第41話 母なる大地に勝利を・結末

 十字軍を焚きつけて、ファーティマ朝をイェルサレムを含むシリア地域に釘付けにしたわ。

 その間にこちらは準備を整え、相手の油断を突いて一気にエジプトに侵攻したわ。

 元々ファーティマ朝はシリア地域からエジプトにやってきた連中よ。だから、故郷で殺したり殺されたりしているべきなのよ。

「修羅の国ですわ……」

 そうよ、中東とバルカンはやばいのよ。


 ともあれ、三つの海を支配することに成功したわ。


成功した世界地図:https://kakuyomu.jp/users/kawanohate/news/16818023212161623072


「ここから、インド西岸とイギリスを支配すれば、大西洋とインド洋に敵なしとなるわ」

「そうそううまくいくのでしょうか?」

「いくのよ。遠征が失敗する原因というのは、その地域の風土や気候などをよく考えていないまま攻め込むことが多いからよ。自衛隊の戦車は山の多い日本向きよ。イスラエルの戦車は砂漠向きだわ。そうした戦車は遠征には使えないのよ」

「確かに遠征地のことをよく知らずに、戦争以外の部分で兵士達がバタバタ死んでいくというのは中国でもロシアでもよく聞きますわね」

「ヴァイキング船の性能も知り尽くしているし、今のモロッコなら近世の船に近い性能のものも作れるわ。中南米にも船を派遣し、ポトシもサカテカスもモロッコのものにするわよ」

「もはや敵なしですわね」

「まだあるわ」


 世界帝国となっていくには、古くからの特権階級が邪魔になってくるわ。

 そう、ムラービトよ。

 サハラ砂漠では有効な彼らだけど、世界帝国の軍とするには不必要な存在。

 アッバース1世がクジルバシュを、マフムト2世がイェニチェリを滅ぼしたように、ムラービトを駆逐するわ。


 2年かけてムラービトを滅ぼした時には、もはやモロッコに敵はなくなっていたわ。

「出発点がモロッコというだけで、ほぼ十字軍国家という感もありますが……」

「世界支配なんてそんなものよ。シミュレーションゲームだって、誰でスタートしても途中からは同じ手順の繰り返しになるでしょ」

「それはまあ、そうですが……」


 しめくくりは、次の君主をどうやって決めるかだけど、これは最後まで公表せずに清のやり方が一番無難でしょうね。

 これで最低限、次の次の代くらいまでは発展することでしょう。



"そして戻ってきました"

「おや、天界の様子が変ですわね?」

 確かに、何やら物騒な雰囲気が漂っているわ。

「あぁっ! 街に『中世を新居千瑛に』派の旗が!」


 ふむ、私が以前女神代行をしていた時の方が成績も環境も良かったから、「またあの時代に戻りたい」という動きがあることは知っていたけれど……

 まさかクーデターを起こすほどまでだったとは……

 この幽霊兼AIの目をもってしても気づけなかったわね。


「女神は主神達のところに放逐されたようですわ」

「奥洲天成と鄭和はどうなったの?」

「2人とも派遣中のようで、一旦、帰還の道が遮断されているようですわ」

 ということは天成は奴隷船の世界から。

 鄭和も赴任地からしばらく抜け出せないわけね。


 ……そっちの方が面白いかもしれなかったわね。

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