第28話 心強い援軍
メガネ君が連れて来た数人がオークの群れを食い止める。その中にはいつかの金髪君もいたし、サラリーマン風の男や女子高生もいた。
「お姉さんは私が治癒魔法を掛けます! お兄さんは一旦下がって体勢を立て直してください!」
おさげちゃんが気を失ったリオンさんに駆け寄り、治癒魔法を掛けながら僕にそう叫ぶ。
「君達は……」
「僕達もオークとやり合うのは初めてなので、何か手があるなら早めにお願いします!」
メガネ君がオークと切り結びながらそう叫べば、女子高生と思しき女性が弓を構えながら冷静に僕に言う。
「あっちの強そうなのは牽制する」
「済まない!」
僕は一旦後ろに下がり、魔剣ディフェンダーを時空間収納にしまう。正直に言えばMPには余裕があったし、まだまだM16を召喚する事も出来た。でも僕にはやりたい事があったから、MPを温存しておいたんだ。
今の戦いでドロップしたオークの剣を回収した事で数も足りた。
僕は合成魔法を発動させる。必要なのはランクⅮの剣が40本。その中にはドロップした魔剣ディフェンダーがもう一本ある。
まずは魔剣ディフェンダーに、もう一本の魔剣ディフェンダーを含めて四十本のランクDの剣を合成した。これで魔剣ディフェンダーがランクCになるはず。
そして悪鬼斬滅の太刀にもランクDの剣を合成する。
……出来た!
【魔剣ディフェンダー(SR)C】
おお! コイツは凄い!
ランクだけじゃなく、レアリティもRからSRになっている。解析で詳細を読むと、手を放していても装備者の身体の周囲を守る、とある。つまりオートで防御する機能はそのままに、手はフリーでいられるという事だな。いや凄い。これは狙っていた訳じゃなかったので嬉しい誤算だ。
そしてもう一つの特殊能力は、ランクD以下の武器を破壊し、レベル3以下の魔法を無効化するとある。僕が狙っていたのはむしろこっちの方だったりする。レアリティが上がったのは、同じ魔剣を素材にしたからかも知れないけど、検証してみないと分からないな。
更にはメインウェポンの方だ。
【悪鬼斬滅の太刀C】
こちらは特に変わった能力はない。ただ、柄が握りやすくなったり重量バランスが調整されていたりと、生体レベルや身体強化スキルレベルの上昇に合わせてマイナーチェンジされている感じだ。うん、かなり扱いやすくなっている。
「お兄さん。まだかな? そろそろ矢玉が尽きちゃうんだけど」
弓使いの女の子があまりテンションを上げないでそう話す。
「ああ、ありがとう。もう出来上がった」
「え? 何それ……」
右手に悪鬼斬滅の太刀。左手にはワルサーP38。そして背中には魔剣ディフェンダーがふよふよと浮かびながら僕の後ろを追従して来る。その様子を見た弓使いの子が唖然としていた。
僕は気合を入れるでもなく、自然体でダッシュした。あっという間に間合いを詰める僕に、魔法を使うオークが火弾と水弾を続けざまに撃ってくる。しかしそれを、背中に浮かんでいた魔剣ディフェンダーが瞬時に僕の前に回り込み、刃でくるりと円を描いた。その刃によって掻き消されるオークの魔法。
その直後、鎧のオークが左右から襲い掛かって来るが、左から来たオークはワルサーの銃口を向けるだけで動きが止まる。右から来たオークはハルバードを振るってきたが、それを受けた魔剣ディフェンダーによりハルバードが破壊されてしまう。
僕は左のオークの眉間目掛けてワルサーのトリガーを引き、右のオークには太刀を振るう。
左のオークは眉間を銃弾に貫かれて即死。右のオークは丸盾で受けるが、その丸盾ごと腕を断ち切られる。なんて斬れ味だろ、新型悪鬼斬滅の太刀。
武器と左腕を失った鎧のオークは涙目で怯えているが、それでも逃走という選択肢はないみたいだ。僕は迷わず首を刈り取る。
残るは魔法を使うオークのみ。しかし、所詮はレベル3の攻撃魔法。それは魔剣ディフェンダーの前に無効化されるだけ。もう僕の敵じゃない。
僕はワルサーの残弾全てを撃ち込み、おそらくこの群れのリーダーだったであろう魔法使いのオークを始末した。中々面白いモノがドロップしていたのでそれらを含めて落ちていたものを回収しながら、気絶しているリオンさんを庇いながら戦っているメガネ君達に加勢しに行った。
***
メガネ君とおさげちゃんは、僕達が彼等の覚醒を手助けしたあとも、積極的にゴブリンを狩ってレベリングに励んだらしい。オークやトライアイズウルフといったモンスターは、単純に体格で負けそうという理由からだと言って苦笑していたが、それが正解と言うか、生き延びる為には賢い選択だったとは思う。
そして二人は避難所にいる人達、特に同級生を中心にモンスターを狩る事を説得し、少しではあるけど覚醒者を増やしていった。それが今ここに居るメンバーである。
避難所をモンスターから守ったり、こうして外に出て物資を回収したりするのが主な目的だと言っていたが、メガネ君とおさげちゃんは少し違うように思う、それと金髪君と弓の女の子もだ。
「避難所の人も助けを待っているだけじゃなくて、自分で動かなきゃダメだと思うんです。だから覚醒してスキルを取って、何でもいいから自分を活かす道を探るべきだと思いました」
これはおさげちゃんの弁。中々崇高というか、大人たちよ見習えと言いたい。そして自分が生きるためにやっている僕とリオンさんには、少しだけ耳が痛い話だった。
「お兄さん――トウジさんとリオンさんは、どこかの避難所にいたり、組織に入ったりしているんですか?」
そんな質問をしてきたのはメガネ君だ。
「組織? いや、避難所にも行ってないし、リオンさんの他には仲間もいないよ」
「そうなんですか!? 二人だけでそんなに強く?」
「うん、まあ……一生懸命にモンスターを狩ったんだよ。ハハハ……」
スキルや称号の事を話す必要はない。
「あの、この間、質のいい剣をプレゼントしてくれたのって、トウジさん達ですよね?」
そんなキラキラした目で言われると答え辛いんだけど、うん、まあそうだよね。僕は無言で頷いた。
「やっぱり! ありがとうございました! 僕はお二人に憧れているんです。だから困った人の役に立ちたくて」
いや、僕達はそんな人助けとか考えてないからね?
純粋な視線がちょっと心を抉ってくる。
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