旅館の一夜(3)

90 :薬 さん

大浴場から部屋に戻って、俺は天気予報などのチェックをしていました。

毒ちゃんは旅館によくある、和室の奥まった場所にあるスペース(としか表現できません)から外を見ていました。

外、というかすぐそこに見えている旧館を見ているようでした。

もしかしたら毒ちゃんにはなにか見えているのかも、と思い声をかけようとしたところで内線電話がかかってきました。

「お連れ様には代われるでしょうか?」

いきなりそんなことを言われてはさすがに怪しく思うのが普通でしょう。

内線電話ですから室内からかけているはずでしょうに、その電話の後ろでは激しい雷雨の音が聞こえます。

どう考えても外から電話をかけてきているようにしか聞こえないものでした。

しかし部屋にあるのは内線電話です。外からイタズラ電話などはかけてこれないはずです。

「お連れ様に代われるでしょうか?」

こちらが黙り込んでいても向こうはお構いなしのようでした。

「どちら様ですか?」

俺がそう問いかけると、長い沈黙の後に電話が切れました。

ノイズ混じりのブツッと電話を切る音がやけに大きく聞こえました。


電話のことを旅館側に問いただしたかったこともあり、また明らかに不審な出来事が立て続けに起きましたから、俺たちはフロントへ向かうことにしました。

こういうときにひとりになるとロクなことにならないと思うので、もちろん毒ちゃんと一緒に。

一階のフロントへ向かうと結構人がおり、その人たちは女将さん(和装の女性)を取り巻いていました。

漏れ聞こえた話を聞くに、その人たちは俺たちと同じように不可解な体験をした客たちのようでした。

「どういうことだ」「この旅館はいわくつきだったのか」というようなことを女将さんに詰め寄っていました。

女将さんはその時点で少々顔色悪くしていましたが、そこへ若い男性従業員がやってきて、土砂崩れが起こったこと、旅館と麓とを結ぶ唯一の道が塞がれてしまったことを告げました。

「やはり……」と女将さんは顔を青白くさせてつぶやきました。

そして女将さんはその場にいた客に話始めました。


曰く、この山には「悪しきもの」を封じた祠がどこかにある。

曰く、その「悪しきもの」はこの地にやってきた先祖が連れてきたものである。

曰く、土砂崩れによってその祠が破壊された可能性が高い。

曰く、その「悪しきもの」がこの旅館へとやって来ている可能性が高い。

曰く、その「悪しきもの」は祠から出られはしても、山からは出られない。


流石に騒然とするよりも皆さん沈黙しました。

大浴場でも見た大学生グループだけは「そんな馬鹿な」と言っていましたが、それ以外の客は廃都の人間なのか理解が早かったようです。

大学生グループはどうも廃都外から物見遊山的にやってきた物好きの方々のようです。

夏ですし、肝試し気分だったのかもしれませんが、こんなことになってしまったのでちょっと揉めているようでした。

他はファミリー客が中心で、若いカップルや老夫婦の二人組などもいましたが、大学生ほど騒ぎはしませんでした。


女将さんによると祠を直さなければならないが、この豪雨に雷ではそれもできない。

夜のあいだは非常に危険なので出来れば宴会場に集まってそこで雑魚寝をして欲しい……とのことです。

それから「絶対におひとりにはならないでください」とも厳命されました。


そういうわけで俺と毒ちゃんは今旅館の宴会場にいます。


かなりの長文になってしまい申し訳ありません。

いくらか削ろうかとも思ったのですが、実況者としては詳細に書いたほうがいいかもと結構悩みました。

最後まで読んでくださった方には感謝いたします。

なんだか寝つけないので、お暇な方は朝までゆるくお付き合いいただければと思っています。

それと余裕があれば女将さんに話を聞いてみたかったのですが、大変忙しそうにしていますので流石に控えました。



91 :anonymous さん

長文乙。



92 :anonymous さん

そこそこの長さ(1000文字超)。



93 :hakohako さん

書くの大変だったんじゃない? と真っ先に思ったけど、現在の状況のほうが大変だよね……。



94 :anonymous さん

三行で頼む。



95 :hakohako さん

>>94

旅館の異変は

山の祠にいた「悪しきもの」のせい

宴会場で雑魚寝なう



96 :anonymous さん

長文すぎるのは困るが、実況者だから大雑把すぎる書き方もそれはそれでどうなん? となるのが悩ましい。



97 :goldloser さん

旅館の和室の奥にあるスペースって名前あるんでしょうか?


