第12話 中世最高内閣を作れ・その3

 中世最高内閣の編成を任された俺達。


 そんな俺の下へ、大臣への自薦がひっきりなしにやってくる。

「おまえが奥洲天成か」

 本日、大量のラクダとともにやってきたのはマリ帝国のマンサ・ムーサだ。

 世界史最強の金持ちとして知られ、メッカ巡礼で金をばらまきまくって、相場を暴落させたと言われている。


「わしも中世最高内閣の大臣になりたい」

 ゴトッと俺の目の前に黄金の延べ棒を置いた。


 この野郎、俺を買収しようと言うのか!?

 馬鹿にするんじゃない!

 この奥洲天成、今まで失敗したことは無数にあるが、買収されたことは一度もないわ!


「あまり息巻かないでくれたまえよ」

 ゴトゴトッ。

 黄金の延べ棒を一杯に積んだ馬車を俺の隣に置いた。


 だから、この程度の黄金で!

「固いことを言わずにさぁ」

 カンカン。

 くっ、黄金の家だと!?


「大臣ポストの一つくらいいいじゃん」

 黄金を一杯積んだ船も置いた。


「どうかな?」

「クククク、マンサ・ムーサ。おぬしも悪よのう」

「いえいえ、お代官様には敵いませぬ」

「……よし、この奥洲天成に任せてくれ、マンサ・ムーサ。ポストの一つや二つ、軽く用意しよう」

「ありがとう。テンセイならそう言ってくれると思っていたよ」


 俺とマンサ・ムーサは親友同士の握手を交わして別れた。

 フッ、やはり先立つものは大切だからな。

 無理に片意地を張る必要などない。



 ということで、マンサ・ムーサに大臣ポストを約束してしまったが、どの大臣にしたものか。

 多分、日本の首相もこんな感じで悩んでいるんだろうという悩みだ。

 財務大臣……は金相場を暴落させているから、ダメそうだな。

 いや、ひょっとしたら相場を下落させてそこに付け込もうという意図があったのかもしれないが。そうなると、外務大臣とか違うポストが向いていそうだな。


 本人はメッカ巡礼に気合を入れまくっていたから、宗教系の大臣なんかにすれば喜ぶかもしれない。新設ポストなら郁子達も文句は言わないだろうし。

 ただ、具体的に宗教政策をどうしたこうしたという話はないからな。


 まあ、実際にはマリ王国の金は金山採掘以外にも通商権を独占していてゲットしたという話もある。

 となると、通商系……経済産業大臣なんかが良いのだろうか。

 ただ、このポストは熾烈な争いになりそうだからな。


 メッカ巡礼を一大イベントにしたわけだから、オリンピック担当相とか万博担当相みたいなイベント担当相が良いのかもしれないな。

 いや、もうそのままズバリでメッカ巡礼担当相で良いのではないか?

 よし、それにしよう。

 世界人口の1/6くらいはイスラム教徒だ。

 彼らが人生最大のイベントをきちんと行える環境を整えてこそ、世界平和は実現するのだからな。


 ハッハッハッハッハ!

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