鶴への恩返し
森本 有樹
蒼く甘美な死よ来たれ。
死とは何だろうと思う時がある。
命が断たれる、終わりが来る、機械が壊れる。では、これはどうだ?僕の機体、これは生きたまま死んでいる。あの栄光の日々と、何も変わらないまま。
「救国の英雄の記念碑」ということらしい。
「人間は認知の生き物だ。象徴があるからこそ英雄を信仰できる。」
そんな理由でこいつは殺された。生きていた時は熱を孕み、あの低くなった天井へ触れんとの力を開放していた機体が、死化粧のままそこに横たわっている。
深夜の戦争博物館、愛機にもう一回命を吹き込む準備は出来ている。
恩返しの時だ。
もう一度飛べないなら、一緒に落ちていこう。
気化したオイルに命が灯る。
かつてタービンに灯っていた命の熱を感じる。
鶴への恩返し 森本 有樹 @296hikoutai
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