第24話 冒険者たちの襲撃
俺たちは、仕立て屋に行き頼んでおいた衣装を受け取りに行き、衣装を受け取ると着替えるために宿屋に戻る。
「それでは、着替え終わったら宿屋の入口に集合よ」
「了解!」
俺たちはそれぞれの部屋に戻り、高級レストランに行くために衣装に着替える。
レストランなどの高級店では基本的に武器の持ち込みは禁止とされている。
一応念の為、カルミーアから魔剣を預かり収納しておいた。
「お待たせ、みんな揃ったら行くわよ。って、クレマーチスしかいないじゃない」
カルミーアの衣装を改めて見て、とても心臓がドキドキした。
凛々しくて、可憐な姿にトキメキそうだ。
「クレマーチス、どうしたの? 私に惚れちゃった?」
「い、いや、本当に綺麗だなって思って……」
——やばい、語彙力も足りなくて、頭から湯気が出てきそうだ。
「ありがとう。クレマーチスも素敵よ」
「ああ、ありがとう」
もう少し待つと、リリーアが降りてきた。
うん、妖精のようにとても可愛らしい感じだ。
「お待たせしました。あとはタフネスさんだけですか?」
「うん、そうだよ。でも遅いね」
タフネスは慣れない服で、着替えるのに手間取っているのだろうか。
そうこうしているうちにタフネスが降りてきた。
「ごめん、着慣れない服でさぁ、遅くなった」
「ぷふっ、あはは」
「なんだよう、いきなり笑うなんて」
やばい、お腹が痛い。
ガチガチのムチムチの筋肉の塊の体に全く似合っていなかった。
「タフネスさん、採寸した時より筋肉が大きくなってません?」
「ああ、毎日鍛えているからなぁ」
採寸してオーダーメイドした意味が……。
まぁ、人前で衣装が破れないことを祈っておこう。
「さぁ、行くわよ」
全員揃ったので、高級レストランに俺たちは向かった。
「いらっしゃいませ。ご予約はされておりますか?」
「はい、カルミーアで予約をしておりますわ」
「かしこまりました。少々お待ちください」
ウェイターが予約の確認をしに行って、戻ってきた。
「失礼いたしました。ご予約の確認が取れました。あちらのお席にご案内します」
カルミーアが事前にしっかりと予約をしておいてくれたようだ。
「カルミーア、予約しておいてくれてありがとう」
「当たり前じゃない。こういうお店は予約しないと入れないのよ」
俺たちは案内された席について、料理を待つ。
コース料理というもので俺は初めて食べる。
カルミーアは家を出る前に何回か高級レストランに来たことがあるそうだ。
コース料理って、一つずつ料理がタイミングを見計らって出してくるんだな。
タフネスは居酒屋などでガッツリ食べたい派なので窮屈そうだ。
料理が出てきて食べ始めようとした時、俺は誰かが魔法を発動させようとしていることに気が付いた。
『アイスウォール!』
俺が氷の壁を展開したと同時に、レストランの外側の壁が破壊された。
「きゃぁぁ!」
レストラン内は大パニックだ。誰が襲撃してきたのだろうか?
「カルミーア、一応魔剣を渡しておく。タフネスさん、前の盾で悪いんだけどお店の人たちを守ってください。リリーアさんは怪我人の回復をお願いします」
「おお、お店の人たちは俺に任せておけ」
俺はカルミーアには魔剣を、タフネスには古い盾を渡した。
タフネスなら盾スキルを発動させてお店の人たちを守ることくらいはできるだろう。
万が一があってもリリーアの回復もある。
「カルミーアはお店に侵入してきた者に対処してもらえるかな? ドレスだと動きにくいでしょ?」
「そうね。残念だけど、クレマーチスに頼るしかないわね」
「うん、任せて!」
「おい、店の者たちが殺されたくなかったら、あり金を全部よこしな」
「早くしろ、上級魔法をぶっ放すぞ!」
襲撃犯は俺たちを脅してお金を奪うのが目的のようだ。
そんなことは無視して俺は魔力障壁を展開して店の外に出る。
すると、一斉に魔法や矢が俺に向けて放たれた。
だが、全ての攻撃は俺の魔力障壁によって無効化された。
「なんじゃそりゃ?」
「飛び道具じゃ効かないよ!」
「抜かせ、これでもくらえ!」
『紅蓮の爆炎よ目の前のクズを焼き尽くせ、ファイヤーフェニックス!』
不死鳥の形をした紅蓮の炎が俺に向かって放たれた。
「やったか?」
しかし、俺の魔力障壁には傷一つ付かなかった。
「なんで上級魔法が効かない!?」
「接近戦だ。魔法使いは接近戦に弱い。みんなでかかれぇ!」
『おう!』
襲撃犯たちが接近戦に切り替え、一斉に俺のところに向かってくる。
一ヶ所にまとまってくれるのを待っていたよ。
『スタン!』
初級の重力魔法で襲撃犯たちの動きをおさえる。
「うぎゃぁぁ、なんじゃこりゃぁ」
「うごけねぇ」
「うぎゃぎゃぎゃ」
「俺ダメ……」
襲撃犯たちは地面に這いつくばらされて身動き一つとれない。
一人はすぐに意識を失った。
他の者たちもしばらくして意識を失った。
俺は重力魔法を解除して、カルミーアたちを呼んで襲撃犯たちを捕縛した。
覆面をとると、襲撃犯は冒険者ギルドでイチャモンをつけていた者たちだった。
「お金欲しさにここまでするとは思わなかったわ」
「俺たちが丸腰になるタイミングを狙っていたんだね」
「クレマーチス、ごめんね一人にやらせちゃって」
「いいよ、せっかくの綺麗なドレスが台無しになっちゃうじゃない」
「はいはい、イチャイチャしている時間はなさそうだぜ」
「イチャイチャなんか……」
カルミーアが言いかけたタイミングで、王国の騎士団がやってきた。
「襲撃強盗があったと聞いて駆けつけたのだが……」
状況を見て事件は解決したんだなと騎士たちは悟ったようだ。
「すみません、店の人たちが危なかったのでこちらで捕まえてしまいました」
「いえ、こちらこそありがとうございます。念の為身分証か何かありますか?」
俺たちはギルド証を騎士たちに見せた。
「これは、噂に聞くSランクパーティーの方々でございますね。ご協力ありがとうございます」
上の方の人たちには俺たちの情報が伝わっているのだなと感じた。
Sランクってだけで本当に扱いが違うんだな。
俺たちが捕縛した襲撃犯たちは騎士団によって連行されていった。
「冒険者の方々、店をお救いくださいましてありがとうございました」
店主だろうか、とても腰の低い紳士の方がお礼を言ってきた。
「いえいえ、お怪我はありませんか?」
「はい、この通り無事でございます」
しかし、お店の壁が壊されてしまって修復には時間がかかるだろう。
「クレマーチス、ちょっと」
俺はカルミーアに呼ばれて、収納魔法から金貨100枚を出してと言われた。
「店主さん、これを改装資金に当ててください。こちらが巻き込んでしまったようなものですから」
「本当によろしいんでしょうか?」
カルミーアは「大丈夫ですよ」と頷くと、店主はありがたくお金を受け取った。
「ありがとうございます。本日のディナーを最後までお届けできなかったことが心残りでございます。お店が再開しましたらご招待させていただきますね」
「はい、ぜひ。楽しみにしておりますね」
襲撃犯のせいでディナーが台無しになり、空腹感を残しながら宿屋に戻った。
結局、夕食はいつものカルミーアの手料理で満足した。
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