第13話 こういう事もある……?

 僕とリオンさんは一旦情報収集の手を休め、深夜まで身体を休める事にした。

 深夜から再び行動を開始する。もしかしたら、昼と夜とではモンスターの行動パターンが違ったり、出現するモンスターも違うかも知れないというのが理由のひとつ。


 そして、眠っている間にMPが回復する事を見込んで、僕はいくつか検証をする事にした。

 武器召喚スキルで呼び出した射撃武器を、時空間収納にストック出来るかどうかという実験だ。太刀の場合は壊れない限りはずっと存在し続けるからいいんだけど、射撃武器は残弾が無くなると消滅してしまう。だからと言って、その都度武器を召喚していたのではMPがいくらあっても足りない。だけど一度召喚した武器が時空間収納の中で存在し続けるとしたら、射撃武器をストックしておけばMP消費無しで使えるという事になる。

 ちなみにレベル3武器の召喚にはMPが15も必要だ。戦場でそうポンポン使えるようなモンじゃない。しかも、武器の特性上、一瞬で使い切る可能性が高い。


 もうひとつは合成スキルの検証。ドロップ品は合成スキルでグレードアップさせる事が可能なのは分かった。では武器召喚で呼び出した場合は合成スキルでグレードアップできるのか、という事を確認したい。


 現在、万夫不当のスキルレベルは3だ。それに統合されている武器召喚レベルも3。だけどレベル2もレベル3も、呼び出せる武器のカテゴリの中に刀剣は無かった。

 では、レベル2とレベル3で召喚出来る武器のカテゴリはと言うと……


【武器レベル2:ハンドガン】

【武器レベル3:サブマシンガン】


 これだけだった。

 まずはレベル1の刀カテゴリから数打ちの太刀を召喚して、今日使っていた数打ちの太刀と共に時空間収納に放り込む。そして合成スキル発動。消費MPは合わせて8ポイント。すると、時空間収納の内部で合成が終了した。取り出してみると、【無銘の太刀E】となっていた。よし、成功だな。今までの数打ちの太刀より、切れ味や耐久度が上がっていると信じたい。


 次いで、武器レベル2のハンドガンを召喚しようとする。こっちの消費MPは10ポイント。すると、頭の中でアナウンスが鳴る。


【召喚する武器をイメージしてください】


 は? 予め決まったものが出て来る訳じゃないのか?

 それならアレにしよう。某怪盗の孫が愛用する奴だ。すると手の中にずっしりとした拳銃が出て来た。

 お馴染みワルサーP38。


 続けて武器レベル3だ。サブマシンガンと言っても、あんまり銃器には詳しくない。FPSゲームで少し齧った程度だ。機関銃は調子に乗って連射しているとあっという間に弾切れを起こしちゃうからなぁ。出来るだけ装弾数が多いのがいいな。よし、アレにしよう。

 現れたのはトンプソン・サブマシンガン。通称、シカゴタイプライターとかトミーガンと呼ばれている。50発装填のドラム式マガジンがちょっとカッコいい。こっちは消費MPが15ポイント。比較的近距離で乱射するのがいいのかな。反動が結構大きいらしいので、狙撃には向いていないだろう。


 僕は他にもワルサーとトミーガンを召喚、時空間収納の中に入れて眠りについた。これらの武器も合成スキルのレベルを上げたら、いずれ試してみたいものだ。あ、リオンさん用のゴブリンの短槍Fも、合成してEランクに上げておこう。


***


 スマホのアラームが鳴る。部屋の中は弱いオレンジ色の間接照明が照らすだけ。深夜2時。丑三つ時に活動開始だ。


「ふぁ~――」

「あっ……」

「ああっ!? す、すみません」


 あくびをしながらリビングに行くと、そこには着替え中のリオンさんがいた。自分でも言ってたけど、随分と布面積の小さい下着が見えてしまった。慌てて扉を閉めて洗面所に行き顔を洗って覚醒させる。そっか、熟睡したらすっかり失念していた。ウチにはリオンさんがいるんだった。


「もう、いいよ」

「はい」


 リビングに入ると、まるでサバゲーにでも行くような迷彩柄の上下に身を包んだリオンさんが無言で座っていた。


「……」

「あの、すみませんでした」

「見た?」

「へ?」

「ねえ、見た?」

「は、はい……割とバッチリと」


 リオンさんが大きく息を吐く。


「正直でよろしい。まあ、一緒に暮らしてたらこういう事もあるよ。お互い慣れなきゃね」

「慣れるんですかこういうの」

「あたし的にはかなり恥ずかしいところを見られちゃったし、命の恩人だし、少しくらいならまあいいかなって……」


 おいそこで照れるな。どう反応したらいいのか分からん。


「ねえトウジくん」

「はい?」

「男の人って、そういう戦闘とかの後って、何て言うか、滾るって聞いた事あるんだけど、ないの?」


 ああ、聞いた事はある。戦地で起こる強姦事件や、兵隊相手の売春が商売として成り立っているとか……


「どうなんでしょう? 今の所は通常運転っていう感じです。抑圧された軍隊という組織の中にいる訳じゃないし、自分の部屋にいる間は比較的日常に近いですからね」

「そう……」

「あ、でもリオンさんがあんまり刺激的な恰好をしてたら分からないですよ? 気を付けて下さいね? ハハハ」

「そう? そっか! 分かった!」


 なぜそこでリオンさんがいい笑顔で笑うのか分からないけど、取り敢えず怒っていないみたいで良かった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る