第15話 レアもの持ってるぞコイツ!
「大丈夫かい? スキルはちゃんと取れた?」
ゴブリンにトドメを刺して呆然としているメガネ君とおさげちゃんに声を掛ける。
「あ、あの、ありがとうございました!」
「ありがとうございます」
まずはお礼か。ま、いいけど。
「最初のスキルは攻撃系をおススメするよ。MPを消費しないヤツがいいかな」
「あ、はい。一応剣術を取りました」
「私も剣術を」
へえ、意外。メガネ君はともかく、おさげちゃんも剣術かあ。
「じゃあこれは餞別だ。もうあんな見た目だけの不良に負ける事はないから、頑張って生き抜いてね」
そう言いながら二人にゴブリンの小剣をプレゼントする。まあ、この先沢山ドロップするだろうから惜しくはないし、ここのゴブリンの群れは僕達の獲物だ。これ以上譲る気もない。
「あ、あの、僕は
「わ、私は
「そうか。僕はトウジだ。今魔法を撃っているのはリオンさん。もうここから離れた方がいい。あそこにいるのはゴブリンの上位種だ。君達の手には負えない」
「「わ、分かりました! ありがとうございました!」」
剣を片手に二人が離れて行く。願わくば、正しく育って欲しいね。
さて、これからは大人の時間だ。
ワルサーを時空間収納にしまい込み、新しく合成した【無銘の太刀E】を取り出す。
「リオンさん、ありがとうございます!」
「もう、遅いから雑魚ゴブリンはみんな食べちゃったわよ?」
「はい! じゃあ僕はあのゴブリンリーダーを!」
鞘から抜いた太刀を両手で握り、間合いを詰める。
取り巻きのゴブリンがほぼ全滅したというのに表情には余裕がある。というか、ニヤニヤしていて気に入らないな。
「シッ!」
短く息を吐き横薙ぎに刃を振るう。しかしゴブリンリーダーはそれを手にした長剣で受け止めた。
――いや、受け止めようとした、だね。
ゴブリンリーダーが身体ごと横に滑っていく。僕の剣圧が強かったという事だ。剣術スキルのレベルが上がったせいなのか、身体強化のレベルが上がったせいなのか。それとも生体レベルが上がって基礎的な身体の性能が上がったせいなのか。
ゴブリンリーダーの表情から余裕が消える。
「グガアアアアッ!」
雄叫びを上げながら斬り掛かって来るゴブリンリーダー。一撃一撃は重くはないけど、速度が乗った連撃を繰り出して来る。たしかに今までのゴブリンとは桁違いに強い。技量とスピードならオークを上回る。
だけど躱せないスピードでもないし、はっきりと剣筋を見切る事は出来ている。
コイツは僕の敵じゃない。
ゴブリンリーダーの表情に焦りが浮かぶ。しかし連撃を止める事なく繰り出してくる。丁度いい。躱してカウンターで仕留める事は容易いけど、ここは僕の剣術の訓練相手になってもらおうかな。
剣戟の音が響き渡る。弾き返したり、いなして体勢を崩したり。足捌きを色々と試してみたり、体捌きだけで有利な体勢を取ってみたり。
「さ、そろそろ終わりにしようか」
やりたい事は大体試せた。ゴブリンリーダーからもう得るものはないな。
「もうそろそろ納得した?」
屋根の上で足をブラブラさせながらリオンさんが声を掛けて来た。
「はい。お待たせしました」
斬り込んで来たゴブリンリーダーの剣に太刀を絡めてくるりと手首を返し、ヤツの剣を飛ばす。あとは無手になった相手を切り刻めばいい。
ゴブリンリーダーが繰り出してきた連撃を遥かに上回る速度で太刀を繰り出す。
太刀の血のりを振るい落とし、鍔鳴りを響かせながら鞘に納刀する。同時にゴブリンリーダーの身体が八つに分かたれた。
ドロップアイテムは剣だった。
【ゴブリンリーダーの長剣E】
この他にもゴブリンのドロップアイテムを回収していると、索敵に反応があった。ざっと30体以上はいる。しかもアンノウン。まともに戦える相手なのかどうなのか、少し悩むところだ。
「リオンさん、隠形で屋根の上で待機です」
「分かったわ」
ゴブリンのドロップアイテムを手早く回収し、気配を消してさっきのゴブリンの群れを奇襲した時のように屋根の上に潜む。
少しの間様子を窺っていると、カタカタ、ガチャガチャ、と硬質な音を響かせながら異形の集団が姿を見せた。
「あれは、刺突系の武器は相性が悪そうですね……」
「うわあ……それに水魔法で窒息させよう作戦も効かなそう」
姿が明らかになったモンスターを見て、リオンさんが大きくため息をついた。
解析スキルで見たところ、モンスターの名称はスケルトンソルジャー。読んで字の如く、ガイコツの戦士だ。本当にどういう理屈か分からないが、肉や臓器が一切存在せず、骨格標本がそのまま動いているように見える。
あれでは槍のような武器は効果が薄いだろうし、肺が無いのにどうやって窒息させるんだって話で。リオンさんが頭を抱えるのも仕方ない。
「ごめん、アレには魔法で支援に回るよ……火魔法なら効くかもだし、まだ撃てるから」
「分かりました。ちょっと不安ですが、僕は接近戦で。拳銃もクロスボウも、肋骨の隙間を抜けていきそうですしね」
つまりは肉体が無いのでダメージを与えられる箇所が少ないという事だ。本当ならハンマーや棍棒のような、殴り系武器の方が有効なんだろうけど。
それに、なんか、気になる敵がいるんだよね。
見た目は他のスケルトンソルジャーと変わらない。だけど両手にそれぞれ片手剣を持っている二刀流。それを解析で見てみれば、表示されるのは【スケルトンソルジャー(ユニーク個体)】とある。さらにその装備品。【スケルトンソードF】、それから【魔剣ディフェンダー(R)Ⅾ】と表示されていた。
「それじゃあ行きます。隠形掛けたまま行くんで、僕に魔法をぶつけないで下さいね?」
「もう、分かってるよ!」
僕は太刀を月光に煌めかせて斬り込んだ。
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