第22話 弾幕薄いぞ! 何てことは無かった

 渡辺を喰らいつくしたモンスター共が、咆哮を上げながら僕達に向かって来る。

 僕とリオンさんはトミーガンを構え、間合いに入るの待った。一番先に近付いて来たのは足が速いトライアイズウルフの群れ。


「撃ちます!」

「うん!」


 ――ダダダダダッ! ダダダダダダダダッ!


 硝煙と共に銃口が火を吹き、連続音と共に連射の反動が身体を揺らす。

 発砲の反動が大きいため、発射された弾丸のバラツキが大きい。だけど比較的近い距離なら精密に狙いを定める必要もなく、アバウトにぶっ放せば敵が死ぬ。

 みるみる内にモンスターの躯が積み重なっていく。

 しかしドラムマガジンに装填されていた50発の弾丸を撃ち尽くすと、手の中にあったトミーガンが消えてしまった。


「時間を稼ぐよ!」


 同じく撃ち尽くしたリオンさんが、モンスターの群れに両手を翳した。


「炎の壁!」


 魔法の名前だろうか。リオンさんが叫ぶと通りを完全に塞ぐように、高さ5mほどの炎の壁が地面から立ち昇った。

 なるほど、じゃあこの間に。


「リオンさん、もう一回です!」

「ありがと!」


 再びストックのトミーガンを手渡し、僕も構える。やがて炎の壁が消えると、再びモンスターが突撃してきた。トライアイズウルフは先程の銃撃で全滅したようで、残るはオークとゴブリンの混成部隊だ。てか、こいつらは仲間意識でもあるのか? 一貫して人間だけを狙って来るよなぁ。

 

 それはそれとして、そもそも機関銃が一挺あれば弾丸が続く限りいくらでも敵を殺せる。コンパクトにしたサブマシンガンとは言え、ゴブリンやオークを殺すには十分すぎる威力だ。あまりに連射しすぎると銃身が赤熱化してヤバい事になるけど、マガジンの中身を撃ち尽くしたらどうせ消えちゃうからね。


 やがて二挺目の弾丸を撃ち尽くした頃には、敵はゴブリンが7匹しか残っていなかった。僕は太刀と魔剣ディフェンダーを持ち、接近戦に移行する。同時にリオンさんも右手に短槍、左手には丸盾を固定し、突撃した。

 あとは消化試合。斬り捨て、突き殺す。あまりに殺し過ぎたのかも知れない。人間を殺そうとするモンスターが相手では、命を奪うという行為に対し何の痛痒も感じなくなっていた。


 ほんの数分で100匹前後のモンスターを倒し、道路には奴らが残したドロップアイテムが大量に散らばっている。剣に槍、斧や棍棒に毛皮。ブロック肉。


 それらを回収し、次の獲物の位置を索敵で確認する。まあ、選り取り見取りだ。


「リオンさん、MPは大丈夫ですか?」

「うん、流石に今の規模を一度に相手にするには厳しいけど、10匹前後を相手にするなら連戦も余裕だよ。あ、でもスケルトンは勘弁」

「あはは、了解です。じゃあトレインは止めて、奇襲で片付けて行きましょう」

「そうだね」


 ストックしているトミーガンも残り二挺だし、僕としてもなるべく接近戦で片付けて、MPは温存しておきたいところだ。

 そして僕らは適当な群れを次々と襲い、討伐数を増やしていった。

 ただ、敵を倒している内に何度か生体レベルが上がり、結果的に温存していたMPを無駄に捨ててしまったのが反省点だな。

 理想はMPを使い切るくらいの状態で生体レベルをアップさせればいいんだろうけど、次にレベルが上がるまでどれくらいの経験値が必要なのか分からない。難しいもんだね。


 ところで、さっき新しく称号が付与された。


【断罪者:マーダーの称号を持つ者を、自ら手を下す事なく処理すると付与される。マーダー保持者を討伐しても、ペナルティが課されない効果がある】


 うーん……処理するっていう表現がなんか怖い。ペナルティっていうのはつまり、マーダーの称号を付与されるって事なんだろうけど。

 これってさ、殺人犯を殺してねっていうヤツだよね?

 別に人間を殺したいとか無いんだけどなあ。

 

 ……という事をリオンさんに話したら。


「まあねえ。このおかしなシステムには許されても、日本の法律に許された訳じゃないから難しいわよね。でも、襲われた時に正当防衛は成り立つ訳だから、反撃する時はやっちゃっていいんじゃない?」


 はあ、なるほど。別に、無理に自分から攻撃する必要はないもんね。攻められたら守る為に戦うっていう、自衛隊的発想でいればいいのか。

 そう考えるとちょっと気持ちが楽になった。むしろ、リオンさんも断罪者の称号を持ってた方がいいのかな?


「ま、貰って困る称号じゃないみたいだし、もう一狩りいきますか!」

「そうですね!」


 多彩なスキルで優位にモンスターと戦える僕達にとって、オークやゴブリンはもはや脅威とは言い難い。だからこそ、レベルが上がりにくくなる前に大量に討伐するべきだ。

 そう言えば、僕達は日暮れ近くまでモンスター狩りを行ったんだけど、上位種は全くいなかったな。もしかしたら、夜限定で出現するのかな。ああ、スケルトンソルジャーもいなかったから、もしかしたらアンデッド系も夜しか出現しないのかも知れない。

 ちなみに今日の討伐数はこんな感じだ。やはりサブマシンガンは強力で、かなり荒稼ぎ出来るね。


◎討伐数

 小早川冬至

 ゴブリン×89、オーク×69、トライアイズウルフ×51

 立花莉音

 ゴブリン×94、オーク×76、トライアイズウルフ×38


◎取得経験値

 小早川冬至 1218ポイント

 立花莉音   738ポイント


◎取得SP

 小早川冬至 1390ポイント

 立花莉音   852ポイント


◎ステータス

小早川冬至

称号:ファステストキラー

  :断罪者 

生体レベル:6→9

HP:76→256

MP:76→256

SP:27→745

経験値:2→275

所持スキル:万夫不当レベル3→4(武器召喚、治癒魔法、時空間収納、剣術、身体強化、取得経験値上昇、取得SP上昇、解析、解析阻害、セーブエナジー)索敵レベル3、隠形レベル3、合成レベル3→5

装備品:ゴブリンリーダーの長剣D 魔剣ディフェンダー(R)D


立花莉音

称号:ジェノサイダー

生体レベル:6→8

HP:76→171

MP:76→171

SP: 0→47

経験値:1→266

所持スキル:火魔法レベル3→4、水魔法レベル1→3、槍術レベル1→3、身体強化レベル3→4、取得経験値上昇レベル1→3、取得SP上昇レベル1→3、隠形レベル1→3、洗浄、時空間収納レベル1→3、セーブエナジーレベル2(NEW)

装備品:ゴブリンの短槍E スケルトンソルジャーの丸盾F


 今回は新規のスキルは取得せず、既存のスキルの底上げするに留めた。分かっていた事だけど、万夫不当のレベル上げがそろそろキツくなってきたなあ。それを見越して、かなりのSPを温存してある。あとはアイテム合成を積極的に進めて装備の強化もしなくちゃね!

 リオンさんは既存スキルの底上げと、新規にセーブエナジーのスキルを取得した。彼女のような魔法使い系は、MP消費を抑えてくれるこのスキルは必須だろう。

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