第35話 地上最強種の古竜の討伐

 俺は、領主として領地を賜ることになった。


 賜る領地に関しては俺は未開の領地を賜ることにした。


 魔力もあるし、一から開拓していくのも面白いかなと思ったからだ。


 しばらく二人の時間も欲しかったというのが一番の本音だ。


 タフネスは、領主が不在の土地を任されることとなったらしい。


 数ヶ月経つと、俺たちの領地の屋敷が完成して移り住むこととなった。


 周りには何にもない広大な土地にポツリと俺たちの屋敷が建っていた。


「あはは、本当になにもないね」


「そうだね。でもしばらくはゆっくりできるんじゃない?」


 俺たちはまだ17歳だ。


 領地経営もまだまだ勉強不足でこれからやっていかないといけない。


 まだまだ魔力アップの余地があるので、二人で冒険を続けて強い魔物を探すこともする予定だ。


 執事やメイド、使用人を雇い、屋敷の管理は一式任せることになっている。


 貴族としては普通のことなんだけどね。


 あと、カルミーアが料理をやりたがっていたが、貴族のご婦人にさせる訳にまいりませんと使用人たちに止められてしまった。


 雇った専属料理人に食事に関しては全てを任せることになってしまった。


 ただ、料理の内容に関してはカルミーアが細かく指示を出しても構わないということになった。


 当然、俺の魔力アップのためのレバー料理が並べられる。


「うーん」


「どうしたの?」


 カルミーアは難しい顔をしている。


「また最近、あなたの魔力が上がりにくくなってると感じているのよ」


 今食べているものは、魔王四天王のいたダンジョンの魔物のレバーである。


 かなり強そうな魔物だったので、最初は俺の体が光っていたそうだ。


 でも、最近はだんだん光らなくなってきたようだ。


「うーん、そうだね。もう少し強い魔物を探しに行こうか?」


「ええ、そうしましょう」


 カルミーアはいきなりテンションが上がった。

 ずっと屋敷に引きこもっているのもストレスが溜まるだろう。


 料理もさせてもらえないから余計にだ。


 冒険に出れば必然的にカルミーアが料理をしてくれる。


 それもあってカルミーアはウキウキだ。


 俺たちは、迷宮や洞窟の情報を集める。


 そして、とある森の奥にブラックドラゴンが棲家にしている洞窟があるという情報を手に入れた。


 普通の冒険者なら森にすら入れないほど危険な場所のようだ。


 強さ的にはSクラスダンジョンのボスレベルだそうだ。


「ねぇ、ブラックドラゴンがいる洞窟に行ってましょう!」


 カルミーアは資料を見て目を輝かせている。


 行きたくて仕方がないようだ。


「わかった。行こう!」


「ありがとう。だーいすき」


 カルミーアは喜びのあまり、俺に抱きついてきた。


 ——あはは、可愛いなぁもう。


「しばらく俺たちは屋敷を留守にする。あとはよろしく頼む」


「かしこまりました、旦那様。お気をつけていってらっしゃいませ」


 俺は使用人たちにしばらく出掛けることを伝えて、カルミーアと共に屋敷を出発した。


「カルミーア、近くの街まで飛んでいくよ」


「ええ、よろしくね」


 俺はカルミーアをお姫様抱っこをする。


『フライ!』


 飛行魔法で飛び上がり、目的の森の近くの街へ向かっていく。


「わぁ、風が気持ちいいし景色も最高だわ」


 カルミーアと空のデートも悪くはないな。


 しばらく飛んでいると、目的の街が見えてきた。


 街中に降りる訳にはいかないので、手前の林で目立たないように着地した。


 そして、地図を見ながら森へ入り、洞窟がある場所へ向かった。


 道中の魔物はSクラスダンジョンのボスに劣る程度だった。


 あまり倒しすぎて生態系が変わって、魔物が街を襲ってしまうのは困るので、極力無視して進んでいった。


 俺たちは目的の洞窟を見つけ、中に入っていく。


 洞窟内でも魔物が襲ってきたが、凍らせて粉砕しながら進んでいった。


 洞窟の奥には、広い空間があり、天井が抜けていていた。


 そして、ブラックドラゴンを5体も発見した。


「やったわね。ブラックドラゴンだわ」


 カルミーアは嬉しさのあまり声を上げてしまった。


 それに気づいたブラックドラゴンたちは一斉に闇のブレスを吐いてきた。


「カルミーア、危ないよ!」


 俺はカルミーアを抱き寄せ、魔力障壁を展開してブラックドラゴンの闇のブレスを弾いた。

 ブラックドラゴンたちは無傷の俺たちを見て若干ひるんだような気がした。


『アイスミスト!』


 氷の霧の魔法でブラックドラゴンたちは凍りついた。


 俺はそのまま『アイテムボックス』に回収して、素材確保完了だ!


