第22話 日野富子でエンタメせよ・中編

 ということで、事前に日野富子のことを押さえておきますわよ!


 16歳で室町八代将軍・足利義政に嫁いだ富子は、4年後に最初の男児を設けますがすぐに死んでしまいました。

 で、その死には義政の乳母による呪詛があったと言い張りました。

 哀れ乳母は流罪になり、しかも配流中の乳母は富子一派に攻撃されて自害してしまいました。


 ……暗いですわ。

 どう見てもお笑いになど、できそうにありません。


 その後、女児はできても男児ができないので、義政の弟を還俗させて義視よしみとします。ただ、その直後に義尚よしひさが生まれてややこしいことになります。義視は細川勝元ほそかわかつもとに、義尚派は山名宗全やまなそうぜんにくっつき、更に畠山家の内紛なども重なったことで応仁の乱へと発展します。

 これまたお笑いにはできそうにないですわね。


 応仁の乱は京都を焼け野原にしますが、数年が経ち、宗全と勝元が相次いで病死したことで、厭戦えんせんムードが広がります。

 夫の義政も政治への意欲を失い、新居にひきこもるようになりました。

 遂に日野富子は幕府の第一人者となります。

 が、それもつかの間、今度は息子の義尚と対立するようになりました。

 この対立は義尚が陣没するまで続くことになります。

 やはり、暗いですわ。


 一方、富子は関所の銭を横領しておりました。

 応仁の乱終結後、これが知られるところとなり、怒った民衆達が一揆を起こしたとも言われています。

 セコいですわ。


 義政の死後も好き勝手やっていた日野富子は、死ぬ少し前にも将軍廃立に関与することとなります。将軍と有力大名の細川政元ほそかわまさもとが対立したことで、自らが承認して立てた11代将軍義材よしみを廃して、義澄よしずみを立てました。


 この明応の変は足利幕府の権威を決定的に弱めたともいわれています。

 こうして、好き勝手していって日野富子は死んでいきましたわ。


 ……暗いですわ!

 暗すぎですわ!

 呂后やンジンガのような人豚を作ったとか、敵を食べたみたいな突き抜けた逸話があれば一周してシュールな笑いを呼ぶこともできますが、中途半端に普通のワルという感じがして、ネタにすることもできません!

 こいつはダメですわ!

 日野富子でお笑いを取るのは不可能です!


 メガミには哀れですが、来場所からの三場所で33勝してもらうしかないですわ。



 ということで、ワタクシ、メガミに現実をビシッと教えることといたします。

『郁子ちゃーん! 頼りにしているわよ!』

 メガミは藁にも縋るような様子ですが、ワタクシは心を鬼にして言いますわ。

「メガミ、ワタクシが思うに日野富子で笑いを取るのは不可能ですわ。諦めて来場所から頑張ってくださいまし」

『何ですって!? ちょっとアンタ! 他人事だと思って、適当に考えているんでしょ!』

「そんなことはありませんわ! ワタクシは真面目に分析した結果、無理だと申し上げているのです! あ、痛い! よくも殴りましたわね!」


※醜い争いが繰り広げられています。しばらくお待ちください。


 くぅぅ、相変わらずメガミの左フックは効きますわ……。

 むっ、待ちなさい、左フック……?


「閃きましたわ!」



"一方その頃"

「ニャニャッ!?」

「何か進展があったようね……」

「このネコは一体何者なんだよ……?」

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