最終章 意外な結末からのスローライフ

第34話 幼馴染との結婚式

 翌朝、俺は爽やかに目を覚ました。

 カルミーアは俺が目覚めるのを待っていたようだ。


「チュッ」


 ただの朝のあいさつだ。


 俺たちがゆっくり起きようとしていたところに、ズドーンとタフネスは空気を読まずに鍵のかかったドアを強引に開けて入ってきた。


「クレマーチスさん、カルミーアさん、ごめんなさい。叱っておきますから、支度をお願いしますね」


 リリーアが一緒にいたみたいで、タフネスを引きずるように部屋から出ていった。


 あの二人もいいコンビだ。


 俺とカルミーアはベッドから出て旅の支度を始める。


 ある程度支度が済むと、カルミーアは料理を始めた。


 朝ごはんと昼食用のお弁当作りだ。


 しばらくするとリリーアと縮こまったタフネスが部屋に入ってきた。


 ——いつもどんなふうに叱られているんだろうな。


「カルミーアさん、いつもごめんなさいね」


「いいわよ、いつものことだから」


 カルミーアは全然気にする素振りもなく明るく受け答えをする。


 最近はリリーアもカルミーアと一緒に料理をするようになった。


 途中からカルミーアと一緒に料理をする。


 俺はお皿を揃えたりとできる範囲でするようにしている。


 タフネスは椅子の上で縮こまっている。


 俺たちは朝食を済ませ、各地の魔王のダンジョンを攻略するために馬車で王都を出発した。


 基本的にSクラスダンジョンのみを対象に攻略をしていった。


 やはり、冒険者ギルドが機能していない街もあって仕事が増えた場所もあった。


 俺たちは地道にローラー作戦でダンジョンを攻略、正確にいうと破壊していった。


 ……数ヶ月後、丸一日馬車で走り回りやっと最後のダンジョンを攻略した。


 これで任務完了だ!


 攻略したSクラスダンジョンの数は1000ヶ所、報酬額は白金貨100枚だ。


 ——金貨が小銭に見えてくるよ。


「やっと終わったわね」


「これでゆっくりした生活ができるね」


「俺は体が鈍るのは嫌だなぁ。もっと冒険がしてぇ!」


「私もしばらくゆっくりしたいですね」


 タフネスだけ元気で、空気を読まないね。


 俺たちは疲れ切ってタフネスに対して苦笑いしかできなかった。


 今夜は近くの街に泊まって、明日になってから王都へ帰ることにした。


「じゃぁ、今夜は久々の呑み会にしましょうか!」


『おう!』


 カルミーアの勢いにつられて返事をしてしまった。


 だが、カルミーアがお酒に弱いことを忘れていた。


 だが、時すでに遅しで、この勢いを止める自信はない。



「それではー、任務完了を祝して、乾杯!」


『乾杯!』


 達成感を感じた後のお酒は非常に美味しい。


 出された料理も美味しくてお酒が進む。


 カルミーアも……止まりそうにないな。


 カルミーアは呑むだけ呑んで眠ってしまった。


 俺たちはカルミーアを背負いながら宿屋に向かう。


「久しぶりですね。もう2年くらい経つのかしら」


「もうそんなに時が経っていたんだね。懐かしいな」


「明日は大変ですよ。うふふ」


「ああ、覚悟しておくよ」


 俺たちは宿屋に着くと二手に分かれた。


 ——あれ、部屋を二つしか借りてなかったっけ?


 翌朝、案の定カルミーアは二日酔いだった。


 リリーアの癒しと俺の激マズ薬でなんとかカルミーアの二日酔いを治めることができた。


 2年前の朝のことも昨日のように思える。


 懐かしいな。


 でも、これが最後になるんだなと思うと少し切なくなった。


 俺たちは馬車に乗り、王都を目指した。


 カルミーアはまだ体調が悪いようなので俺の肩を貸してあげた。


 タフネスとリリーアは俺たちを温かい目で見守っていてくれた。


 王都に到着すると、騎士団が総出で出迎えてくれた。


 ——なんだ、英雄の凱旋みたいじゃないか!?


