第15話 Sランクパーティーに昇格!

 俺はお父様を倒し、魔法大会を優勝して賞金として金貨100枚を受け取った。


「クレマーチス、優勝おめでとう」


「さすがだな、おめでとう。史上最強の魔法使いだな」


「クレマーチスさん、おめでとうございます」


 カルミーアたちは観戦場所から飛び降りて駆けつけて、優勝を祝ってくれた。


 さすがに決勝戦はすごかったらしく、初めて大歓声が響くのを聞いた。


 元父親はかなりダメージを負ったらしく、救護班の人たちが四苦八苦していた。


 俺はお父様に近づく。


「クレマーチス、どうしたの?」


『ヒール!』


 俺はお父様に回復魔法をかけた。


 とても酷かった大火傷が一気にきれいになっていった。


「礼など言わぬぞ」


 お父様は起き上がると俺を睨みながら悪態をついてきた。


「おじ様、そのような言い方は失礼じゃありませんか?」


 カルミーアがお父様に対して意見をしてきた。


「其方は……。勇者様とハルトグートは一緒じゃないのか?」


 ——心配するのは勇者と弟のことだけか……。


 ハルトグートの所業や行方は実家には伝わっていないようだ。


「勇者とハルトグートなら資格を剥奪されて連行されたましたわ」


「な、なんだと!?」


 さすがにお父様はショックだったようだ。


 完全に項垂れてしまった。


「それではおじ様、失礼いたしますわ」


 俺はお父様に対して怒りや憎しみの感情はなかった。


 なんだろう何も負の感情が込み上げてこない。


 俺たちは競技場の大歓声の中、宿屋に帰るため闘技場を後にした。



 ——ゴーレム召喚かぁ……。


 お父様の召喚魔法は超級の魔法だから、お父様はあれ程の上位ゴーレムを召喚できた。


 俺の召喚魔法は初級しか使えない。


 最弱クラスの魔物しか召喚できないし、ランダムだ。


 でも面白そうだから今度試してみよう。


「ねぇ、まだ時間もあるしダンジョン攻略に行きましょう」


「うん、そうだね」


 俺たちは宿屋に戻ることはやめて、そのまま冒険者ギルドに向かった。


 冒険者ギルドの中に入るといつもと雰囲気が違うのがわかった。

 妙な緊張感が漂っている。


「なんだ?」


「昨日までは攻撃的な目線を送っていたのに、急に変わると気持ち悪いわね」


「魔法大会で優勝した効果なんでしょうかね」


 俺たちは違和感を感じながらも、クエストを受注してSクラスダンジョンへ向かった。


 今回のダンジョンはアンデットの巣窟だった。


「うわぁ、これだけいると気持ちが悪いね」


『獄炎爆炎剣!』


 カルミーアは獄炎でアンデットたちを焼き尽くしていくつもりだ。


 剣越しとはいえ、触れたくないようだ。


「アンデットなら任せてください」


『ホーリージャベリン!』


 リリーアの本領が一番発揮できるダンジョンだね。


 聖属性の魔法でアンデットをどんどん消し去っていく。


『ファイヤーボール!』


 俺も炎の魔法でアンデットの群れを焼き尽くしていく。


「おいおい、俺の出番なくね?」


 タフネスは今回はお休みだ。


 タフネス以外はアンデットに触れたくないのでガンガン火力を上げて進んでいく。


 骨や腐肉しかないので素材としての価値もあまりない。


 カルミーアたちはアンデットに対して容赦はなかった。


 

