第25話 フラグを立てる様式美の必要性?

 メガネ君とおさげちゃんの戦いを見届けたあと、何度か上位種が指揮するモンスターの群れと出会った。ゴブリンリーダーが率いるゴブリンの群れが二回。トライアイズウルフの上位種であるトライアイズファングが率いる群れが一回。これだけで100匹を超えるモンスターを倒した。


「トミーガンは在庫大丈夫ですか?」

「うん、まだ手付かずのが二挺あるし、ワルサーも三挺あるよ」


 ゴブリンと戦う時は、なるべく接近戦で倒すようにしていた。先程もリオンさんが言っていたが、トミーガンですらオーバーキルだし、接近戦で苦戦するような相手でもない。しかもゴブリンリーダーのうち1匹は、Dランクの短槍をドロップした。リオンさんにおあつらえ向きの武器だね。

 トミーガンを使ったのはトライアイズファングが率いる群れだった。直線的に向かってくるので狙い易かったのと、上位種の強さが今一つ分からなかったので、接近戦を避けたんだよね。だから掃射して一網打尽にしたよ。


 そこでこっちに近付いて来る反応がある。30体以上の反応だ。でもこれは……


「スケルトンソルジャーの団体様がこっちに向かってますね」

「うわあ……でもいい機会だわ。あたしのレベル4火魔法で殲滅しちゃおう」


 スケルトンソルジャー自体はゴブリン以下の戦闘力しかない、ハッキリ言って雑魚モンスターだ。だけどアンデッド系だからか、頭蓋骨を破壊しないと何度でも骨が組み上がって復活してくる面倒さがいやらしい。だけどゲームや物語によくある、『アンデッドは火炎系に弱い』という設定は生きているみたいで、レベル1の火魔法でも十分な効果がある。


「流石に火魔法レベル4はオーバーキルでは?」

「あー、うん、ほら。前回の魔剣持ちのヤツに魔法を斬られて無効化されちゃったじゃん?」


 そうか。魔剣ディフェンダーを持った個体はリオンさんの火魔法を斬ったんだった。あくまでも予想の範疇での話だけど、レベル1の魔法がランクF武器と仮定すれば、Dランクの魔剣ディフェンダーはレベル2の魔法までは無効化出来る事になる。レベル3魔法でランクDと同格なら、レベル3魔法でも行けそうな気はするんだけど……


 僕がその事をリオンさんに話すと、苦笑いしながら答えてくれた。


「ああ、火魔法レベル3は、『炎の壁』なんだー。どっちかと言えば、防御する為の魔法だからねー」


 そっか、この前見せてくれた炎の壁。あれがレベル3なんだ。それじゃあ仕方ないか。


「慣れてくれば座標をしっかり定めて、狙ったヤツの足下から炎を吹き上げさせる事も出来るんだけど、まだちょっと自信がないなあ」


 まだ攻撃魔法のスキルを取っていない僕にはピンと来ない話なんだけど、自分の手から発射するイメージの火炎や火弾ならボールを投げつけると同じ感覚で出来るらしい。でも炎の壁のように離れた場所に直接出現させるような魔法は、コツがいるんだって。


「じゃあレベル4の魔法は大丈夫なんですね?」

「うん、レベル4は火弾の強化版、炎弾だよ。ただ、MP消費の関係であまりたくさんは撃てないから、フォローよろしくね?」

「なるほど、了解です」


 そういう事なら、今回はM16が活躍するな。ゴ〇ゴはスナイパーのイメージが強いせいか、召喚したM16にはスコープが普通に付いている。倍率は4倍。接近される前に、狙撃で数を減らしてしまおう。

 劇中では500mくらいは普通に狙撃しちゃうらしいけど、僕には多分無理。なので200mくらいまで引き付けて、セレクターはセミオート、っと。

 ニーリングという膝立の姿勢でスコープを覗き込み……


 ――ダーン!


 うお! 音がでけえ!

 音にびっくりしたけど見事命中だ。スケルトンソルジャーの頭蓋骨が砕けて全身の骨が崩れ落ちる。続けて発射。動きが遅いからか、面白いようにヘッドショットが決まる。これはクセになりそうだ。難聴になりそうだけど。

 20発くらい撃ったところで、僕は狙撃を中断した。マガジンは30発入りなのでまだ打てるけど、スケルトンソルジャーが接近してきているのでM16を時空間収納にしまい、悪鬼斬滅の太刀と魔剣ディフェンダーを持つ。


「それじゃあ、よろしくお願いします!」


 ここからはあたしの出番とばかりにリオンさんが張り切る。


「いっくよー!」


 両方の手のひらをぐっと握り、まるでこれから正拳でも突き出すかのように両肘を曲げて脇を締めた。


「はっ! はっ! はっ!」


 そして両腕を交互に突き出す。ただし、突き出された拳は握っておらず、開かれていた。その手のひらからバスケットボール程もある炎の塊が発射されていく。

 これはアレだ。ボールを七つ集めて願いを叶えてもらうヤツに出て来るキャラが、連続で気功波を撃つやつだ!

 ドカンドカンと着弾した場所が派手に燃え上がり、次々とスケルトンソルジャーが爆炎に包まれていく。これなら直撃しなくても、至近弾でも致命傷だろう。


「やったか?」


 ここで敢えてフラグを立てるような台詞を言うのもリオンさんの可愛いところだ。それにさっきの攻撃モーションから『やったか?』までの一連の流れはセットだし、むしろやらなきゃいけない様式美だとも言える。

 それに、どうやら余計な心配はいらなかったみたいだ。今の火魔法レベル4の攻撃でスケルトンソルジャーは全滅していた。

 それからドロップアイテムを回収していると見慣れたモノが落ちていた。


「あ、これ魔剣ディフェンダーじゃん」

「レベル4の魔法はランクDの魔剣じゃ防げないのは確定ですね」

「じゃあ、もっとたくさん集めて合成して、ランクを上げたいところだね」

「そうなんですけどねぇ」


 リオンさんの発言に僕は苦笑いだ。

 現在ドロップするアイテムはほとんどがランクFばかり。稀に上位種が持つものにはEやDのランクのものが混じっているけど、一日にせいぜい1本か2本だ。

 FランクをEランクに上げるには2本あればいいけど、EをDに上げるにはEが11本必要になる。そしてDをCにするにはDが21本必要。つまり魔剣ディフェンダーのランクを上げる為には、数百本単位のランクFの剣が必要になってくる。それにメイン武器である悪鬼斬滅の太刀もランク上げたいしなぁ。


「それじゃあ、考えるだけ無駄だよ。とにかく狩って狩って狩りまくろう!」


 そんなポジティブなリオンさんに苦笑する。ホント、どうしてこの人がコミュ障なんだろう?


 

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