第17話 暑がりオリエッタ
デイリークエストは速攻で終わってしまい、ドロップを確認すると女物のワンピースだった。私は店売りにすることにして、セリナはピンク、オリエッタは黒のアバター装備でユルふわ仕様だった。
「アバタール装備いいわ！」
「オリエッタ！ それ、アバター装備だぞ。アバタールは某ゲームの救世主だ」
「細かいことはいいのよ！ 早速試着」
その場で服を脱いで着てしまった。一応……私の性別は男なのだが。
「胸が窮屈だし上はこうしたら、あの痴女天使みたいね」
どこからかハサミを出して、裁縫スキルでも取っていたのかリメイクしている。
その作品はアバンギャルド！
上半身に布切れがない……ミニスカート姿。
胸は布面積の少ない水着。ブラ？
「魅せブラは諦めるが、頼むから未成年に見せられない部分は隠してくれ」
「ブラなしでテープでバッテン貼れって？ この身体でも剥がすとき痛いんだよ！！」
「魔法で貼ったら痛くないよ」
セリナが余計なアドバイスをする。
というか、セリナは何を思って試したのだろう。
オリエッタはにやけ顔であごを上げ、指を鳴らして後ろを向いた。
また改造を始めたようだ……。
注意しても可笑しな方向に行くので諦めた。しかし、アンジェリカ崇拝者がここにもいたとは。
オリエッタは腰に黒いゆるゆる超ミニスカート、トップレスの胸バッテンテープ、黒髪に怪しいチューリップハットをかぶっている。
こうして伝説の痴女オリエッタが誕生した。
爆誕という奴だろう。
「おい、オリエッタ！ 男に見られて恥ずかしくないのか？」
「だって、お洋服はアバターだからいいじゃない。それに、自分の身体じゃないから恥ずかしくないし、綺麗な体は見せることに価値があるわ！」
「まあ、裸でもスキルは有効だが……」
もうどうでもよくなった。
そんなタイミングでセリナに呼びかけられる。
「ねえ、私もかわいくなった？」
セリナはピンクのチュニックから下着が覗いて……見せているのだろうか。
これは……いけない、オリエッタの悪い影響だ。
「こうしたほうが清楚で可愛いぞ」
ボタンが全開放で、はだけかけた胸元をなおしてやると、セリナは真っ赤になって俯いてしまった。
しまった。セクハラじゃないか！
土下座して謝る。
オリエッタが喜んだだけで、セリナは胸に手をやり機能停止していた。
しばらくの間、ご
次の狩場である森の小川には、水面が沸き立つほどボラ顔の怪魚がいて、オリエッタの魔法で焼き魚にした。魔法の威力よりも揺れる上半身に目が行って集中できない。そのうち慣れるのだろうか。
クエストのドロップアイテムはランダムで、生産道具が入っていた。
生産職はスキルで選んだ職で装備できるものを制作できる。例えばオリエッタの場合、魔法職の布装備、ローグの革装備が着用できて、裁縫と革細工のスキルが取得できる。オリエッタは勝手に取得しているようだ。
アクセサリーやポーションでも同様に職縛りがある。例えば回復系のポーションは聖魔法の使える職しか作成できない。
当面は生産スキルを取らないが、スキルポイントが余りだせば、そのときに厳選して取ることも考える。
面倒ごとは何も起こらず、受注したクエストはすべて達成した。
アンジェリカ第一シーズンのメインクエストは開始NPCが次のゾーンにいるので実質進めることはできない。
インスタンスダンジョンを攻略しないと次のゾーンに移動できないのだ。
ただ、メインクエストは破棄ができず、いやな予感がしている。
例の無限チュートリアルみたいな難易度であれば抜けられない。
インスタンスダンジョンの攻略は順調で二階層目の最奥の部屋まで到達した。当然ながらドロップファームの位置も徐々に移動してきた。成果も伴ったもので武器と防具はこの階層で得られる最高ランクの物が揃っている。
おそらく最奥の部屋が、次の階へ行くためのプチボス部屋になると思われる。
スキルの選定は敵を見て考える。
そうして我々はプチボス部屋の扉を蹴飛ばした。
部屋は妙に薄暗く、石が適当にはめられた壁には血痕が付着していて、足元にはバラバラの白骨死体が転がっていた。我々よりも先にパーティーが攻略したとは思えないことから、舞台道具みたいなものと思うことにする。
中に踏み込むと黒い霧から二体のゴブリンライダーが現れ、憎悪の表情でこちらに向かってくる。
乗り物に乗るだけあって移動速度は早い。
見ているとパチモンに真っすぐに向かっていき、両者は激突した。
パチモンは二体の敵からモフモフされている。
パチモンは勝手にグレードアップするのか、足腰が強くなり敵に吹き飛ばされることはない。不思議なことに、激突回転は以前より激しくなった。それに伴いヘイト効率は格段に上昇している。
知れば知るほど謎な生き物だ。
眺めていると定期的に吐いていた。ゴブリンライダーはそれを浴びて激高する。
私は目が点になる。
セリナはライフと知力上昇、ステータス強化といった祈りでサポートする。今は強化バフに専念してもらっているが、上昇倍率がおかしなことになっていた。５レベルぐらいブーストされているのだ。
私は健気なパチモンを見ながらゴブリンライダーの後ろに回り、ウェブで敵を縛りあげた。拘束したことを確認してオリエッタに攻撃の指示をだす。
オリエッタの最大火力はフレイムランスで、単体相手ではトップダメージを叩きだす。
ウェブでリンクしているので単体火力が重要なのだ。
「フレイムランスいっきまーす！」
オリエッタは下着まる見えを気にせず、足を振り上げて投球モーションから敵に魔法を放った。アイドル始球式に憧れているのか……。
焔の槍がゴブリンライダーに激突、爆炎と大爆発で敵は爆散した。
一瞬で片が付いてしまう。
呆気なさすぎるだろ。
驚きを隠せないまま、我々は次の階層に向かった。
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