「ごめんね、クレマーチス」


「大丈夫だよ。気にしない気にしない」


 カルミーアの甘えたような顔で謝るのは反則だ。


「このまま帰ろうかと思うけど、どうする?」


「うーん、街に1泊しましょうよ」


 カルミーアの目は「料理がしたい」と訴えかけているように感じる。


 俺も久しぶりにカルミーアの料理を食べたいな。


「わかった、さっきの街で一泊しよう」


「うん、ありがとう」


 俺たちはこの場でブラックドラゴン1体を解体して、近くの街に向かった。


 もちろん泊まる宿屋はキッチン付きの宿屋だ。


 部屋に入るなり、カルミーアは上機嫌で料理を始めた。


 そして、あっという間にブラックドラゴンのレバー料理が出来上がった。


 違う部位の肉も上質でいい匂いがする。


 俺たちは料理をテーブルに置いていき、席に着く。


「では、召し上がれ」


「うん、いただきまーす。ぱく……もぐもぐ。美味しぃ!」


 俺の美味しく食べる表情にカルミーアが大満足のように見えたが、少しがっかりしたようにも見えた。


「カルミーア、どうした?」


「うーん、やっぱりちょっと光が薄く感じたのよね」


 ブラックドラゴンでギリギリ魔力が上がるかどうかというところかぁ。


「そうかぁ、それ以上だと古竜くらいしかいないね」


「古竜? 伝説のドラゴンじゃない。どこに棲んでいるかわかるの?」


 古竜は、カルミーアの言う通り、滅多に人間のいるところに姿を現さないから伝説上のドラゴンとされている。


 ただ、文献によると人が絶対に立ち寄れないところに棲んでいると書かれていた。

 おそらく、険しい山の上などに棲んでいるのかもしれない。


「多分、険しい山の上に棲んでいると思う。ちょっと俺が探してくるよ」


「私はいかない方がいいよね?」


 行きたそうだけど、やばそうだなと感じているのが伝わってきた。


「そうだね。飛行しながら戦うと思うから、俺だけで行ってくるよ」


「うん、わかった。気をつけてね」


 俺は防寒対策をしっかりして、林の中へ行き飛行魔法を使って飛び立った。


 飛行をしていると、5体の魔物が近づいてきているのがわかった。


 残念ながら、ワイバーンだった。


『アイスミスト!』


 俺は全てのワイバーンを凍らせた。


 凍ったワイバーンはそのまま地上に落ちていった。

 

 俺はさらに飛行を続けていると、かなり高い山が見えてきた。


 普通の人間には登ることは絶対にできない山だ。


 俺は山の頂上付近を旋回して、古竜がいないか探しまわる。


 ——あ、見つけた古竜だ!


『エアカッター!』


 風の刃で俺は古竜の首をはねる。


 ——意外と弱いんだな。


『アイスミスト!』


 俺は古竜を凍らせて『アイテムボックス』に収納する。


 ——始めから凍らせてもよかったかな。まぁ、いいか。


 結局、見つけられた古竜は1体だけだった。


 ——1体だけでも上出来かな。


 俺は急いでカルミーアが待つ宿屋へ急いで戻った。


「ただいま。古竜を手に入れたよ」


「おかえりなさい。本当? すごいじゃない!」


 早速、俺たちは古竜を解体して、カルミーアにレバー料理を作ってもらった。


 俺はカルミーアが作った古竜のレバー料理を食べた。


「どう?」


「うーん、ブラックドラゴンよりは上がったような気がしたけど微妙な感じね」


 カルミーアの反応からして、あまり効果はなかったようだ。


 古竜は地上では最強種なので、これ以上の魔物は存在しないと思う。


 探すとしたら……あそこしかないよね。

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