第44話 あるホストの悲劇・後編

注意:この話にも猟奇的な表現が出てきます



 天成がマリア・エレオノーラに捕まってしまったので、女王フアナとの交渉はア・タ・シ♪ 鄭和がすることになったワ~ン。


 さて、カタルーニャ地方に転生して、オ、オォォォォッ!?


 棺を四つ引きずって進んでいる面々がいるわネ。まさにドラクエ世界の全滅寸前のパーティーのようだワ。

 先頭に真っ黒い喪服を着たちょっと丸い女がいるワ。あれがフアナね。


「すみませ~ん」

「……下郎、何者じゃ?」


 下郎?

 アタシは下郎ではないわ。

 宦官なので、下郎でも下女でもないのヨ!

 そこを間違えてもらいたくないワン!


「……下人、妾に何か用か?」

 それなら間違っていないワ。

 いや、そんなことを話に来たのではないワ。


「ここにいる棺を天界に返してほしいのヨン。ワッ!」


 今、アタシの頬先を黒いオーラのようなものが過ぎ去ったのが見えたワ。

 恐ろしいワン。

 大抵のことにはひるまないアタシだけど、このフアナは恐ろしいと思うわヨ。


「この馬鹿者達は、女王たる妾を顧みず、他の女にしっぽを振ろうとしおった。故に、妾以外の誰も見ることができぬよう、棺に閉じ込めて連れておるのじゃ」


 あら~ん♪

 そういうことだったのネ。

 マリア・エレオノーラは独り占めにしたい派だったけど、フアナは罰を与えていたわけなのネン。

 どっちにしても迷惑なのは一緒だけど。


 これは困ったワン。

 いざとなったら、マリア・エレオノーラ同様に天成の死体と交換しようと考えていたけれど、フアナは罰として与えているわけだから、天成を与えても納得しそうにないワネ。

 それでも一応、交渉はしてみるワ♪


「ダメ夫の代わりに天成の死体を渡すから、それで満足してくれないかしらン?」

「断る。妾は天成には何の恨みもない」

「いいえ、彼は有罪ヨン」

「……?」

「彼は、女王を知ろうともしなかったという重い重い罪があるワ」


 フアナは自分のことを偉大な女王と考えているワン。

 だから、その女王と関わり合いを持とうとしないのは、裏切るよりももっと悪いことなのヨン。

 と説明してみたワ。


 分かっているワ、自分でも無理な理屈ということは。


 だけど、絶対君主の下では、君主の考えが全てヨン。

 理屈はいらないの!

 フィーリングが大切なの!

 ソウルよ! 魂に働きかけるのヨ!


「天成は、ダメ夫よりも、女王をバカにしているワ!」

「ガガーン!」


 フアナが衝撃に打たれて、うつむいて考えているワ。

 しばらくして顔をあげたわヨ。

 おぉぉぉ! 憤怒に満ちた顔つきになっているワ!


「おのれ天成め! 絶対に許さん! 奴の死体を連れてこい!」

「アイアイサー!」


 うまく行ったようネ!



"結末"

「鄭和、ご苦労様」

「今回は本当に疲れたワン。あの後も大変だったのヨン」

「連れてきた天成に『妾のことを知らぬ極悪人め』と怒号を浴びせて、鞭を打ち付けて四散させていたわね。あれはさすがの私も失神しそうになるくらい恐ろしかったわ」

「伍子胥もびっくりの恐ろしさヨ。狂女の呼び名はダテではないと思い知らされたワ。ところで」

「分かっているわ。天成のことでしょ?」

「どうするのかしラン?」

「……今後、代わりになりそうなのが出てきたら、それとなく交代してもらうしかないわね」

「女を怒らせると恐ろしいということネン……」



『俺が悪いみたいに言うなー! 助けてくれー 。゜(゜´Д`゜)゜。!』

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