「ふぅ、やっとボス部屋ね。2度と来たくないダンジョンだわ」


「そうですね、あまり気分の良い場所ではないですね」


 女性陣にとっては耐え難い場所なのだろう。


 見た目も嫌だが臭いも酷い。


 次回は臭い対策もしておく必要がありそうだ。



 俺たちがボス部屋に入っていくと、ジェネラルリッチが待ち受けていた。


「よくぞ、ここまで来たな。俺様の魔法に平伏すが良い。あははは」


 俺たちは何の収穫もなさそうなボスに対してため息を吐いた。


「俺様を見てため息を吐くとは舐めているのか?」


「舐めてはいないけど、ガッカリだわ」


「ええい、どいつもこいつも生意気な!」


『ファイヤーボール!』


 俺たちはジェネラルリッチと話をするつもりはない。


 俺は容赦なく炎の魔法を放った。


「お前は馬鹿か、そんな初級魔法で……うげっ」


 ジェネラルリッチは跡形もなく消し飛んだ。


 ダンジョンが崩壊を始めたので俺たちは脱出し、タフネスが瓦礫がれきの山からコア魔石を回収する。


 タフネスからは「お仕事を残してくれてありがとう」と涙を流しながらコア魔石の回収をしてくれた。


 本当にタフネスは何も出来なくて悲しかったんだろうね。


 俺たちは冒険者ギルドに戻り、クエストの報告をして報酬をもらう。


 宿屋に帰ろうとしたところ、ギルドマスターから呼び止められた。


「君たちすまない。ちょっといいかな。悪い話ではない」


「はい、大丈夫ですよ」


 カルミーアが返事をすると、ギルドマスターの自室まで俺たちは案内された。


「君たちの冒険者ランクを上げさせてもらいたくて引き留めたんだ。クレマーチス君が魔法大会を優勝するほどなのだから、君たちをSランクにあげようと思う」


「え、いいんですか? 試験とかは必要ないのでしょうか?」


「いや、もうすでにSクラスダンジョンをいくつか攻略してもらっている。その辺は問題ない。逆に他の街へ行った時に面倒ごとを減らせると思うんだけど、どうだろうか?」


「はい、こちらとしてはありがたい申し出ですね。よろしくお願いいたします」


 俺たちは、マジックールのギルドマスターのはからいで冒険者ランクをSまで引き上げてもらった。

 

 今後の活動としても動きやすくなるのでとてもありがたいことだ。


 そして、俺たちは冒険者証を渡して更新してもらった。


「わぁ、これがSランク冒険者の冒険者証か」


「すごい、全然見た目が変わってくるのね」


「もちろん、Sランクになんてなかなかなれるものじゃないからね。私は何年もギルドマスターをやっているけど、Sランクの冒険者証を見るのは本当に久しぶりだよ」


 それほどSランク冒険者は希少な存在なんだなと改めて認識した。


 魔王のダンジョンがかなり放置されているのは、冒険者がなかなか育っていないことも理由の一つだろう。



 俺たちは冒険者ギルドでの用が済むと、真っ直ぐに宿屋に戻った。


「お客様、おかえりなさいませ。優勝おめでとうございます。とてもお強いんですね」


「ありがとうございます。観戦されていたんですね」


「ええ、特等席で見させてもらいました。決勝の圧倒的な勝利にはとても感動しましたよ」


 ——なんかここまで褒められると照れるなぁ。


「あれー、クレマーチスが照れてる」


 カルミーアが茶化してくる。


「そ、それは、褒められれば嬉しいけど、褒められ慣れてないんだよ」


 いつも罵られたり、貶され続けてきた人生だったから仕方がない。


 でも、俺たちを好意的に見てくれる人も結構いるんだなと感じられたことはとても嬉しい。


 勇者がいなくなっても、みんなの笑顔を守るために頑張っていこうと俺は気持ちを一段と強くした。



 ただ、勇者の代わりをしていくといっても、様々な課題もある。


 俺たちが今いる国はフリーデン王国という、かなり大きな国だ。


 街の数もかなりあるということは、魔王のダンジョンもその何十倍も存在するということだ。


フリーデン王国中の街をまわって、片っ端から魔王のダンジョンを攻略していくために効率化も考えていかないといけない。


 俺は一つアイデアが浮かんだので、次のクエストの時に試してみようと思った。

 

 翌日、俺たちはいつものようにクエストを受注してSクラスダンジョンまで来た。


 そっとダンジョンの中を覗いたら、ここも昨日と同じくアンデットの巣窟だった。


「カルミーア、ちょっと実験をしてもいい?」


「え、何をするの?」


「ダンジョンごと一気に壊せないかなぁって思って」


「え、そんなことができるの?」


「うん、今後の効率化に向けて試してみようかなと」


「わかったわ、クレマーチスに任せるわ」


 俺は魔力を練り上げ、ダンジョン全体を凍らせることをイメージした。


『アイスミスト!』


 予想通り、氷の霧でダンジョンごと凍らせることができた。


「みんな、ちょっと離れてて。一気にダンジョンを壊すから」


 俺はみんながダンジョンから離れたのを確認して次の魔法を放つ。


『スタン!』


 最大出力の重力魔法でダンジョンを粉々に粉砕することができた。


「うひゃぁ、すごいな。これならもうダンジョンに入る必要がなくないか?」


 タフネスの言う通りだ。


 コア魔石がこの状態でもしっかりと回収できることがわかったので、ハズレダンジョンやAクラス以下のダンジョンでは同じように破壊していくことにした。


 その後、攻略の効率化が可能になったので短期間でマジックール周辺のダンジョンを制覇することができた。

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