第35話 奴隷船がやってくる・前編


 俺の名前は奥洲天成。


 今回も俺は天界へやってきた。


『天成、今回は特別ミッションよ』


 特別ミッション?

 一体、何なんだ?


『中身は私も聞かされていないのだけど、中世ヨーロッパに行くことは間違いないわ』

「中世ヨーロッパか」


 む、これは原点回帰か?

 中世ヨーロッパに立ち返るという。


 ともあれ、俺は中世ヨーロッパへと転生した。



 確かに転生先は中世ヨーロッパ。

 17世紀のイギリスへと転生した。


 第二部以降は難易度の高い人間に転生させられて、生き残るのに必死だったが、今回は久しぶりに俺個人として生きることができる。

 どんな人生にしようかな〜。


 ただ、楽して生きたいから、やはり何かいい技術を開発したい。

 とはいえ17世紀だと金山銀山は開発されているし。


 そうだ、武器に使う硝石でも大量にゲットしよう。

 南米、チリとボリビアの中間あたりには大量の硝石が眠っている。

 19世紀後半に明るみになり、チリとペルー・ボリビアが太平洋戦争を起こしたのは広く知られるところだ。

 この当時のボリビアは沿岸にも領土を持っていたのだが、負けてチリに分取られた。それが悔しいから、今でもボリビアには海軍があってチチカカ湖で練習しているという。


 そこまで必死になったのに、終わって程なく大気中に窒素から取り出す技術が開発されて、硝石がほぼいらない子となったというオチまでついてくる。


 17世紀ならその心配はいらないから、思う存分稼げるだろう。


 ということで行き先は決まった。

 ただ、どうやって行くべきか。

 そんなに金がないけど、船の値段はいくらくらいだろう?


 ……高い。

 俺の財産ではとても行けそうにない。

 ついた後の活動費もいるしなぁ。


「あんた、船に乗りたいのかい?」

 不意に話しかけられた。

「ウチの船なら雑用をこなしてくれたら格安で行かせてやるぜ?」

 むむ?

 皿洗いをすればラーメンタダの店みたいだな。

「どのくらい安くなるんだ?」

 俺は見積もりを見せてもらった。


「そんなに安いのか!?」

 格安航空券なんてものじゃねぇ。値段が100分の1以下だ。

 安全性が疑問に思えてくる。

「バカ言え。この船は自慢じゃねぇが、事故は一回も起こしていない」


 見てみると、確かに立派な船だ。

 これが100分の1以下、一体どんな雑用なんだ?


「一言で言えば、物資や買い物の計算だな」

 なるほど、この時代はまだまだ一般人の計算能力に限界がある。

 九九演算ができる俺のような存在は重宝されるというわけだな。


「よし、計算をしよう」

 船は見つかった。

 憧れの硝石ライフが俺を待っている。



*みんなの一言*

「……憧れの硝石ライフ?」

「天成の言うことはよく分かりませんわ」

「オトコは硝煙の臭いに憧れるのかしらん?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る