第23話 日野富子でエンタメせよ・後編

 とりあえず助言はいたしましたわ。

 あとはメガミがどう処理するか、だけですわね。


 モニターで眺めておりますが、天成も鄭和も別の転生で出かけていて、新居千瑛も新人研修らしいですわ。

 つまり、ここにいるのはネコだけですわ。



 日野富子として転生したメガミは、まず足利義政との婚儀で、義政を半殺しにして絶対服従を誓わせましたわ。

『逆らったら、コロス』

「イエス、マム。……というか、将軍たる私に何をしろというのだ!」

『いい? あんたは何があってもボケなさい。私がツッこむから』


 そうです!

 そのままで進めてもエンタメも面白味のない日野富子の人生にお笑いをもたらす手段、それは夫婦漫才ですわ!

 無気力そうに見える義政がボケ、頑張る富子がツッコミをやれば、面白くなるはずです!

 ただ、何も半殺しにしろとは言っていないのですが……


 ということで富子と義政の夫婦漫才が始まりましたわ!


「あ~、何ということやねん! 初子がすぐに死んでもうた! この事件には何か裏がありまっせ! 名将軍やったじっちゃん足利義満の名にかけて解決しておま! 真実は常に一つ!」

『そんなん言うたら、誰かが殺したみたいやないの!』

「そうや! これは殺人や! 誰かが呪詛して殺したんや! 怪しいのはワテの乳母の今参局いままいりのつぼねや! 取調室へ流刑して、キッチリ吐かせまっせ!」

『そんなん言うたから、自殺してもうたやない! 探偵が犯人を殺してどないすんのや!』


 ……あまり面白くありませんわね。

 とってつけた関西弁が滅茶苦茶スベっている感がありますわ。


「男の子ができへんなぁ。仕方ないから、弟を養子にして保険をかけまっせ」

『アンタ、そんなことして出来たらどないすんのや』

「ワテもアンタももうエエ歳やし、でけへんやろ。弟を義視として還俗させましたわ」

『どないすんねん! 男の子ができたやないか!』

「参ったなぁ。もう後見人として細川勝元をつけてもうた。よっしゃ、義尚の後見人に山名宗全をつけたら互角やろ!」

『互角にしてどないすんねん! 収拾がつかんくなるやろ!』

「どないなっとんねん!? 他の連中も急に派閥を作って争いだしたで!?」

『全部アンタのせいや!』

「よっしゃ! ワテが直々に話し合いをして解決させるで! 不満のある奴はみんな京に集まれ~!」

『どないすんねん!? みんな不満があるから兵士を連れて集まってきたやないの! 何かきっかけがあれば京でドンパチが始まってまうがな!』

「アホ! 新年の一般参賀と同じや! ワテらの一族がバルコニーに勢ぞろいして手を振ったら、みんな旗を振ってくれんのや! って、義視と義尚はどこ行ってん?」

『みんな、アンタを見捨てたんや』

「ちょっと待ってーなー! アンタまで離れたところにおるやないか!」



 ……ダメですわ。

 勧めておいて何ですが、見るに堪えない劇が展開されております。


 やはり日野富子で笑いを取るのは無理でしたわ。

 メガミは来場所全勝優勝するくらいの気合で頑張ってもらうしかありませんわね。


 ネコ、せめてあなただけでも見守ってあげなさいな。

 メガミが審査員に30点とか0点とかつけられて記録的な惨敗を喫する有様を。


 ワタクシはメガミの逆恨みが怖いので、さっさとトンズラすることにしますわ。




"そして結果は……"

『オーッホッホ! 遂に女神として復帰したわよ!』

「そろそろ飽きていたし何よりだわ。代行証とネコは返すわね」


 あれ……?


「おー、郁子。おまえ、今回はメガミ……もう戻ったから女神か。復帰へのアシストをばっちり決めたみたいだな」

「いや、そんなはずは……」


 そんな馬鹿な?


 あんな寒い漫才で勝てたというのですか?


「……裏があるのよ」

「裏?」

「そもそも、過去に誰も日野富子でお笑いに挑んだ者はいないわ。女神の点数は平均して40点だったけれど、足切りはないから、一人中一位だったのよ」

「そ、それって……」

 八百長ではないのですか? 元ネタが相撲なだけに……?

「神の企画力なんてそんなものよ。あれが女神になれるくらいなんだし」

「な、なるほど……」

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