第24話 連続試練

 草原の先にある麦畑に試練開始の光の矢が落ちた。距離がそれなりにあり、全力で走っている。パチモンはついて来てないが仕方ない。

 畑の柵を乗り越え、麦など気にせず掻き分けて進む。

 どうにか間に合ったようだ。


 落雷のあとで雷鳴が響き渡り、強風が吹き荒れて雲を掻きまわす。上空を見上げると雲が渦巻く。そこに暗い影が現れ、咆哮する魔神が姿を現した。

 何かを叫ぶと地面からモンスターの一団が湧き出す。


 試練の開始だ。


 最初の敵はリザードマン、トカゲの獣人とも呼ばれる人型のモンスター。手に持つ槍を我々に向けて投げてくる。


 私はパーティーメンバーに当たりそうな槍だけガードした。

 セリナは私の後方でバフと身体強化を素早く詠唱、オリエッタは後衛位置に下がり、シールドを展開、すかさず敵にデバフを入れていく。


 私は投網を投げてアイススパイクで前列のモンスターを一掃した。

 残りはオリエッタの魔法で焼いていく。ヨーナは背後から切りかかっては姿を消している。連携に問題はない。


 第一ウェーブは終わり、次の敵は特大トカゲ。ぞろぞろと群れて現れた。

 パチモンが到着したので敵はそちらに流れていく。それを見ながらウェブで最大数を拘束、オリエッタのフレイムランスで爆散。


 残りはヨーナとオリエッタが倒し、セリナはエレメンタルとフィールド魔法でパーティーメンバーの火力をあげている。

 一瞬で終わるので、クールタイムが消化できずウェブをすぐ使えないのが痛い。

 拘束数はもうすぐ上限に達するだろう。別な範囲魔法が必要になる。


 次のウェーブは予想に反してボスクラスが現れた。おそらく連続試練になるようだ。無理に付き合う必要はないのだが、悲しい日本人の几帳面さから、連続するならコンプリートしたくなる。


「セリナはバフに徹して、あとは回復魔法、オリエッタはデバフを入れてボスが雑魚を呼んだら、私のサポートを頼む」

「ハワード! ボスには普通に攻撃していいの?」

「お前のところにヘイトが行かないように攻撃だ。敵の目をよく見ろ」


 これはアベルとの戦いで覚えた、この世界における基本的な攻略法だ。

 敵も生物ということ。


 現れたのはリザードマンキングで王冠にハンマーというミスマッチな装備だった。キングはパチモンめがけて走り出した。

 キングのハンマーがパチモンの頭を襲う。


 やられたかと思うとへこんだ頭が元に戻った。確かにへこんでいたはずだ。

 お前の頭どうなってる!


 まあいい。耐えられるのだから任せよう。


 戦いは一方的で、リザードマンキングは何度か雑魚リザードマンを呼ぶが、即時撃破した。最後はオリエッタの魔法でキングは大地に沈んだ。


「連続試練になる。ドロップを拾っておけ!」

「なによ、連続って?」

「魔神がまだ去らない。それに新たな暗雲が湧いてきている。試練が連続するから連続試練。そろそろ移動になる」

「ハワード! 次はあの林あたり?」

「あぁ、行くぞ!」


 林に光の矢が落ちた。また移動だ。


 移動先では甲虫型モンスターが現れ、ボスは金甲巨人が現れた。虫ではなかったがこの際どうでもいい。

 ボスを倒すとまた次の試練が発生する。また走って移動……。


 4回目はインプが現れ、魔法攻撃に対処した。そして、最後のボス敵は飛竜に分類されるドレイクだった。ドラゴンよりもトカゲに近いドレイクは黒く醜い。


 ドレイクは一度地面に舞い降りて一声咆哮する。

 嫌なご挨拶だ。

 上位ドラゴン種のようなブレス攻撃がないだけましか。


 オリエッタがフレームランスを放つとドレイクは飛びあがって回避した。


「おい、見境なく魔法を打つな!」


 睨みつけるも、オリエッタは次の魔法を詠唱中だ。


 私は仕方なく挑発スキルのタウントを使う。

 ドレイクは私めがけて急降下攻撃を仕掛けてきた。私はニヤリと笑うとウェブで絡めて墜落させた。狙いどおりだ。


 竜種のドレイクといえど、網で地面に落とせば蛸殴りで片がつく。


「これで終わりなの……ハワード」

「あぁ、疲れたな。みんなよく頑張った」

「しばらく試練は遠慮したい」

「あたしもセリナと同じ意見。さて、ドロップ拾って来る」

「任せた」


 ヨーナが去っていく魔神を睨んでいる。NPCでも侵略者は嫌なのだろう。

 しかし、魔神とは何者なのか。

 ゲームではまったく興味なかったが、今のところ情報はなく、天災の一種と考えるしかない。


 連続試練のドロップは破格で、ボスに関しては確定でユニークだった。ゲームよりもレアアイテムの出現率が高い。どう考えてもレベリングとドロップで優遇されている気がする。

 これは我々に限ったことなのか、他のパーティーの様子を確認したい。

 いつか潜入してみよう。パーティーに属さない荷物持ちとして。



 試練を終えて麦畑に戻ると化け物案山子かかしのエリートが湧いていた。確かドロップがよかったモンスターだ。早速狩りの時間になる。

 適当に範囲狩りして即席ドロップファームを作成した。


 ゲームの仕様と同じく、案山子のドロップは良質だった。クエストは切りが良く、今はドロップファームを継続する。


 腹も減り、夕方になったので狩りを止め、教会までクエストの完了報告に向かう。

 クエストの完了報告を済ませると残念なことに書簡を渡された。結局のところ、新たな聖スキルクラスの開放は他のスキルと同様の流れになるようだ。

 予想はしていたが、次の町に行くしかない。

 当面は案山子でアイテムを揃えて次の町に移動することにした。


 シーズンクエストの開始は教会に新たに到着したシスターから受けられた。以前はNPC自体がいなかった。

 おそらく、試練がトリガーになったのだろう。


 この仕様では、シーズンクエストを開始できる奴は少ない。

 嫌な予感がする。



 このままでは、我が陣営は対人戦に勝てないのではないだろうか。

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