から4に上げたが、その他は火魔法と身体強化をレベル5に上げるに留まった。
だけど装備は充実した。ゴブリンナイトがドロップしたハルバードとバックラーがどちらもランクD。バックラーの方は腕に固定するタイプの盾なので両手武器を振り回す事が出来る。それから特筆すべきはオークウィザードがドロップした【マジックワンド(R)D】だ。
これは名称を見ても分かる通りレアドロップで、これを装備して魔法を使った場合、ダブルキャスト、つまり二重に魔法が発動するらしい。威力二倍と捉えるか、MP消費半分と捉えるかは各自ご自由にだが、単純に火力が二倍になるのだから凄い。
ちなみに一度の魔法発動で二回分とするか、重ね掛けして二倍の威力にするかは任意だそうだ。おそらくオークウィザードは重ね掛けして威力を増していたんだろう。あの水弾は効いたからなあ。
「それにしても、あとでメガネ君とおさげちゃんにはちゃんとお礼を言わなくちゃだよね」
ビルドの設定を終えたリオンさんがそう呟く。確かに僕のヘマを彼等にカバーしてもらったし、その事に関してはしっかりお礼もしたつもりだけど、リオンさんは気を失っていたからね。
「まあ、向こうも今回は恩返しのつもりみたいでしたし、そんなに気にしなくてもいいと思いますよ?」
「そうかな? 確かにあたしに返せるものなんてないしね。身体はトウジくんに差し出すつもりだし」
「へー(棒)」
「もう! あたしじゃ不満!?」
「いやいやそんな事――!?」
「ん? どしたの?」
この大型スーパーの中にいた謎の反応。アンノウンだけど敵性じゃない。戦闘中は気にする余裕がなかったけど、そもそもあの数を相手にしたのはこのアンノウンの反応を確認したかったからだ。
それがさっきまで反応が無かったので、とっくに遠くへ逃げたのかと思っていた。それが急に反応が現れたのでビックリしてしまった。
「まだこの中にアンノウンがいます」
「え? 逃げたとかじゃなくて?」
「さっきまで反応が無かったんですけどね。急に現れました」
「見に行く?」
「ええ。隠形で」
「了解」
僕達は気配を消したまま反応のある場所へ近付いていく。衣料や玩具、家電にペット用品。そして寝具コーナーに
「くー、くー。むにゃ」
それを見て、僕らは顔を見合わせる。店内は薄暗い。非常口はこちらです、の緑のピクト君が辛うじて光を灯しているくらいだ。
「暗視スキル、取ります?」
「そうだね。あたしも取っとく」
今まで暗視スキルを取っていなかったのは、僕達の戦闘スタイルにある。僕の銃火器のマズルフラッシュやリオンさんの火魔法など発光を伴うものは、夜間に暗視スキルをオンにした状態でそれを見ると、ハッキリ言って目が潰れるレベルで眩しく感じるらしい。なので僕達は今までスルーしてたんだけど……
暗視スキルを取得して、眠っているソレを見る。
「……」
「……」
僕達は暫く声が出なかった。
展示品のベッドと毛布、クッション。一式揃えてあるそれに横たわり、しっかり毛布にくるまって寝息を立てている
取り敢えず解析を掛けてみる。
【アンジェリーナ:エルフ族】
辛うじて見えたのはそれだけだ。あとは文字化けしていたのか未知の言語なのか分からないが、とにかく読み取れなかった。もしかしたら、僕より高レベルの解析阻害スキルを持っているのかも知れない。
それにしてもエルフかあ……
「確かに耳は尖っているし、色白で金髪、寝顔も凄い美人よね」
リオンさん言う通りで、僕達がエルフと言えばこうだろうなっていうイメージがそのまま体現されている。造形が整いすぎていて逆に作り物じゃないかってくらい美しい。残念ながら胸が薄いところまで忠実だね。
「ふふん」
なぜそこで胸を張るリオンさん。
それにしても、なぜ索敵に引っ掛かったり反応が消えたりしていたんだ?
「まあ、目が覚めたら聞いてみればいいんじゃない? 無理に起こす事もないでしょうし」
「そうですね。じゃあ僕らもそこのこたつで何か食べましょうか」
「うん、さんせーい!」
同じく展示されていたこたつと座椅子のセットのところに陣取り、時空間収納から色々と食べ物を出して寛ぐ僕らだった。
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