それはそれとして遊びに行ったのに大変なことになりましたね……。

「悪しきもの」って非常に漠然としていますがなんなんでしょう?



98 :anonymous さん

旅館のあの場所は「例のスペース」でも通じるよな。名前あるんか?



99 :anonymous さん

さすがのオリハルコンメンタル薬も寝れないか。



100 :anonymous さん

そら明確に悪意を持っているっぽい存在が近くをうろついてるともなれば眠れないでしょ。



101 :anonymous さん

もっと情報収集してくれというのが本音だけど、それやると盛大に死亡フラグ立ちそうで。



102 :anonymous さん

厄介ごとに進んで首を突っ込んで迷惑をかけるキャラクターなんて化け物のエサ枠以外のなにものでもない。



103 :anonymous さん

あれ? 結局旧館は関係なし?



104 :anonymous さん

そういや旧館については一切触れてないな。

毒ちゃんの所見だと旧館にも原因があるっぽい感じではあったが。



105 :anonymous さん

祠が壊れても山からは出られないようになってるって、ずいぶん厳重だな。



106 :anonymous さん

二重のセキュリティとか先祖優秀やな。



107 :anonymous さん

なんでそんなところに旅館立てちゃったの……。



108 :goldloser さん

>>107

よくあるパターンだと、伝承が風化して言い伝えを軽んじた結果……とかじゃないですかね?



109 :anonymous さん

>>108

怖い話あるある。



110 :hakohako さん

つ[¥3,000]

どうせ暇してたし朝でもいくらでも付き合う。



111 :anonymous さん

宿泊料タダになんねえかな?



112 :anonymous さん

薬の反応見るに廃都じゃすごい珍しい出来事、というほどでもなさそうだから宿泊料金返ってこなさそう。



113 :anonymous さん

ゴネればいけるやろw



114 :anonymous さん

あんまりそういうなりふり構わないようなムーブしてると「悪しきもの」にコロコロされそう。



115 :anonymous さん

いやーこんなところで宿泊業やってる旅館の過失だから返ってくるんじゃないの?



116 :goldloser さん

口止め料代わりに返すのはありそうですが、既に薬は盛大にここに経緯を書き連ねていますからね……。

どうなんでしょう?



117 :anonymous さん

豪雨+雷すごいらしいけど、停電したりしない?



118 :anonymous さん

停電→悲鳴→「悪しきもの」の犠牲者が! ……というところまで妄想した。



119 :anonymous さん

やめろフラグを立てるなw



120 :anonymous さん

>>117

言霊って知ってる?w



121 :anonymous さん

ひとりになったらどうやばいんだろう?



122 :anonymous さん

そら「悪しきもの」とかいう輩に食われるんでしょ。



123 :anonymous さん

「悪しきもの」の見た目とかいわれとか、どう「悪」なのかもっと教えて欲しいよね。



124 :anonymous さん

もっと「くねくね」とか「姦姦蛇螺」みたいに具体的か、立派な名前をつけておいて欲しい。

「悪しきもの」って雑すぎる。



125 :anonymous さん

名を与えることで正体を確定させるのはいいけど、不必要に力を与えてしまう可能性。

名を与えないことで力を与えないようにするのはいいけど、正体があやふやになってしまう可能性。

オカルト的には両方あるのが悩ましい。



126 :薬 さん

お布施ありがとうございます。


俺が寝つけないのはあまりに外の音がうるさすぎるせいです。

豪雨と雷鳴がすごいのと、旅館の建物と雨戸に雨が当たる音がすごいんですよ。

毒ちゃんも流石にうるさすぎて寝つけないみたいです。

フロントに言えば耳栓って貸してもらえるんでしょうか?


宿泊料についてはなにも言われていませんが、流石にチェックアウトするときに交渉したいですね。

ただ今は旅館の従業員の方々は非常に忙しそうにされておりますので、遠慮しておきます。


ところで現在の状況ですが、廃都外からやって来たと思しき大学生グループが

「雑魚寝とかありえない。部屋に戻る」

と言い出して女将さんと揉めているところです。



127 :anonymous さん

立ったよ! (大学生グループの)死亡フラグが!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る