◆祝福のダガーナイフ

 食堂の券売機は『電子マネー』にも対応している。

 非接触型ICカードが使えた。

 交通マネーとかのヤツだ。


 驚くべきことに『プロビデンス』で操作し、手をかざすだけで反応してくれるようだ。


 知花がそれで購入していた。

 便利すぎだろう。



「凄いな、そんなことも出来るんだ」

「そうなんですよ、チャージしておけばラクチンです。コンビニなら、電子マネーのPoyPoyも使えたりしますよ」



 このコンタクトレンズ、スマホと変わらない使い方ができるわけだな。本当に驚くべき技術だ。


 俺も知花も『味噌ラーメン』を注文。

 食堂のおばちゃんから受け取り、隅の席へ。



 ……ん、なんだか見られているような。



「知花、なんだかお前を見ている連中がいるな」

「ええ、分かっています。二年の人たちでしょうね」

「なるほど。でもなんで?」


「わたしと兄様が一緒の席だからでしょうね」

「つまり?」


「あ~…。自分で言うのもアレなんですけど、男子が一緒にパーティ組まないかと誘ってくるんです。ギルドの勧誘も多くて」



 そういうことか。

 知花の実力を知る物なら、戦力にしたいわな。


 けど、知花は俺の義妹だ。


 知花自身も誰かと組む気はないようだし、ペアでいきたい。



「なるほどな。全部断ってるんだ?」

「はい。他の男に興味もないので」


「へえ、じゃあ興味のある男って」


「……っ」



 頬を赤くして視線を外す知花。

 手が震えているな。


「ま、まさか俺か」

「…………ぅ。はい」



 ハッキリと『はい』と言った。


 それ、嬉しすぎる。


 そうだ、知花がいれば……他はいらない。



 * * *



 食事を終え、屋上でSFOを起動した。

 校内で起動してもログイン可能だった。



「ここで遊べるんだな」

「SFOの範囲は北海道全域らしいです。なので、北海道を出てしまうと未対応みたいです。正式サービス開始時には対応されるらしいですけどね」


「へえ。なんで北海道だけなんだろうなあ」


「あとで東雲さんに聞いてみて下さい」

「そうする」


「では、兄様。この前の討伐クエストの報酬で手に入れた『祝福のダガーナイフ』を装備してください」



 知花から、神秘的な色をしたナイフを貰った。



【祝福のダガーナイフ】

【レアリティ:A級】

【攻撃力:350】

【効果】

 装備者の幸運値を大幅に上昇させる。

 この武器の攻撃は自動的に『ダブルアタック』判定となり、二回攻撃となる。

 精錬値が『7』を超える場合『トリプルアタック』判定、三回攻撃となる。



「なかなか良いアイテムだな」

「βテストにしては、かなりレアリティの高いアイテムです。ラッキーですね、兄様」

「ああ、これは強いぞ」


 さっそく装備してみると――。



「重ッッ!!」



 ズシンと重みが手に圧し掛かって転倒しそうになった。



「あー…。まだ適正レベルではなかったようですね」

「重量システムもあるのかよ。てか、こんな重みを感じるだなんて」


「プロビデンスが重力の影響を与えているとか何とからしいです」

「いちいち科学レベルが高いな。そのうち、タイムマシーンでも作る気かな」


「まさか。ともかく、兄様は通常の剣の方が良さげですね」

「もうちょいレベリングを頑張るか」


 屋上には、植物モンスター『マンドラゴラ』が出現。

 地面に根を生やしながら移動している。

 移動速度は遅いけど、それなりの攻撃をしてくるようだ。気を付けていくかっ!

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