【レバーを食べて魔力アップ！】〜実家にも勇者パーティーにも追放された初級魔法しか使えないクズ魔法使いは、幼馴染のレバー料理で史上最強の存在になってしまう〜

第23話 王都の冒険者たちの嫉妬

　王都観光を満喫して、翌日からは本格的にSクラスダンジョンの攻略をしていく。

　俺たちはクエストの受注をするため、冒険者ギルドに立ち寄った。

「あのフルプレートはすごいなぁ」

「全部ミスリル金属でできているのか？」

「剣士の姉ちゃんも強そうだ、しかも魔剣持ちかよ！」

　否定的な会話が聞こえてこないのは新鮮である。

　今までは突っかかってくる冒険者しかいなかったからね。

　浮かれてても意味がないので、気にしないように俺たちは直接受付まで行く。

「すみません。Sクラスダンジョンのクエストの受注をしたいのですが」

「はい、かしこまりました。どちらのダンジョンを受注されますか？」

　受付のお姉さんは地図を出し、どのダンジョンを攻略するか決めてもらいたいようだ。

　カルミーアはなんの躊躇もなく、指をさして攻略対象を告げる。

「えーと、ここから、ここまでの１０ヶ所のSクラスダンジョンでお願いするわ」

「１０ヶ所もですか！？」

　受付のお姉さんが声を荒立てて驚くと、ギルド内がざわつきはじめた。

「これでも少なめなんですけどね」

「さ、さようでございますか……」

　受付のお姉さんは半分放心状態でクエストの受注処理をしてくれた。

「マジかよ、Aクラスでもやっとだというのに」

「Sランクパーティーってどれだけ強いんだよ？」

「昨日もSクラスをぱぱっと終わらせたみたいだぜ」

　Aクラスがやっとの冒険者たちにとっては信じられないことなのだろうと伝わってきた。

　俺たちはいつものことと思いながら、ダンジョンへ向かった。

　Sクラスダンジョンに到着すると、いつも通り、凍らせて粉砕作戦でダンジョンを攻略していく。

　結局、１０ヶ所のダンジョン攻略は半日程度で達成してしまった。

　俺たちが冒険者ギルドに戻ると、あまりの戻りの早さにギルド内の人たちに驚愕されてしまった。

「おかえりなさいませ。本日もお早いお帰りですね」

　受付のお姉さんは額に汗をかきながら対応する。

「はい、コア魔石の鑑定をお願いしますね」

「かしこまりました。『鑑定』……Sクラス、１０個……報酬は白金貨１枚ですね」

　白金貨でもらうのは初めてだ。

　あまりにも高額な報酬だったため、冒険者たちがどよめいた。

「Sランクパーティーは実力が違うな」

「報酬で白金貨なんて初めて聞いたぞ」

「半日で１０ヶ所なら、もっといけるんじゃないか？」

　俺たちは１０ヶ所でも少ないと感じて、ダンジョン攻略の１日のノルマを２０ヶ所にした。

　そして、日々ダンジョン攻略のノルマを達成していく。

　冒険者たちの称賛の声が多かったのは最初のうちで、攻略していくうちに賞賛の声は段々と少なくなっていった。

「ギルド内がだいぶ落ち着いてきたね」

「毎回のことだから飽きたんじゃないか？」

「そうだといいのですが……」

「まだ声が無いうちはいいけど、逆の気持ちが芽生え始めたら怖いね」

　懸念することは、俺たちは大金持ちパーティーとして知れ渡っていることだ。

　無謀だとは思うけれど、俺たちのお金目当てで襲ってくる者も出てくるかも知れない。

　ただ、その辺は抜かりはない。

　基本的にお金の管理はカルミーアで、ちゃんと帳簿も付けている。

　カルミーアはかなりしっかりもので、必要最低限の金額だけそれぞれにお小遣いとして渡している。

　盗まれてもたかが知れている金額だ。

　ちなみに、残りのお金の収納先は俺の収納魔法だ。

　強盗に入っても盗まれることはない。

　俺を殺しても手に入れることはできない。

　俺を洗脳でもして操らない限りお金を取り出すことは不可能だ。

　俺たちはその後も、順調にダンジョン攻略を続けていく。

　それと同時に、俺たちを妬む言動をちょこちょこと耳にするようになってきた。

「まぁ、そうなるわね」

「人間はそんなものだと思っていた方が気が楽だぜ」

「タフネスさんの言うとおりですわね」

　今後は街に出かけるときは二人以上で出かけるなど、警戒を強くして過ごすことにした。

　ある日、クエストを受注をするために冒険者ギルドに来ると、一つのパーティーの集団が俺たちのところへやってきた。

「なぁ、お前たち、ズルしてダンジョン攻略をしているよなぁ」

「俺たち見ちまったんだよ」

「アレはどうなのかな？」

「俺たち、黙っててやるからさぁ、白金貨５枚くれないかなぁ」

　——単純に凍らせて粉砕作戦を見ただけだとそう見えるのかぁ。

　やっぱり、どこにいてもこういう冒険者が出てくるよね。

「ズルとは聞き捨てなれないわね」

　カルミーアが流石に怒り出してしまった。

「ズルと思うなら、あなた達もやって見ればいいじゃないですか？」

　あの大人しいリリーアまでも怒りをあらわにした。

「なんだとぅ？」

「そんなもんできるわけないじゃないか？」

「みんなができないことをやって攻略するのが何がいけないんだ、おい？」

　タフネスもブチギレ寸前だ。

「お前たち、何を騒いでいるのだ？」

「こいつらが、ズルしてダンジョン攻略をしてるんですよ」

　この人たちは、この期に及んでまだ言うのか……。

　俺たちは、ことの経緯をギルドマスターに説明をした。

「魔王のダンジョン攻略は、ダンジョン内の魔物を討伐してダンジョンを破壊してコア魔石を回収することだ。それを一度でやることが、なぜズルになるのか理解できん」

「…………」

　ギルドマスターから正論を叩きつけられた冒険者たちは、何も反論をすることができなくなって逃げてしまった。

「つまらん冒険者たちが失礼をした。ここに詫びよう」

「いえいえ、こちらこそ仲介に入って下ってありがとうございます」

「それにしても、驚異的な早さでダンジョン攻略をされていて本当に驚いている。あまりの異常さに疑われてしまうのは無理もない。ああいったことはこちらで対処させてもらうから、これからもダンジョン攻略をお願いしたい」

「はい、ありがとうございます。ギルドマスターの後ろ盾があると助かります」

　今後はギルドとして対応してくれることになり、冒険者たちの脅しなどは無視していくことになった。

　それだけでも面倒が省けてありがたい。

　俺たちが宿屋に戻ると伝言が来ていた。

　先日仕立てをお願いした衣装が完成したとのことだった。