 気がつけば本当に英雄扱いだった。


 住民たちも総出で王宮までの道が作られていた。


 俺たちは騎士団が用意してくれた馬車に乗り換え王宮へ向かう。


 しかも屋根なしの馬車だ!?


 騎士の方に「お手を振ってください」と言われたので、住民たちに愛想笑いをしながら手をふった。


「なにこれ、私たち英雄みたいじゃない?」


「みたいじゃなくて、英雄なんだと思うよ」


 俺以外もなにが起きているのかわからないという表情をしている。


 みんなの愛想笑いも固い。


 王宮へ到着すると、俺たちは男女に分かれ客室に案内された。


 案内された客室で国王陛下との謁見のための衣装に着替える。


 準備が整うと、俺たちは国王の間に案内された。


 貴族の重鎮たちの間の赤じゅうたんの上を歩き、国王陛下の元に近づく。


 案内の者が立ち止まりその場を離れると、俺たちは跪いた。


「表をあげい」


 国王陛下の声とともに、俺たちは顔をあげた。


 国王陛下はまだ40代くらいのまだまだ若々しい感じの方だった。


「此度の活躍、ご苦労であった。其方らの活躍で王国は救われた。フリーデン王国を代表して礼を言おう」


 俺たちは国王陛下に頭を下げられてしまった。


 しかも、他の貴族の重鎮たちも頭を下げている。


「其方たちの功績を讃え、勲章と叙爵を授けることとする」


 国王陛下の発言とともに拍手が響き渡った。


 俺は正式には廃嫡になっていなくて、公爵の位を与えられた。


 タフネスは平民のため、男爵からということになった。


 さらに、俺が何か言いたげなことを国王陛下が察して下さったようだ。


「その方、何かあるのか? 発言を許す」


「発言の許可を頂き、ありがとうございます。私は隣にいるカルミーアと婚約をしております」


 俺が発言すると、国王陛下の表情が柔らかくなった。


「おお、それはめでたいではないか。して、そちらはどうなんだ?」


 国王陛下はタフネスに目線を向ける。


「はっ、私も隣にいるリリーアと結婚をする約束をしております」


 ——ええ、いつの間にそういうことになっていたの!?


 リリーアは少し恥ずかしそうに顔を赤めた。


「それはめでたい。それでは、王国の教会で英雄たちの結婚式を執り行うとしよう」


 国王陛下のご発言でさらに祝福の拍手が大きくなった。


 そして、国王陛下がお下がりになると俺たちは祝福の拍手の中、国王の間を後にした。


 数日後、俺とカルミーア、タフネスとリリーアの合同結婚式が王国の教会で執り行われる。


 俺とカルミーアの両親も参列していた。


 お父様が来ているのにはびっくりした。


 ……俺たちは今、控え室にいる。


「カルミーア、やっとこの日が来たね」


「うん、今までありがとう。これからもよろしくね」


「ああ」


 カルミーアの顔はベールに包まれていて表情が確認できなかった。


「じゃぁ、先に行って待っているね」


「うん」


 俺とタフネスは先に神父のいる祭壇の前で待機をする。


 カルミーアが義父様にエスコートされてきて俺に託す。


 義父様は「娘をよろしく頼む」と呟いて席に戻った。


 そして神父の誓いの言葉がはじまった。


「病める時も健やかなる時も、悲しみの時も喜びの時も……これを愛し、これを助け、これを慰め、これを敬い、その命のある限り心を尽くすことを誓いますか?」


『誓います!』


 俺たちは声を揃えて誓った。


「それでは誓いの口づけをお願いいたします」


 そして俺とカルミーアは誓いの口づけをした……。

 

 短いような長いような不思議な感じだった。


 俺たちは盛大な祝福の拍手の中、教会を出て俺たちの結婚式は終了した。

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