第26話 クエスト三昧
ノーディンの町を拠点とすることにした我々は、朝から職業ギルド巡りをしている。取得している職のクラスランクを上げたところまでは順調に終わった。しかし、既存スキルへの加点や新規スキルの取得は、経験値の消費が大きく現時点で実施しない。
この状況の打開には、レベリングが急務ということである。
予想していたことではあるが、ノーディン冒険者ギルドは完全に貸し切り状態で適当にクエストを受注した。冒険者が到達してないので、ギルド職員に質問しても得られる情報は少ない。
インスタンスダンジョンは詳細が判明したものの、すぐに攻略することはできずクエスト消化とレベルアップが課題になる。
とりあえず、自から調べない我がパーティーメンバーに解説する。
「シーズンクエストはこの町で連続クエストの消化が必要になる。他はインスタンスダンジョンに関係するクエスト群と単発クエストを完了させる。あとはデイリークエストの消化が日課になるかな」
「めんどくさそうね。まあ、あたしはハワードの周りをウロチョロするだけだから、何も問題ないけど」
「オリエッタには協力という概念がないらしい」
「わたしがオリエッタのかわりに手伝うから大丈夫」
「セリナは優しいな」
また頭を撫でてしまった。これってセクハラじゃないよな……。
喜んでいるから問題ないか?
ギルドを後にしてバザーを見て回り、食材と資材を買いそろえた。食事は屋台で買い、町はずれの高台で昼食にする。
「ねえ、この後でレベリング?」
セリナが口元にソースをつけて喋っていた。気になったのでペーパーナプキンで口を拭ってやる。
「悪い、ソースに気がいってた。質問は何だったか?」
「ありがとう。レベリングするの?」
「町を出たら小さな牧場があるからそこでクエスト消化、ドロップファームも兼ねる」
「ハワード、敵は何よ」
「オリエッタの露出を少し低くしたような蛮族、カボチャ仮面の女だ」
「その発言、悪意を感じるわ」
「いや、オリエッタほど魅惑的じゃない。敵はヨーナみたいな体型だ」
なんだか、オリエッタが嬉しそうにしている。まあ、食事も終わったことだし牧場に移動しよう。
到着した場所は山に囲まれただだっ広い草原。
牧場は日本の牧場よりも規模が大きく、フルマラソンの距離を走っても一周できないだろう。
そこには豚を大きくしたような牛? ……まあ、謎家畜が放牧されていた。
クエストは家畜を襲いに来る裸族の退治である。
「あれが討伐対象だ。ゲームよりもきわどい衣装だな。胸はさらし巻き、腰には草の葉ミニスカート」
「ハワード! 思ったよりグラマラスよ。少なくともヨーナよりは」
「我は超越しておるから魅せる必要はないのじゃ!」
ヨーナはマイペースだった。セリナは自分の胸と見比べている。
セリナ、大丈夫だ。今のサイズから考えて、そのうち確実に追い越すだろう。
それにしても敵は、顔を除けば殺しにくい容姿をしていた。渋々と私がまとめて縛りあげ、オリエッタが率先して倒してくれた。
女蛮族は倒すほど数を増す仕様で、パチモンは既に女達に飲み込まれている。私は女の渦というやつを生まれて始めて目撃した。
恐ろしすぎるだろ……。
敵はバーゲン期間中のおばさんの如くパチモン争奪戦で荒れ狂っていた。
「パチモン……」
「がんばれ! モフモフされて嬉しそう」
「セリナの眼にはそう映るのか」
「うん!」
「ハワードも加わったら?」
「いや、辞退……退治するぞ!」
私は暴徒をまとめて縛り、オリエッタが奇声をあげながら爆散させていた。
たぶん同族嫌悪なのだろう。
ドロップは順調である。人型は出やすいという仮説は都市伝説と思っていたが、案山子と女蛮族の成果から立証されてしまう。
複数のユニーク武器とアイテムボックスが初ドロップした。
「アイテムボックスは上級で数も多いが、誰か使いたい者はいるのか?」
「ハワードが使えば。荷物持ちみたいなものだし」
オリエッタの提案に全員が賛成のようだ。パチモンとヨーナは興味なさそうだが、とりあえず使わせてもらうことにする。
その日は蛮族の虐殺祭りが執り行われた。
アイテムは最低限揃ったので、明日からは牧場周辺の連続クエストをクリアしていく。
翌日はシーズンクエストに関連した連続クエストを開始した。町外れの小川に常駐しているNPC、マーベルからクエストを受注した。
「ハワードぉ! なんでいつも縛ってくれるの?」
「オリエッタ、自覚してほしいぞ! 初対面の人に暴力は良くない」
「あれ、人じゃないよ」
「お前な……」
こいつの親はどんな教育をした。顔が見てみたい。
はぁ、余計なことは考えず狩でも始めよう。
「セリナとオリエッタは待機。ヨーナとパチモンは好きにしていろ」
敵はワニのような頭をした人型モンスター。
バタフライのようなフォームで泳いでいた。シュール過ぎて絶句する。
気を取り直して退治することにした。
「試しに投網を試してみる」
「雷撃で一網打尽はどうなのよ?」
「すべて死ねばいいが、数が多すぎると対応できないと思うぞ」
「そうかもね。投網地味だから嫌いだな」
もう相手しない。
ウェブで適当に絡めとって斬撃で大爆発させた。
セリナが手を叩いて喜んでいる。
「セリナもウェブ覚えるか?」
「わたしにはそれらしきスキルないよ?」
「私のスキルツリーでは、属性攻撃から分岐で下側にある」
「わたしにはないよ?」
他人のスキルとかステータスは他人が知ることはできない。これはゲームと同じ仕様だ。もしかして、隠しスキルが私だけに見えているとか……。
加護の究極が影響している気がする。
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