第2話 目指せ南の果てを・中編

 ということで、ジェームズ・クックとともに南極に行くことになりましたが。


「待った! 南極に行くのなら、俺達を助っ人とする気はないか!?」


 突然、黒いシルエットの男が2人現れましたわ!?

 この作品、こういうノリでしたっけ?


「誰だ!?」

 クックの呼びかけに、靄のようなものが晴れてきて姿が現れてきますわ!


「俺こそ、エルナンド・デ・マガリャネス! 世界一周した男よ!」

「私は白瀬矗しらせ のぶ! 南極を目指すのなら、この私も是非!」


 ……えーっと、助っ人?

 正直、いない方がマシなのではないかと……


「そんなこと冷たいことを言うなよぉ。あの時代にマゼラン海峡まで行ったんだぞぉ……」

「そうだよぉ……。私だって、私だって南極点に行きたいんだ……」


 うおおぉ、2人して泣きついてくるんじゃありませんわ!

 鬱陶しい!


「良かろう。私の言うことを聞くのなら、連れていってやろう」


 連れていくんですの!?

 そうでなくても難易度の高い18世紀に南極点に行くなんてミッションに、更にハンデをつけてどうするつもりなんでしょう?



 ともあれ、ジェームズ・クックは本人転生を果たしましたわ。

 ワタクシは今回、その動向をチェックする役目。ジャンヌ・ダルクの時の新居千瑛ポジションですわね。


 クックは現代の知識も前世の知識も有していますので、瞬く間に「こいつは海の男になるしかない!」と周囲の評判になりましたわ。

 更に英国海軍に入り、七年戦争周辺でフランス海軍と戦ったりして名前をあげていきますわ。


「私の失敗は、第二回の航海の時に南極大陸まで踏み込む勇気を持たなかったことだ」

 クックが未来の自分を回顧しております。

 未来を回顧というのは日本語として変ですが、気にしないでくださいまし。


 確かにクックは二回目の航海で南緯71度付近までたどりついていると言います。

 吠える40度、荒れ狂う50度、絶叫する60度を飛び越え、ヒステリーな70度まで飛び込んだのですわ。


「ヒステリーな70度なんて言うんですか?」

「ワタクシが創りましたわ」

「とにかく、そこまでは行けるのでもう一歩の努力と、あとは南極大陸踏破のために必要なものですが」


 これは言うはたやすく、行うは難しですわ。

 ロアール・アムンセンがイヌイットの技術などを使って、うまく到達したというのは本当です。しかし、あれはアムンセンという破天荒なキャラがあり、かつ彼がノルウェー人だからこそ出来たことですわ。

「北極行くつもりだったけど、何か踏破されたみたいだから南極行くわ。我が目的地は南極にあり!」

 明智光秀の「敵は本能寺にあり」よりも滅茶苦茶なこのメンタリティーであればこそ、そんな大将を背負う船員だからこそ、イヌイットの流儀に従ったのです。


 クックは英国軍人です。

 英国軍人というものは、イヌイットを軽んじておりますわ。

 そんなものに頼るなら死んだ方がマシくらい考えておりますわ。

 そして実際スコット隊は死んでしまいましたわ。


 クックが「こうしよう」と言っても、聞き入れてくれることはありませんわ。


「確かにその通りです。しかし、私には助っ人がいます」

 と、ここでクックはマガリャネスと白瀬を呼び寄せましたわ!


 なるほど!

 スペイン人と日本人がいたら、イヌイットの流儀をとりいれやすくなるかもしれませんわね!

 ですが、そのメリットよりも船内に派閥が出来て反乱が起きるデメリットの方が高くなりそうにも思えるのですが……



"千瑛ちゃんの一言"

「大陸に到達することはできそうだけど、その先は……うまくできるのかしらね?」

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